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第二十五限ー理奈と櫻子中編2

無言で腕を組み、恐ろしい目付きで櫻子を睨む理奈。対して土下座の姿勢のまま身動きを取らない櫻子。

「今、何時?」

いつもより、いや、聞いた事がないくらい低いトーン。櫻子は顔を上げぬままに、

「……十時半です」

「私知らなかったわ。櫻子は一、二限免除されているのね?」

「……いえ、あの、遅刻しました、すみません」

さすがの華波をフォロー出来ず、そっぽを向いて教科書を眺めている。次の時間の予習してなかった事がバレバレだった。

「櫻子、知っている?櫻子や華波が何かするとね、先生達私に言うの。どうにかならない?って」

「……知りませんでした」

「この間もお話したのよ?増田さんの遅刻が目立つって」

「……」

「……」

クドクドクドクド。理奈から説教を休み時間の間食らった櫻子の背中は、一回り小さかった。

そして、昼休み。

「華波、悪いんだけど、私は櫻子と話があるから、今日は一人で食べてくれる?」

「えー。そうなの?」

「ごめんね」

頭を撫でてやると、華波は嬉しそうな顔をして小さくうん、と頷く。

「飼い犬、あるいは優しくされると浮気も許してしまうダメ女」

櫻子はボソリと呟く。華波は特に気にした様子もなく、華波を独りと認識した何人かの男女が華波の周りを囲んで昼食の支度を始める。

櫻子と理奈は屋上のベンチでお弁当を広げる。理奈は華波家の昨日の残りものだ。櫻子は美味しそうな匂いの誘惑を誤魔化そうと、コンビニのパンにかぶりつく。

「……話、なんだけどね」

パンを食べながら口を開く。理奈は食べる手を止めて、視線を手元から櫻子に移す。

「バイト先で、まぁ、お気に入りの家族がいたの。いつも奥さんも旦那さんも、子供も楽しそうにしてた。羨ましいなぁ、って思いながら見てたんだけど。ホラ、あたし男運最悪だからさ。

そしたら、1ヶ月くらい前だったかな?奥さんが来なくなったの。旦那さんと、子供が二人だけ。それに、子供の、男の子の方、最近とれたんだけど頭に包帯巻いてて。まさか家虐待なのかなって。旦那さんがお菓子の袋持ってるんだけど、あれもなんかありそうだし……なんか、少し影がさしちゃっててさ。いつもあんなに幸せそうだったのにどうしたんだろうって思うんだ。

子供がたまに聞くの。お母さんいつ帰ってくるの?って。そしたら、旦那さんはもうすぐ帰って来るからね、とは言うんだけど、さ」

「成程、ね」

つまりはこう言いたいんだろう。

「櫻子はそれが離婚だと考えていて、その真意を聞きたい、って事なんでしょ?」

「さすがお姉ぇちゃん」

正解にはたどり着いた。櫻子の思っている事も解る。

おそらく、櫻子は恋愛といったものに対して不信感を募らせているのだろう。

元々短い恋をしてきた櫻子。同じように華波も短い恋をしていた。そして華波の両親の離婚。そう言った内外のものが募り、今櫻子は次の恋愛にいけないのだろう。愛はあるのか、という疑惑。

神経質過ぎる。そんな過敏になる事はないだろう。だが、櫻子が家計を支えるためにしているアルバイトの理由もまた、母子家庭であるためだ。

櫻子の場合は、櫻子が小学低学年の頃だったと聞いている。父親が重度のアルコール依存で、両親の喧嘩が途絶える事なく、そのまま離婚。

櫻子自身の恋愛も、振られるケースが多い。

捨てられる、その事に今は、以前以上に恐怖を覚えているのだろう。

理奈はそっと櫻子の手を握る。櫻子は落とし気味だった視線をあげる。

「大丈夫よ、櫻子。私はあなたを見捨てたりはしない。あなたが困った時はいつでも駆けつけて側にいるわ」

いつか、けーにも似た事を言われた。オリジナリティーがないな、と独り自嘲すると、櫻子は何も言わずに身を寄せる。

「ありがとう、お姉ぇちゃん。今の言葉何よりも嬉しいよ」

櫻子の手が肩に置かれる。理奈はそれを払う事なく、そっと抱き締めた。

「はいはい、泣かないの」

「泣いてないよー」

櫻子がケラケラと笑う。理奈は櫻子の頭を優しく撫でてやる。

「私には櫻子が泣いてるようにしか見えないよ。けど、私は櫻子が悲しむような答えにはならない気がするから、安心して」

「どうして!?」

驚いて身を剥がす。まだ何も核心に迫るような事は言ってないハズだ。櫻子に対して、理奈は事もなげに言う。

「勘よ、勘」

「……そんな、いい加減な……」

櫻子は腰を元いたところにおろす。毒が抜かれた気分だった。何事もなかったかのようにお弁当を食べるのを再開した理奈。その様に、少しばかり不安が払拭出来た。

「ありがとう、お姉ぇちゃん」

そして土曜日、理奈は華波を連れて櫻子のバイト先のファミレスにいた。窓際の席で理奈は優雅にお茶をしている。目の前で華波は苦い顔をして勉強をしている。

「うっうっ。休みの日にまで勉強なんてしたくないー。お姉ぇちゃんー」

「それ終わるまで口利かないからね」

華波がやっているのは昨日出された宿題だ。華波は泣いて助けを乞いながらもそれをやり続ける。

「……来たわね」

理奈は教えられた特徴だけで家族を判断する。そもそも土日の朝方、父親と子供二人、という光景自体が少ない。無論、それだけでは判断材料にはならないのだが、良い目印になった。特に、櫻子が言ってた、いつも何かしらお菓子の袋を持っているのも良い目印た。

その家族を、櫻子が理奈達の近くのテーブルに案内する。櫻子からアイコンタクトが送られて理奈は頷く。

「子供」

目の前で華波が目を輝かせている。華波は子供好きだ。理奈も好きではあるが、華波は目がない。

「可愛いーぃ。お姉ぇちゃん、あの子達手、握ってるよぉー」

華波は溶けそうな笑顔で子供達を見てる。華波の熱視線に気付いた二人は手を振る。

「はぅあぁぁぁ!可愛い!可愛いよ!お姉ぇちゃん、お姉ぇちゃん!ね?少しだけ、少しだけ勉強後回しにしてもいい?ちゃんと後で文句言わずにやるからさー」

「どちらかって言うと、華波の方が子供みたいだよね。……お父さんに失礼のないようにね」

「ふぁいっ!可愛いよー」

華波が手を振ると、子供達もキャッキャッ、と笑っている。

「おはよー!」

「「おはよーございますー」」

「グフッ、フッハッ!」

「……華波、かなりキモいよ」

悶える華波に、長い付き合いの理奈も少しひく。家族との距離感を縮めるために自分から声をかけたのだが、華波の骨抜きっぷりは尋常ではなかった。

「おはよう」

とりあえず理奈も華波に習って手を振って挨拶する。華波と違って大分控えめではあるが。

「「おはよーございますー」」

「……ん」

これは、中々思ったよりも可愛い。「こんな子なら、華波と育ててもい 」

「華波、勝手に変なナレーションいれないで。確かに可愛いけど、私は華波と違ってヘンタイじゃないの」

「む~」

無警戒に二人は理奈達に寄って来る。五歳程かな、顔の形もあまり区別がつかない。一卵性だろうか。

「おねーちゃんなにしてるのー?」

「おねーちゃんはお勉強してるんだよ」

「華波、さっきから言おうと思ってたけど、それは勉強でなくて宿題だからね」

「うぐっ、相変わらずお姉ぇちゃんは痛いところをつく」

「いもうとなのー?」

「いや、妹じゃないんだけど」

理奈は華波と二人から目線を外して父親の方に向き直る。注意深く挙動を観察しながら、会釈をする。

「すみません、連れが子供好きなもので」

「いえ、こちらこそ料理が来るまでの間相手をして貰えれば」

「双子さんなんですか?」

「ええ。息子が葵、娘が周です」

「良い名前ですね」

「ハハハ、妻が付けたのですよ」

ピクッ、理奈は思わずその言葉に反応してしまう。すぐ近くを歩いていた櫻子の視線が向けられるのをアイコンタクトで反らさす。

「奥様、ですか」

理奈がチラッとテーブルを見る。その視線に気付いた父親が頭を視線を落とす。

「いえ、今は妻は、その……」

「不躾ですみません」

理奈は視線を子供に戻す。華波と楽しげに話している。親子のテーブルに料理が来たのにも気付いていない。

「華波、ここは遊ぶ場じゃないの。食事をするところよ。お父さんにも迷惑がかかるでしょう」

「えー、いいじゃんー」

「……華波?」

「……はい、すみません」

華波は理奈の圧力に屈して席に戻る。先程の蕩けた表情とはうって変わった、この世の終わりのような顔をしている。

「ねー、櫻子に何かお願いされてたんでしょ?いいの?」

「大丈夫よ。もう終わったから」

まったく、とんだ早とちりだろう。

理奈は櫻子の軽率さに、ため息をつくしかなかった。

少し謎解き的には薄い気がします

母親不在の理由はなんでしょうか、といったところで

キーワードが少なすぎてなんとも言えませんが、解いてみて下さい

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