集合と散在5
二人の異形は自分たちの見たことのない世界を見つめて笑いあう
そこには本当の感情はなく、見様見真似でやってみているだけなのだが、二人はそれで満足だった
しかし、感情のない二人には何かが芽生え始めていた
それは二人の間のみの愛
二人の愛だけは本物だった
「ねぇメロ、この世界も私たちを受け入れてくれないのかしら?」
「どうだろうね? ダメならまた次へ行こう」
二人が見つめる先には全てが滅んだ世界
二人を受け入れなかったがために終わってしまった世界だ
もはや知性ある者全てがいなくなったこの世界は二人しかいない
そこに突如として空間を開いて何者かが降り立った
「ようやく見つけたぞ、ゴミどもが」
二人の前に男が立つ
「あら? メロ、こいつ、私たちの敵だわ」
「そうだねフィフィ、消しちゃおうよ」
男は嫌悪感をあらわにした顔で二人に近づく
「俺はシンガ、消滅を司る神だ」
そう名乗ると手を二人にかざし、消滅の光を放った
それがフィフィに直撃する
「あれ? メロ、私」
フィフィの体が砂となり崩れ落ちた
「フィフィ! うぁあああ! 僕の、僕のフィフィが!」
砂をかき集めて抱きしめる
「ほぉ、感情が芽生え始めているのか。 危険だ。 お前もすぐに消滅させてやろう」
再び光を放つが、それはメロに当たる前に消えた
「なに!?」
驚くシンガ
「よくも、よくもよくもよくも! 僕のフィフィを!!」
怒り、メロは二つ目の感情を手にいれた
その怒りは頂点へと達し、この世界事シンガを集束させた
一気に圧縮された為、重力が歪み、大きなブラックホールと化す
「この俺事世界を!? なんという、力…。 この力、大神よりも…。 ぐあぁあ!!」
ぐしゃりと圧縮されたシンガはブラックホールと共に空間に閉じ込められる。
シンガの力ではここから抜け出すのは不可能に近いだろう
「フィフィ、フィフィ、僕のフィフィ」
かき集めた砂をさらに集合させ、今しがた砂となった少女の姿を形作る
すると、その少女の人形は目を開き、受肉していった
「メロ、メロ、私のメロ、ありがとう!」
再び形を成したフィフィはメロにキスをする
二人の愛は熱く熱く燃え上がった
「さぁ、次の世界に行こう」
「そうねメロ、あ、それと、あいつを閉じ込めた空間はどうするの?」
「うーん、そうだね、放っておこうよ。 どうでもいいさあんなの」
「分かったわメロ、エイッ」
フィフィは空間をさらにバラバラに砕き、様々な世界へと飛ばした
中にいたシンガもバラバラになり、空間と共に飛ばされている
「これでよし、ね」
嬉しそうに笑うが、まだ喜びの感情を手に入れていないので真似事である
二人は再びこの世界から狭間の世界へと行き、別の世界を探した
そして二人が興味を持った世界、そこは科学によって発展した世界だった
大きなビルが立ち並び、車が走り、飛行機が飛ぶ世界
「まぁ、この前もらった城よりも大きいわ! でも、形は良くないわね。 もっと探せばいいものがあるかしら?」
「そうだねフィフィ、探してみようよ。 きっとフィフィの気に入るものが見つかるよ」
「メロ、あなたの好きそうなものも探しましょう? 私ばかりじゃ悪いわ」
「いいんだよフィフィ、僕は君が幸せならそれで十分なんだ」
「まぁメロったら、でも、ありがとう。 私もあなたが幸せであってほしいわ」
二人は再び抱き合い、この世界へと降り立った
バラバラになったシンガ、彼は力を分割されて自力でもとに戻ることができない
仕方ないので彼は助けが来るのを待つことにした