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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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第7話 覚醒する鑑定士

 それから数日間、俺はひたすらギルドの地下倉庫に籠っていた。


「おい、依人、次の山だ。手際がよくなって助かるぜ」

「了解です」


 男性職員からの信頼も厚くなり、俺は次々とパーティの戦利品を捌き続けた。


【鉄質の鱗】

レア度:C

状態:劣

説明:アイアンリザードの皮。頑丈で防具の素材に適する。


【鉄血】

レア度:C

状態:並

説明:鉄を食らう魔物から採れる血。強化ポーションの主原料。


【悪魔結晶】

レア度:B+

状態:良

説明:ハーフデーモンの心臓部。魔導具の触媒として重宝される。


 鑑定していると、たまに凄そうなアイテムも混ざっている。戦力としては俺は相変わらずの雑魚だが、知識量だけはどんどん増えていく。

 この仕事は冒険者初心者の俺にとっては、まさに天職だった。


【鑑定スキルがLv9に上昇しました】


(おっ、また上がったな……よし!)

視界に浮かぶログを見て、俺は小さく口角を上げた。


 たった数日で鑑定スキルLv9。王都にいた頃とは比較にならない成長速度だ。倉庫は情報の宝庫であり、鑑定スキルのレベル上げにはもってこいだった。


────


 その日の午後。


 倉庫に運び込まれてきたのは、あの『ナイトレイヴン』の荷だった。


 相変わらず手入れが最悪で、血と泥に塗れた装備品の山。

その中の、薄汚れた麻袋を一つ手に取った瞬間、全身の産毛が逆立った。


「......っ!?」


本能的な拒絶感に、思わず手を放す。


──カラン、カラン......


 袋の中から転げ落ちたのは、掌に乗るほどの銀細工。精緻な装飾が施されたランタン型魔道具だった。

 古びた金属の鈍い光と、中央にはめ込まれた、曇った水晶。


「おい、どうした!!」


異変に気付いた職員が、呆然としている俺に声をかけてくる。


ハッと我に返る。


──鑑定。


【深銀の揺り籠(呪)】

分類:聖遺物

説明:過去の聖遺物が呪物化したもの。銀の因子が生命力を求めて肥大化中。



そして。

鑑定Lv9の眼は、その奥に潜む隠された別の情報を捉え始めていた。


ランタン型魔道具の、中央に位置する小さな丸窓の向こう。

満たされた銀色の液体の中で、フードの少女が膝を抱えるようにして浮遊していた。


【名前】エリナ・ド・ラメール(状態:封印)

【種族】ヒューマン

【年齢】15

【職業】■■■(ノイズにより不可視)

【レベル】6

【HP】-/84(衰弱・生命吸収状態)

【MP】17000/-(封印中)

スキル

【剣技Lv1】【風属性魔法Lv7】【水属性魔法Lv3】【強奪Lv1】【魔力感知Lv7】【■■■(ノイズにより不可視)】


 なんだこのMPは......。それに、このノイズ。

 というか、いや、それどころじゃない。


 視界の端で、職員がそのランタン型魔道具に手を伸ばそうとするのが見えた。


「触るなッ!!」


 思わず、怒鳴り声に近い叫びが喉から出る。

 ひっ、と職員がのけぞり、手を引っ込めた。


その直後、バタン!と倉庫の扉が荒々しく開けられた。


「サイラス様!?一体、何がどうなって……」


 職員が声を漏らす。


 そこに立っていたのは、王都にいるはずの魔導士長、サイラス・ペンブルックだった。


(なぜ、この人がここに……?)

俺も、声にこそ出さなかったが心の中で疑問を抱く。


「少々、気になる違和感があってのう、ここまで来たのじゃが……まさか、あの日の鑑定士殿が"呪物"の前で立ち止まっておるとは」


 重厚な足音を響かせ、サイラスが歩み寄る。


「呪物?これがですか?」

 男性職員が尋ねるが、サイラスは俺を見たまま距離を縮めるだけだ。


「鑑定士、依人よ。お主の眼には、それが何に見える?」

「……呪われた聖遺物。そして、極めて危険なものであるということしか。一体これは何なのです?何が起きているのです?」


 俺の答えに、サイラスは意外そうに方眉を上げた。


 その瞬間、ランタンが自意識を持ったかのように跳ねた。


『.......ぁ......あぁ....っ』


ランタンの内側から、悲鳴にも似た声にならない呻きが漏れ出す。


 ランタンはさらに振動を続け、その動きはどんどん激しくなる。

 銀色の光が当たりに止めどなく漏れ出し続けている。


「ぬう……ッ!臨界を超えたか!全員下がれ!命が惜しくば、今すぐこの場から逃げるんじゃ!」


 サイラスが杖を構え、倉庫全体を焼き払わんばかりの魔力を高める。


 だが、俺は動けなかった。


 銀色の光が俺の視界をジャックし、頭の中に直接、システムログが叩き込まれたからだ。


【重要:一定以上の脅威を観測しました】

【鑑定スキルがLv10に到達──固有スキル『因果の強奪』が解放されました】

【観測者Lv1を取得しました】


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