5話 覚醒する鑑定士-2
早くも毎日投稿はあきらめました。できるだけたくさん投稿できるようがんばります!
【鑑定スキルがLv10に到達──固有スキル『因果の強奪』が解放されました】
【観測者Lv1を取得しました】
視界が、単なる情報の羅列を超えていく。
サイラスが放とうとしている、破壊を目的とした膨大な魔力の奔流。
それとは対照的に、激しく脈動するランタンからは、幾千もの細い銀色の糸が、周囲のガラクタや……そして、倉庫内にいる職員たちやサイラス、俺へ繋がっているのが見える。
「……ま、待ってください、サイラス様! 壊してはダメだ!」
俺の叫びに、サイラスの杖先が止まる。その鋭い眼光が俺を射抜いた。
「何を言う、鑑定士。この魔力密度……放置すれば倉庫ごと吹き飛ぶぞ。被害が出る前に霧散させるのが道理だ」
「違います! この中にはまだ、あの子が……少女が生きています!」
俺には見えている。
ランタンの中で、エリナの首筋に絡みついている銀の粒子を。
この呪われた品が、エリナを燃料にしているだけでなく、その「鎖」を通して外部の悪意を吸い上げ続けているのだ。
「……なんだと?中に人がいるというのか」
サイラスが絶句する。
魔導師長である彼にすら、銀色の魔力が遮断して中の様子は見えていないのだ。
俺の「観測者」の眼だけが、この空間の真実を把握できている。
倉庫に充満した銀色の光が、まばゆさを増す。
ランタンの水晶に亀裂が走る。
サイラスは凝縮した魔力の行き場を失い、戸惑ったままだ。
(......やるしかない……!)
俺は駆け出し、死を招く銀の光の中へ真っ直ぐに手を伸ばした。
「馬鹿か! 死ぬぞ!」
サイラスの制止を無視し、指先がランタンの冷たい金属に触れる。
凄まじい衝撃が脳を揺さぶる。
だが、今の俺には「見える」。情報の繋ぎ目が。
【深銀の揺り籠(呪)】の奥にある、エリナのほうへ対象を集中する。
【対象のステータスから『因果』を剥離します。対象を選択してください】
脳内のログに、俺は迷わず念じた。
(エリナを縛る『封印』、それを奪う!!)
「――『強奪』!!」
その瞬間、世界から音が消えた。
ランタンに巻き付いていた銀色の奔流が、逆流するように俺の右腕へと流れ込む。
熱い。骨まで焼けるような激痛。
だが同時に、ランタンの内を渦巻いていた銀色の粒子が、倉庫に充満していた光が、パキンと乾いた音を立てて砕け散るのを観測した。
銀色の光が霧散していく中、砕けたランタンの中から、小さな身体が崩れ落ちる。
俺は焼けるような腕の痛みも忘れ、その身体を抱き止めた。
腕の中に、確かな温もりがある。
埃っぽくて、少し冷たくて、でも間違いなく生きている少女の重み。
【『封印』の強奪に成功しました】
【呪物『深銀の揺り籠』から『生命吸収』の強奪に成功しました】
「…………は、はは」
乾いた笑いが漏れた。
一か八かの作戦だったが、成功したようだ。
ただ「見ていただけ」の役立たずの鑑定士が、王国最強クラスの魔導師すら手が出せなかった呪いを、力ずくで毟り取ってやったのだ。
「……信じられん」
杖を下ろし、呆然と俺を見つめるサイラスの呟きが聞こえた。
「これが今の俺の仕事です。これこそが仕分け、ですよ」




