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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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第29話 ヘヴンウィングスのリーダー

 閑散としたバザルトの街。

 ギルドへ続く大通りの真ん中で、人垣が不自然に割れていた。その中心には、地面に這いつくばる一人の老人がいる。


「……ぐっ、がはっ……!」


 老人の前には、汚物を見るような眼差しで彼を見下ろす男が立っていた。

 金ピカの装備に身を包み、胸元には、王都グランゼルドの紋章が刻まれている。


 件の勇者パーティ『ヘヴンウィングス』のリーダー、九条廻(くじょう めぐる)だ。


「耳が遠いのか?貴様がぶつかってきたせいで、俺の装甲に傷がついたと言っているのだ。指を切り落とした血で謝罪文を書いた後に斬首されるか、全裸で謝罪を叫びながら街を一周した後に斬首されるか、早く選べ」


 九条は、老人が必死に抱えていた麻袋を、槍の石突で無造作に踏みつけた。


「あ、ああ……っ! やめてくれ、それは……っ!」

「……ほう?薬草か。なんだ、これが貴様の命より大事だとでも言うのか?」


 九条は嘲笑いながら、麻袋をかばう様にしてうずくまる老人を蹴り上げる。


「大事ですとも……!病の孫娘のために、全財産を叩いて買い取ったものなんです!今すぐ届けないと、あの子が……っ!」


 老人は涙を流しながら、九条の脚に縋り付いた。

 だが、騎士はその手を、まるで羽虫でも払うかのように無慈悲に蹴り飛ばした。


「娘なぞ、俺が面倒を見てやる。さあ、どちらにするんだ?」


 その顔は、完全に快楽に濡れていた。

 周囲の住人たちは、関わりを恐れて目を逸らすか、あるいは触らぬ神に祟りなし、と足早に通り過ぎていく。


 いや、違う。

 一人だけ、この状況に声をあげる者がいた。

「……おじい、ちゃん……?」


 目の前の光景が信じられない、というような掠れた声。

 その声の主は、老人のいう孫娘だった。


「……ティルメア……なぜ……来るなと言っただろう……っ!」

 老人の顔から血の気が引き、絶望に染まる。


 その様子を眺めていた男の口角が、耳元まで裂けるかと思うほどに吊り上がった。新しい玩具を見つけた子供のような、純粋で、それゆえに吐き気を催すほど残虐な笑み。


「これはいい!涙の別れシーンじゃないか!素晴らしい……予定変更だ」


 九条は老人の背中から足をどけると、翻ってティルメアの喉元へ槍を突き出した。

 鋭い穂先が首の皮を裂き、ツーッと、一筋の紅い血が伝い落ちた。


「やめろォォォーー!!」


 老人の叫びを、九条は楽しげに鼻で笑う。


「おい、糞ジジイ。いい二択を思いついたぞ。今ここで、この小娘の四肢を一本ずつこの槍で抉り抜くのを黙って見届けるか。あるいは、愛する孫娘の手で、お前の心臓を抉り取られるか。 ……さあ、どちらがいい?選ばせてやろう。優しい孫思いの祖父様なんだろう?」


 九条は冷たい槍先で、ティルメアの頬を愛でるように撫で回す。

 少女は恐怖でガタガタと震え、老人は石畳を掻きむしりながら咆哮した。


「やめてくれ……っ!お願いだ、その子だけは……っ!もちろん後者だ!儂の命なんか、どうなったっていい!」


「……ふん。いいだろう」


 九条は、アイテムボックスから一本の短剣を取り出すと、それをティルメアの小さな手に、包み込むように握らせた。


「いいか、これで君のおじいちゃんを刺すんだ。なに、おじいちゃんが望んだことだよ」



(……見てられねえな……限界だ)


 隣でエリナが、杖を握る指を真っ白にさせている。彼女の怒りも限界のようだ。


 俺は、鑑定を発動する。


九条 廻(くじょう めぐる)

【職業】竜槍騎士

【レベル】74

【基本ステータス】

HP:6500 / 6500

MP:1800 / 1800

筋力:710

防御:550

敏捷:580

魔力:220

精神:15


【固有スキル】

『上級槍術Lv1』『絶対防御Lv1』『土属性魔法Lv4』『状態異常耐性Lv7』『魔力感知Lv7』『竜槍術』『加速領域』『絶対威圧』


 九条が少女を背後から押し、ゆっくりと、確実に老人の胸元へ刃を誘導していく。

 老人が覚悟を決めて目を閉じ、少女が「やだ…やだ…」と声を震わせた、その時。


――ヒュンッ!


 空気を切り裂く鋭い音が響き、ティルメアの手から短剣が弾き飛ばされた。


 カラン、カラン……と、虚しい金属音が石畳に転がる。


「なっ、だれだ!?」


 九条が騒ぎ、周囲を睨みつける。


 野次馬たちは怯えて首を振るが、俺の『観測者』は、その攻撃の"因果"を捉えていた。

 短剣を弾いたのはスキル『投擲』によるもので、その因果(依人には黄金の糸に見えている)を辿れば、元にいる発動者の姿が見えるはずだ──。


「あいつは……!?」


 建物の屋上。すぐに姿は消えたが、一瞬ちらりと見えた若紫のスカートの裾。

 つい先ほどまで一緒だった、彼女で間違いないだろう。

 

「……おい、金ピカ」


 重苦しい静寂を切り裂いて、俺の声が響く。

 九条が不機嫌そうに、獲物を横取りされた猛獣のような目でこちらを振り返った。


「……あ?なんだ貴様。死にたいのか?」


「死ぬのは御免被りたいね」


 俺は一歩、踏み出す。

 そして俺は、敵意をむき出しにした。


「むしろあんたを――今ここで、殺したいくらいだ」

聖槍「天貫」、絶対防御は「物理耐性Lv10+魔法耐性Lv10」獲得後に得られる上位スキルです。


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