没我の麓
夜になるのを教える
夕暮れはタバコの煙に影を与える
黄ばんだ壁に虫が這うのを
数を数えて待ちわびる6時間前の昨日
同じ末路の画面を追う
そうやって何度も昨日を繰り返す
停止ボタンを探してみたけれど
馬鹿らしくて鋏で消した
それを証明する為に
廊下に赤色だけ落としておいたよ
その瞬間だけ
手首や心臓は昨日を繰り返さない
ほら、
今なら鳥肌の数だって
教えてあげられる
僕だった赤色が
今まさに床を蝕んで
じゃんけんで決まった友達が
振り向くのを静かに
乾きながら
その時を待ち
確かに飛躍する
溺れた紙飛行機
夜になるのを知る
停止ボタンはない
何年も前の虫籠の蝉に
いつ鳴き終わるのか訊いてごらん
鋏なら
どこにあるかわかるだろ
鏤められた鉄の味
どうやったって
昨日は終わらない
今だってほら
狂気の場所を確認してる
夜が加速をはじめた
6時間前の昨日を知る今日へと
今日と同じ明日が
ただ続く事を信じて
それを憂えて。