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聖霊の唄巫女と器の騎士  作者: ひばごん
唄歌えぬ唄歌い
6/20

4話 学園(アカデミー)にて その1

「昨日はゆっくり休めたか?」

「ああ! そりゃあもう()が綺麗でサイコーの夜だったよ!」


 眠い中、約束通り朝一番に学長室へと訪れたレオンを待っていたのは、ニヤニヤ顔で机に頬杖をついたトリアの憎たらしいまでの笑顔だった。


「今からでも遅くないから、あたしとの同室にしときなって? なぁ?」

「断る!」

「即決で拒否か! お姉ちゃんとの同棲がそんなにイヤか!

 あんな廃墟(・・)の方がマシだって言うくらいイヤなのかよ!!」

「同棲とか言うな! だいたい、廃墟だって自覚があるならもう少しまともなトコ用意しろってんだ!」

「だから、あたしの所に来ればいいだろ!」

「断る!!」

「あの~お二人とも~喧嘩はよくないと思うのですが……」


 ガルルルっと睨みあう二人の傍らで“気弱そう”を絵に描いたような女性が、額に冷や汗を流しながらおずおずと二人の間に割って入った。

 この女性には、二人がいがみ合っている様に見えたのだろうが……別にそういうことでもない。

 こんなもの、まだトリアが調査団に在籍していたころは日中行事でさして珍いものでもなかった。

 些細なことなら、朝食のおかずをどっちが多く食べたか、などということで本気で怒鳴りあっていた二人だ。

 そんな二人にとっては、こんなもの喧嘩どころか挨拶程度でしかなかった。

 本来なら、こういった戯れ(・・)(いさ)めるためのエータなのだが、残念なことに今この場に彼女の姿はなかった。


「さっきから、少し気になってたんだが……誰だ? てか、昨日の人(エータ)はどうしたよ?」


 今にも額が付きそうなほど至近距離でトリアにメンチを切っていたレオンは、そのままの姿勢で小声で問いかけた。


「今日からお前が世話になる人間だ、よっ!」


 ベシッ!


「ってぇ!」


 何か痛烈な一撃を額に受けたレオンは、そのまま乗っかっていた机の上から文字通り弾き落とされてしまった。

 トリアがレオンの額目掛けて強烈なデコピンを見舞ったのだ。


「エータなら別件で席を外している。

 なんだ? ああいう娘が好みなのか?」


 またしてもニヤニヤ顔を浮かべるトリアは、そう言ってレオンを煽った。


「そんなんじゃない。ただ、秘書だっていっていたのに姿が見えないから気になっただけだ」


 しかし、トリアの意図など見透かしているレオンは安い挑発には乗らず、華麗にスルーしてみせた。

 レオンが喰い付かなかったことが不満なのか、頬を膨らまし不貞腐れてみせるがレオンはそんなトリアを気にすら留めなかった。

 エータは今、定時報告のために例の“連絡用の部屋”へと向かっていた。

 今まではそんなことはしていなかったのだが、レオンの到着を機に朝と夕方に一度づつ連絡を取り合おうと、アルフリードが言い出したのだ。互いの近況も知ることができ、状況変化にも迅速に対応するため、というのがその主な理由だった。


「んじゃ、マナミ、後の説明よろしく~」


 レオンが遊んで(・・・)くれないと拗ねたのか、トリアは目の前の女性に後のことを丸投げすると、自分は机へと突っ伏してしまった。


「はい」


 そうトリアに返事を返しレオンの前に一歩を踏み出したのは、銀縁のフレームの細い眼鏡をかけ、タイトな紺色のスーツに身を包んだ女性だった。


「はじめまして、レオン君。

 私はマナミ・ユヅキといいます。貴方が所属する学年の担当教官を勤めています。

 と、言っても職務は主に事務全般、担当科目は歴史を教えています。

 見ての通り私自身、騎士でもなんでもないので、お恥ずかしい話なんですが騎士のことについてはからっきしなんですよ。そんな私が“教官”というのも少しヘンな話なんですけど、これからよろしくお願いしますね」


 気は弱そうだったが、人受けのよさそうな優しい微笑がなんとも印象的な女性だった。

 彼女はその白磁のような手を、レオンに向かってそっと差し出した。


「……ども」


 レオンはその差し出されてた手を握り返し、極短い返事を返す。と、


 スッパーン!! 


「いってぇ! 何すんだよ!」


 再び、レオンの頭部を鈍い衝撃が襲った。今度は後頭部だったが……

 振り返れば、いつの間にやら紙束を丸めて棒状にした物を手にして仁王立ちするトリアの姿がそこにあった。


「“何すんだよ!”じゃねーよ!

 昨日も言ったが挨拶くらいちゃんとしろ! お姉ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!」

「……ったく」


 殴られた所を摩りながら、レオンは小さくぼやいた。


「レオン・バルヤザールだ。よろしく」


 事ある毎に“お姉ちゃん”風を吹かすのは、トリアの昔からの癖、というか習性のようなものだった。

 逆らったところで(こじ)れるだけなので、こういうときは素直に従っておいた方が賢明だ。

 これはレオンがここ十年ほどで身に着けた、対トリア用の処世術だった。


「ふふふっ、貴方のウワサ(・・・)は学園長から兼ね兼ね伺っていますよ。本当に仲がよろしいのですね」

「ふっふっふっー、だろ?」


 どこがだ? と、内心マナミの言葉を承服しかねる思いはあっが、このドヤ顔をキメて踏ん反り返っているトリアに何を言った所で聞きはしないだろうから、華麗に放置するこしにした。


「俺の噂って……このバカに一体どんなホラ話を吹き込まれたんだ?」


 レオンは辟易した気持ちでトリアを指差した。

 トリアがレオンを語るとき、その言葉には尾ヒレどころか豪華な胸ビレや背ビレが漏れなく付いてくる。

 酷いときには、メダカが鯛にだってクラスチェンジする。

 そんなこんなで、昔からトリアにはあることないことで赤っ恥をかかされ続けられてきた。

 トリア発のレオンの噂、という時点でレオンの心中は最早穏やかではいられなかった。


「ふふっ、そんなに警戒しなくてもヘンな話はされていませんよ。

 そーですねぇ、例えば……

 “ウチの弟は天才だ!!”とかでしょうか?」

「おいっ! コラァッ!!」


 初手からKO必死の一撃がレオンの(ハート)にハードヒットした。

 優秀とか、有能ならいざ知らずそれらを差し置いていきなり“天才”ときた。親バカならぬ姉バカである。

 顔から火が出る思いというが、既に出火してしまったらしくレオンの顔は真っ赤だ。

 流石に文句の一つもぶつけてやろうとトリアの方を見やるが、そこに先ほどまで仁王立ちしていたトリアの姿は忽然と消えていた。

 どこに行ったのかとよくよく見てみれば、“学園長”とプレートが置かれた巨大な机の影から首だけひょっこり覗かせていたトリアと目が合った。


「そんな、本気で怒ることはないだろ……」


 レオンが“噂話”を持ち出した辺りから、トリアは既に退避を始めていた。

 この手の話題は、レオンにとって地雷である。それは、地雷を散布している本人が一番(・・)理解していた。

 怒られるだろうなぁ、と分かっていてもやめられないのだ。

 優秀でワカイイ弟は自慢したい。それが、お姉ちゃんの心情なのである。


「あのなぁ! お前のせいで俺がどれだけ……」

「まぁまぁ、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか」


 トリアに説教の一つでもくれてやろと、息巻くレオンをマナミがやんわりと制した。


「学園長の言葉に多少の誇張が含まれていることは否めませんが、言っていること自体は間違ってはいないようですし……」

「はっ?」


 一瞬、レオンは我が耳を疑った。

 それではまるで、レオンが“天才”であることを暗に認めているようではないか。


「ここに貴方の評価書……のような物があるのですが、正直驚きましたよ。

 その若さで魔導遺跡の発掘調査資格を取得しているのですね」


 マナミは、持っていた書類をペラペラとめくりながら感心したように言った。


「? まぁ、()だけどな……それがどうしたっていうんだよ?」

()なのは貴方が資格取得年齢の制限に触れているからで、試験の内容に違いはないんですよ。

 因みに、貴方が成人すれば、その準は削除され正式に調査活動が許されるようになります」


 魔導遺跡の発掘調査というのは、帝国から徹底的に管理された完全許可制であった。

 資格を有するものが帝国政府に調査内容を申請して、受理されれば隊を率いて調査に向かうのだ。

 この“有資格者”というのがレオンたちの調査隊の場合、トリアの祖父のニドに当たった。


「ふ~ん。と言っても、その何とかって資格、気付いたときには貰ってたんでよく知らないんだよ。

 そもそもその試験とやらを受けた覚えもないし……何かの間違いじゃないのか?」


 レオンは事も無げにそう答えた。事実、レオンは今その話題が上がるまでそんな資格を持っていたことすらすっかり忘れていたくらいだ。


「ほらっ、何年か前にじーさんが紙束を山のように持ってきたことがあったろ? アレだよ」

「……ああ。そんな事もあったな」


 あれは何時の事だったか……確かにニドに、魔導学に関する問題集のようなものを大量にやらされた記憶がある。

 相変わらず、机の影からひょっこり首だけ出していたトリアが当時を振り返りるように言葉を続けた。


「あの時はじーさんも別にあんたに資格を取らせるつもりはなかったんだ。

 ただ、ちょっとしたテストのつもりでやらせてみたら、あんたがすげー得点叩き出してよ、はしゃいだじーさんがそのまま申請したんだよ。

 ああ、それとその資格だけど、あたしとアルも持ってるからな」

 なぜかまたしてもトリアはドヤ顔をキメていた。

 生首がドヤ顔で生えている様は、シュールを通り越して正直キモい。


「この発掘調査の資格試験って、国家試験の中では最難関クラスのものなんですよ。毎年千人ほど受験しますが、合格者は十人も出ませんからね。

 の天才アルフリード・シュタインシュッツ卿でさえ試験に合格したのは十五歳のときと聞きます。

 この資料によると、レオン君が資格を取得したのは十二歳のときとなっていますから、学園長が言うように“天才”というのも頷ける話ですね」

「やめてくれ。身に覚えがないことで持ち上げられても気持ちが悪い……」


 レオンは心底嫌そうな表情を浮かべてマナミの言葉を切って捨てた。

 昔から、人に褒められたりだとか持ち上げられるのが苦手な性分なのだ。


「だから言ったろ? “ウチの弟は天才だ!!”って!」

「……いい加減にしろよ?」


 ひとり浮かれるトリアにレオンはドスの効いた一瞥をくれた。

 意外とマジな声にひびったトリアは、出していた首をすごすごと引っ込め、机の影に完全に隠れてしまった。


「で、こんな茶番のためにわざわざ俺を呼び出したって訳じゃないんだろ?」


 レオンはやれやれと首を振り、隠れてしまったトリアは無視をする事に決めてマナミの方へと向き直った。


「はい。実はレオン君にちょっとしたテスト……というか、いくつか簡単な質問に答えて頂きたくてですね」

「テスト?」

「はい。まず一つ目の質問の内容は“貴方がここ学園(アカデミー)について知っていること”です。学園長の推薦とはいえ、無試験(・・・)での編入など前代未聞ですから、最低限の知識があるかどうかの確認です。

 気負わずに答えちゃってください」

「知ってること、ねぇ……帝国騎士団・聖霊騎士隊・第四大隊直轄・聖霊騎士育成機関・オルビア支部、通称学園(アカデミー)。組織としての設立は帝暦314年。今が帝暦370年だから50年くらいの歴史がある。実際に開校したのは316年、第一号校として帝都に開校。以降順次、守衛都市にて開校。オルビアは第三校として帝暦320年に開校。帝都、五大守衛都市にて計六校が現在開校中。生徒は聖霊騎士候補生として五年間の教育育成期間を経て卒業出来た者だけが、正式な聖霊騎士へと承認されることになる。って、こんなことでいいのか?」

「……」

「?」


 答え終わったにも関わらず、マナミからの返答はなかった。


「……なぁ、今のでいいのか?」


 少し待ってみたものの、一向に動く気配がないので、レオンは痺れを切らしてマナミへと声をかけたのだが……


「……」


 相変わらずの無反応だった。

 目は開いているのに、その瞳はまるで何も写していないガラス玉のようだった。


「おーいっ!」

「えっ? あっ! は、はいっ!」


 目の前で手をひらひらと振ってたり、頬を軽く叩いたりしていたとき(ようや)く、彼女の意識が現世へと返ってきた。


「大丈夫かよ? なんか焦点あってなかったけど?」 

「だっ、大丈夫ですよ! その、少し驚いてしまって……」


 慌てて体面を繕うマナミだったが、表情は依然として焦ったままだった。


「で、あの答えでいいのか?」

「はっ、はい!  結構です!」

「ってか、お前なんでそんなに細かく知ってんだよ……」


 いつの間にか机の影から出てきたのかトリアが、呆れたような口調でぽつりと零した。


「何でって……昨日渡された学生証に書いてあっただろ?」


 何、当たり前なこと聞いてんだ? そう言いたげな表情でさらっと答えるレオン。


「……お前、あれ全部読んだのかよ?」

「特にすることもなかったからな……といっても、眺めてただけだけど」

「マジか……」


 学生証には確かに、今レオンが答えたことが全て載ってた。

 しかし、掲載順は時系列に従った章仕立てとなっていたので、頭から最後まで通しで読み、尚且つ理解した上で自己でまとめないと、レオンが言ったような答えにはならないのだ。

 (ちな)みに、学生証に記された歴史の項目は全ページの四分の三程に当たる、約100ページに渡って綴られており、トリアに至っては四分の一ほど読んだ辺りからの記憶がない。


「で、では次の質問です。“貴方が聖霊騎士について知っていること”を答えてください」


 気を持ち直したマナミが、レオンへの質問を再開した。


「聖霊騎士……ねぇ。簡単に言っちまえば、“聖霊の力”|を召喚し“騎士”に付与することで、人間でありながら“聖霊”と同等の力を扱うことが出来るようになった騎士。ってとこだな。その力は山を穿(うが)ち大地を割ると言われ、万の騎士さえ取るに足らないと言われているくらいに強大な力を持っている……が、まぁ、実際はそう便利なモノでもない。まず、“召喚する者”と“宿す者”とが別に存在している点だな。前者を“唄巫女(ディーヴァ)”と呼び、後者を“器の騎士(ヴァース)”もしくは単純に“器”もしくは“騎士”と呼ぶ。聖霊騎士(・・・・)なんて如何にも単騎のように表現しているが、実際は二人一対(デュオ)だってことだな。“召喚する者”をなぜ“唄巫女(ディーヴァ)”なんて呼ぶのかというと、()によって内なる(・・・)聖霊へと語りかけことで聖霊界門を開く(しるべ)となることにある。聖霊界門というのは、四界つまり神界・死界・霊界・人間界を隔てる壁に開けた穴みたいなもので……」

「分った!! 分ったから!! 分ったから一旦止めろ!! なっ!!」


 立て板に水といわんばかりに、説明を捲くし立てるレオンを征したのは悲鳴じみたトリアの制止だった。


「何トーシロー相手に熱弁振るってやがるんだよ!! 見ろ! マナミが大変(・・)なことになってんじゃねーか!」


 人を指差すな、と注意しようかと思ったが言われるがままに、指し示されるがままにその指先を追うと……


「うきゅぅぅぅぅ~~」


 目をグルグル巻きにして頭から湯気を立てている教官殿がそこに居た。


「おいっ! 気をしっかり持て! 傷は浅いぞ!」


 トリアはふらふらと今にも倒れてしまいそうなマナミを支えながら、頬をペチペチと叩き呼びかける。


「うぅぅぅ~~……はっ! わ、私は……一体何を……?」


 何が起こったのかわからい。そんな様子で、マナミはレオンとトリアの顔を順繰りに見渡した。


「おっ? 正気に戻ったようだな。何、気にするな。事故みたいなもんだ」


 トリアは意識を取り戻したマナミの肩を、ぽんぽんと叩くとその耳にそっと唇を寄せマナミに聞こえるぎりぎりの声で囁いた。


「いいか? レオン相手に魔導学関連の質問は絶対にするな。

 あの子は自分から進んで話すタイプじゃないが、聞かれたことに関してこっちが聞いてないことまで話すタイプだ。

 それが自分の専門分野なら尚更だ。だから、あの子にはこれ以上何も効くな。あんただってまたあんな(・・・)話聞きたくないだろ?」

「はっ、はい……そ、そう……ですね」


 トリアとマナミはレオンの方へと向くと、二人揃って愛想笑いを浮べる。


「なんだよ?」

「なんでもねぇよ。マナミも話はこれくらいでいいよな?」

「えっ、ええ。十分です。あっ! あと、一つだけ。これは質問ではなく注意事項なのですが……

 レオン君は今日から騎士候補として学園(アカデミー)へ通うことになります。いくら候補生(・・・)と言っても、周りの方達からすれば騎士と違いなどありません。

 貴方の行いは騎士と同等として周りから判断されることになります。自分に恥じない、また人に恥じない行いを心かげて下さい。では、これを」


 そう言ってマナミは小さなバッチのようなものをレオンの左胸へと取り付けた。


「これは?」

「階級証です。わかりやすく言えば、個人に対して学園(アカデミー)が示す成績表の様なものだと思ってください。

 学園(アカデミー)内では、常に階級証(それ)を胸に着けていて下さい。故意に外したり、着けないでいたりすると罰則もあるので気をつけてくださいね」


 ゴーン ゴーン ゴーン


 丁度、マナミが話し終わったタイミングで、学園(アカデミー)中に鐘の音が響き渡った。


「あっ! もうそんな時間なんですか! 急がないと! ほらっレオン君もボーっとしてないで急いでください!」

「急ぐって何に?」


 鐘の音を境に、ひとり慌てだすマナミを余所に、いまいち状況が理解できないでいたレオンはあくまでマイペースのままで答えた。


「えっ? 何にって……ああ、今のは予鈴といって“もうすぐ授業が始まりますよ~”っていう合図なんです。

 急がないと開始に間に合わず、遅刻になってしまいます。

 遅刻をするときつ~いお仕置きがあるので気をつけてくださいね」


 マナミはレオンへの説明をしつつもテキパキと身支度を済ませると、姿勢を正してトリアへと向き直った。


「では、学園長。私はこれで失礼いたします」

「おう。朝っぱらから悪かったね」

「いえ。レオン君、教室まで案内しますので着いて来てください。

 その階級証のことは道ながら説明することにしましょう」

「ああ、わかったよ」

「んじゃ、がんばってこいよレオン~。しっかり勉強してくるんだぞ~」


 人事のように(実際、人事なのだが)トリアはパタパタと手をふりレオンが学園長室に入ってきたときと同じような、何とも腹の立つニヤニヤした笑顔でレオンを見送ったのだった。

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