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第二十七話 エルシェラの秘密

 次なる公式リーグ戦を目前に控え、チーム・シュヴァルツ・アインツは、さらなる情報収集に力を注いでいる。


 ガレージの片隅では、ガオが火花を散らしながらルピナス・ツヴァイを調整し、ピピはモニターに張り付いて、情報端末を忙しなく操作している。


 葵は、エルシェラが持つ転移リングと古代兵器の密接な関係について、誰よりも深く探り続けていた。


 その謎こそが、自分たちが元の世界に帰るための唯一の道標になることを知らされていたからだ。


「エルシェラ様、この転移リングについて、もう少し詳しく教えていただけませんか?」


 葵は、作業の手を止め、エルシェラに対して射抜くような鋭い視線を向けた。


 エルシェラは一瞬、何かを迷うような複雑な色を瞳に浮かべて立ち尽くしたが、やがて静かに、深く頷いた。


「ええ、葵。すべてをありのままにお話しする時が来たようですね」


◆ ◆ ◆


 エルシェラは双子を、ガレージの奥にある静かな応接室へ招き入れる。


 丁寧に淹れた紅茶の香りが部屋に広がる中、古代から続く重く深い因縁について、静かに語り出す。


「このリングは、古代ハーフエルフ族の秘宝であり、世界中の古代遺跡に存在するゲートを起動させることができます。ゲートを起動させることで、次元の壁を越える。……それが、あなた方をこの世界に召喚した真の方法です」


 エルシェラの言葉に、双子の目が見開かれた。


 自分たちの推測が残酷なまでに正しかったことが、召喚主である彼女の口から証明された瞬間だった。


「つまり、そのゲートをもう一度使えば、あたしたちは元の世界に戻れるんですよね!!?!?!」


 楓がソファーから勢いよく身を乗り出し、期待に満ちた目をキランと輝かせる。


 これで家族の待つ故郷へ帰れる……その純粋な思いが、楓の不安を押し流そうとしていたが、エルシェラは悲しげに目を伏せて、断固として首を横に振る。


「いいえ。ゲートは、あなた方を召喚するために、想像を絶する膨大なエネルギーを消費しました。現在は、完全に枯渇しています」


「……待ってください。僕たちを召喚した、そのゲートを再充電して使うことはできないのですか?」


 葵の冷静な問いに、エルシェラは痛ましそうに瞳を揺らす。


「はい。一度起動させたゲートは、時空の歪みを修復するために、千年もの眠りにつくのです」


「千年? 僕たちが生きている間に、あの場所が開くことは二度とない、ということですね」


 葵の淡々とした言葉に、楓は絶望的な表情を浮かべ、震える瞳でエルシェラを見上げた。


「じゃあ、エルシェラ様。あたしたちは、二度と元の世界に戻れないってこと!?」


 エルシェラは、悲しみに打ちひしがれる楓に寄り添うように、その包み込むような平穏を宿した表情で、静かに首を振った。


「希望はまだ完全に失われたわけではありませんよ、カエデ。この転移リングにエネルギーを蓄積させることで、別の遺跡に眠るゲートを再起動させることができる。それが、バトルに勝利し、敗者からエネルギーを譲り受ける理由です」


「なんだ、良かったぁ」


 楓は、心底からの安堵のため息を漏らしたが、葵の思考は、さらに先へ鋭く突き進む。


「エルシェラ様。どうして、そこまでのリスクを冒してまで、僕たちを呼んだのですか? ただチームを再建するため、滅亡に瀕している国々の再興だけなら、異世界人を召喚するなんて不自然すぎませんか?」


 葵の峻烈な問いに、エルシェラは視線を落とし、あの夜の光景を辿るように語り始めた。


「あの日……私は夢を見たのです。燃え盛る空と崩壊する大地、鋼鉄の墓標が乱立する、この世界の終焉を」


 彼女は、弾かれたようにベッドから身を起こしたあの夜の、荒い呼吸と冷や汗の感触を思い出す。


 窓の外の爆音が残響として響く中、裸足で神殿へ走り、数千年の眠りにつく装置に手をかけたあの瞬間を。


「私は、純潔なるエルフではありません。人の血が混じった不完全なハーフエルフ。一族に伝わる予知も、私にとっては、常に霧の向こうにある不確かなものです。もし今の夢が、ただの妄執だったのなら。異世界の平穏をかき乱し、あなた方を絶望へ突き落とすだけなら……私は救世の主ではなく、亡国の罪人になるだろうと、その重圧に震えました」


 エルシェラの声は、微かに震えている。


「それでも……! あの絶望を切り裂いて躍動するお二人の姿だけが、唯一の光だった。だから私は、自分のすべてを賭けて、あの神殿の最奥で装置を起動させたのです。たとえ罪人と呼ばれようとも、アストラル・クロノスの未来を、お二人に託すために……!」


 沈黙が応接室を支配する。


 楓も葵も、自分たちが背負わされたものの重さを、そしてエルシェラが独りで抱えてきた決意の深さを、初めて真に理解した。


「そこで、シエルが命懸けでおこなっている情報収集が鍵となります。エルフ国の上層部が帝国と繋がっている以上、彼らが封鎖された遺跡の正確な場所を、把握している可能性が高いのです」


 希望はまだ、自分たちの手の中に残されている。


 双子は、ただ戦うだけでなく、遺跡の場所を探し出し、この世界の破滅を回避するという、巨大な使命を背負っていることを知らされた。


 この世界の命運と、故郷への帰還。


 二つの目的が繋がった瞬間、双子は古代の謎へ、さらに深く進んでいく覚悟を決めた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


エルシェラが抱えていた秘密、双子がこの世界に召喚された本当の理由が明らかになりました。

元の世界へ帰るための希望と、この世界の終焉を止めるための使命。

二つの目的が一つに繋がったことで、さらなる重大な局面を迎えましたね。

「亡国の罪人になるかもしれない」という恐怖を抱えながらも、双子の輝きに未来を託したエルシェラの切実な告白。

背負わされた使命の重さに戸惑いながらも、その覚悟を新たにした楓と葵。

彼らがこれからどんな選択をし、どのような戦いを繰り広げていくのか。

シュヴァルツ・アインツの進撃は、ここから加速していきます!


続きが気になる方は、ぜひ「ブックマーク」や「評価」での応援をお願いします。

皆さんの応援が何よりの励みです!


次回もお楽しみに!



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