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目の前にまた立ちはだかる見覚えのある顔が二つ、それと初めてみる顔があった
「オルリア…。 お前も来ていたのか」
「はいですに! とっととかかってくるですに!」
ジャブのように拳を突き出すオルリア、まるで猫じゃらしを猫パンチで撃ち落とそうとするかのようだ
「今度は負けないわよ」
キュレスが手に持っていた装置を起動させると、その装置は回転しながら浮かび上がり、特殊なフィールドを展開した
「これであんたは逃げられない。 あんたは恐ろしく強い、でもね、これがあれば私たちでもあんたに勝てるのよ」
構えを取るキュレス、それに続いて剣を抜き放つグリドとオルリア
「やはり三人とも目に光がない。 私と同じように操られているということか。 頼むルーナ、彼らは操られて意志を奪われている。 洗脳を解いてやってくれ」
「はい、できる限りやってみます」
戦闘が始まる
ルーナはキュレスと、リゼラスはグリドと、パリケルはオルリアと対峙した
最初に動いたのはグリド、リゼラスに剣で斬りかかった
それを受け流すと、刀のみねでグリドの胴を薙いだ
しかし鎧に阻まれダメージを与えることができなかった
一方でキュレスはルーナに拳を叩き込んでいく
その拳を何とか手で受け止めるルーナ
「なに? 力が、出ない」
いつもと違う体の調子に戸惑い、まともに動けない
キュレスの拳を受け止めるので精いっぱいだ
また一方でパリケルは4号を動かしてオルリアに迫る
4号の手には拾った棒が握られており、それをオルリアに振り下ろす
オルリアが振るうのはレイピア、斬るではなく刺すことに特化しているため棍棒による攻撃を受けきれない
4号の動きはリゼラスの動きをインプットしているためオルリアではなかなか攻めることができなかった
「にー、なんで人形がこんなに強いんですに?」
三者三葉それぞれの戦い方で相手を打ち負かさんと戦闘を続ける
およそ5分が経った頃、異変は起こった
ルーナの力を吸収している装置にひびが入り始めている
「うそ、エイシャ様からもらった装置が…。 力を吸収しきれないって言うの?」
キュレスはルーナの力の大きさに驚いた
「一気に決めます! サニー!」
ルーナはサニーにシフトした
「ハァアアアアア!!」
力を放出すると、装置は見事に砕け散った
「抑えきれない!」
キュレス、グリド、オルリアはサニーが放出した力に吹き飛ばされ、後ろの壁に叩きつけられた
「く、痛…。 強すぎ、る」
キュレスは気を失った
そんな彼女をグリドが抱え、オルリアと共に逃走した
「待て!」
リゼラスは追おうとするが、3人はどこかへと転移で消えてしまった
「簡易転移? 異世界には行っていないみたいだがこれではどこに行ったか…」
簡易転移はその世界のどこかへと飛ぶ装置
そこまで遠く飛べるわけではないが、逃げるにはうってつけの装置だった
「逃げちゃった。 まぁいいか。 お姉ちゃん、変わるね」
サニーはルーナに体を渡す
「ふむぅ、もう少し4号の力を試したかったんだけど、仕方ないぜな」
パリケルは少し残念そうな顔をした
「行きましょう!まゆかちゃんが待ってます!」
3人はそのまま異世界研究所へと侵入した
けたたましくなる警報に兵たちが駆け付けてくる
しかしそんな兵の重火器でルーナ達を止めることなどはできなかった
あっという間に突破され、研究所の地下へ侵入を許してしまった
「恐らくここのどこかにいるはずぜな」
きょろきょろと周辺を見渡すが、どういうわけか以前あった機器類、装置、それに魔物と合成させられた人々の死体がすべて消えていた
「これは一体どういうことだ?」
そのとき壁に置かれてあるモニターが点灯し、久慈川の顔が映った
「よく来たね。 だが残念、ここにあの子はいない。 もともとここは放棄する予定だったんだ。 そのいい機会になったよ。 あの子は今私と共に別の研究機関にいる。 君たちでは見つけることの出来ない場所にな」
ニヤリと笑う久慈川
「くそ!」
リゼラスはモニターを破壊した
「ここにはいないってことぜな。 それにしても見事にもぬけの殻、何も残ってないぜな」
塵一つ落ちていない地下施設
この施設の全てを短時間でどこかに移動させたようだ
「あれだけの量を移動させたとなるとそこまで遠くには行っていないはずだが、 どうやらキュレスたちがついているようだからな。 転移装置を使えば簡単に遠くまで輸送できるだろう」
これではどこに行ってしまったのか分からない
今は手掛かりを見つけ出すしか手がなかった