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第三章ー理奈と彼氏

一言で言うならば、少しキザなところがたまに傷な好青年だ。

それが理奈の、櫻子をふった男、進藤清二を見た、素直な感想だった。櫻子の話しを聞いてた時は悪い男、という認識でしかなかったが、意外と実際は違っていた。キザで少し中性的な雰囲気。そしてフェミニズムな言動。会ってまだ数言しか話してないが、悪い人でないのが伝わってくる。誠実だが、正直者。少しチャラく見えるが、妙な安心感を覚える。無論、櫻子の話しが的外れというわけでもないだろう。

被害妄想や、悪い事は伏せておくようなタイプではない。

真意を探る。普段頼まれる事なんて滅多にない頼まれ事なだけに、よく勝手が解らない。

公園のベンチに並んで腰をかけると、沈黙が訪れる。清二はしょっちゅう目線が外れる、少し落ち着きのなさが伺えた。

「どうして、櫻子をふったんですか?一ヶ月でふるくらいなら付き合わなければ良かったんじゃないですか?」

考えていても仕方ないのでとりあえず問う事にした。少し詰問しているかのような問方になってしまった。

「……単刀直入だね。……。そうだね。俺には彼女じゃなかったっていうのがふった理由かな。勿論櫻子は良い子だったよ。気が効くし、優しい子だった」

なんて身勝手な理由だろう、理奈は少しばかり苛立ちを覚える。

少し見方が変わる。目の前で言われると腹が立つ。少し上からのようなニュアンスのする言葉だ。

「じゃなかったって、それは付き合う前に気付かなかったんですか?」

「森下さん、そんな事が出来れば、離婚をする夫婦なんていないよ」

少し可笑しそうに笑う。確かに、些かオーヴァーだっただろう。苛立ちを覚えていた理奈も、その無邪気な笑い方に少しばかりドキッとするが、笑顔が消えた瞬間に、そのドキッの良いんは完全に消え去った。むしろ苛立ちが復活した。

「櫻子に、気に要らない点があったって事で良いんですか?」

「辛辣な言い方だね。……けど、そうだね。彼女じゃダメな理由があったんだよ」

先程から、いや、会った時から、理奈は違和感をこの青年に感じて止まなかった。この違和感の正体はなんなんだろうか。まるで、左右の手袋を間違えて付けてるような違和感。

「……ダメ」

「具体的な事は言えないけど、なんていうのかな。俺は櫻子を充分に好きだ。けど、俺に必要なものは彼女じゃなかったんだ」

そもそもね、と少し寂しそうに笑う。

「俺は櫻子とは仲良くしたかっただけで、そういう気はなかった。だけど、彼女が出来たら、やったら何か変わるかとも思った。けど、何も変わらなかった。むしろ、気に要らない点がよく解ってね」

だから、感謝はしてるんだ。 理奈は眉をしかめる。

あれ、なんだろう、この違和感。

何か見落としてるような。左右の手袋を間違えてつけたような、歪さ。

「眉をしかめると可愛い顔が台無しだよ、森下さん」

俺が悪いんだけどね。そして、また寂しそうに、笑う。

フェミニズム。彼女。櫻子ではダメな理由。仲良くなりたいだけ。

「……」

全てが繋がったような気がした。

そうだ。それなら納得も行くし、簡単に理由を話せないのも解る。ただ、それが正解かどうか確かめるのは、本人に直接聞かなくてはならない。

だが、それは理由を隠したがってる彼の尊厳を傷つける事になる。

ならば、かなり的を射にくい問をするしかなさそうだ。彼が問の意味をまちがえる可能性もあるような、かなり遠回りな問を。

なんて、億劫な頼まれ事なんだろう。理奈は辟易する。やりにくい上に、答えも物凄く言いにくい。

「進藤清二さん、これが最後の問です」

「はい」

「あなたは……」

行き着いた答えは、やはり正しかったと見て間違いないだろう。


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