キュレス4
必死で追いかけたが見失ってしまったため、小坂まで一直線へと走っていく
ほとんどの都市が機能していない中、この周辺では小坂は唯一人がいる都市だ
ルーナ達はほぼ確実にここにいると思われた
早速街を探してみる
それらしい特徴を伝えて目撃者がいないか確認していった
目撃証言は非常に多かった
それもそうだ
三人とも容姿は非常に整っている
いやでも目立つのだ
「仮設住宅にいるようですに」
「そうね、早く行くわよ」
仮設住宅には人間が消滅した街から生き残った人物たちが集まっており、どうやら三人もそこに住んでいるようだ
急いでそこに向かうと、どうやら三人はどこかへ出かけているようだった
「なによ、いないじゃない。 どこ行ったのかしら」
「聞いてきますに!」
オルリアは獣のような速さで駆けて行ってしまった
ここはオルリアに任せて仮設住宅前のベンチで待つことにした
それから数分で戻ってくる
どうやら仮設住宅の管理人という男に会えたようだ
「彼女たちですか? いやぁ、いい子たちですね。 毎日きちんと挨拶をしてくれますしね」
眼鏡の後ろにある目はにこやかな表情を浮かべており、人当たりの良い人物だった
「どこに行ったか知らない?」
「たしか、自警団のところへ向かうと言ってましたよ。 理由ですか? そこまでは聞いてませんが…。 あっ、総理に似た方と一緒に行ってましたね。」
「自警団?」
「えぇ、この道を真っ直ぐ行って、あの大きなビルを左に曲がった先にありますよ」
「わかったわ。 ありがとう、行ってみる」
キュレスたちはすぐに自警団のある建物まで走った
しかし一足遅かったようだ
ルーナ達はここで問題を起こして去って行ったようで、自警団があわただしく走り回っている
そんな彼らに指示を出している趣味の良いスーツを着た男が見えた
周りが総理と言っていることからこの国のリーダーであるとうかがえる
「ねぇあなた、この国のトップなのよね? 三人を捕まえるのを協力してあげるから私に手を貸しなさいよ」
警備団から聞いた情報で大体のことは把握できた
好都合とばかりに交渉をする
「なんだお前たちは、今子供に構っている暇はない」
「子供じゃないわよ! 私たちはあいつらの敵よ」
「ほぅ、敵、か。 ならばお前たちはあれらと同じ世界から来たのか?」
「ふぅん、そこまでわかってるなら話は早いわ。 私たちはあいつらを追って来たのよ」
久慈川は利用できると思った
この後の展開も考え、この三人にかき乱してもらうことにする
「そうか、ならば協力してほしい。 あいつらは私を人質に」
「嘘はいいわよ。 あいつらお人よしの塊みたいなやつらなんだからそんなことするわけないじゃない。 それよりも、あいつらを敵として認識させたいんでしょう?」
久慈川は自分の意図するところを読まれて驚いたが、そんなことは微塵も顔に出さない
「だったらどうする? 協力はできんか?」
「何言ってんのよ。 私らはあいつを追ってるって言ったでしょ? 協力するに決まってるじゃない」
「ありがたい、できるだけあれらを捕まえず適当に戦ってほしい。 世界がまとまり切ればあとはこちらで何とかできる。 そのあとならばあれらにもう用はないから好きにしてくれ。 ただ、この世界に手を出せば私たちはお前たちを敵として攻撃する」
「いいわ、ただ私たちに勝てるとは思わな…。 いえ、何でもないわ」
現在キュレスは魔法を使える状態ではない
そのことが頭をよぎり、この世界全体を敵に回す危険性を考えて言いよどんだ
重火器で攻められれば勝てないと理解した
協力を取り付けてから数日後、三人と騎士たちは東都へと派遣された
ルーナ達は確実にこの東都を襲撃しに来る
何せ人質がいるからだ
人質、そしてこの異世界研究にはなくてはならない少女
それを奪還しにやって来るだろうとのこと
キュレスたちはただここで待てばいいだけだ
「楽でいいわね。 ただ待ってるだけなんだから」
「はいですに!」
キュレスは協力関係を築くときに一つ頼みごとをした
この世界に来るときに散り散りになった他の騎士達を探してほしいと
彼らがそろえばルーナを確実にとらえられる
久慈川は了承し、他国に呼びかけてくれた
そして数日後
現在目の前にルーナ達がいる
キュレスは懐からとある装置を取り出した
ルーナの力を吸収し、溜める装置
これを発動させている間はルーナの力が極端に落ちると勇者アスト、いや、現エイシャに聞いている
それこそオルリアやグリドでも十分対処できるほどにだ
問題はリゼラス、彼女は一時期グリドと渡り合ったほどに強い騎士である
他の七英騎士がいない今、ルーナとリゼラスを相手に勝てるかどうかわからない
パリケルは下位次元の存在のため、全く問題視していなかった
それが判断ミスとなることも知らずにである