第3話 鑑定士は戦力外通告される
「ところで......」
その後、ステータス画面の話題になった。
話している中で、自分のステータスは見えるが、他人のものは見えないらしいということがわかった。
「鑑定士なら見えるんじゃ?」という話も出たが、俺は首を横に振るしかなかった。
他の四人のステータスは俺よりだいぶ高かった。
勇者の陽斗でこんな感じだ。
【名前】神谷 陽斗
【種族】人間
【職業】勇者
【レベル】1
基本ステータス
【HP】221/221
【MP】75/75
【筋力】74
【防御】74
【敏捷】66
【魔力】58
【精神】81
スキル
【上級剣技Lv1】【指揮Lv10】【状態異常耐性Lv1】【魔力感知Lv1】【勇者】【天光剣】
──チートすぎる。俺の何倍だ。
長剣を軽々振り回していた理由が、嫌というほど理解できた。
俺も最初は長剣を渡されたが、持ち上げるだけで精一杯だったため、今は短剣を渡されている。
腰に差したそれは、まだ一度も使っていない。
俺も、十分の一のステータスをみんなに伝えたが、彼らは苦笑いしながら「気を落とすなよ」「伸びしろがある証拠だよ!」と励ましてくれた。
────
翌日の訓練は王城内にある演習場だった。
指揮を取るのは騎士団長、ロイド・ブラックウッド。
白髪交じりの壮年の男で、声に無駄がない。
「陽斗殿、達也殿はこちらへ」
どうやら剣の稽古らしい。
「由奈殿、さよ殿はサイラス魔導師長についてくだされ」
と、横にいるハットを被った、これまた壮年の男に手を向ける。
そして、チラとこちらに視線を向ける。
一瞬、逡巡ののち。
「……鑑定士殿は待機を。下手に戦闘されても困りますからな」
名前すら呼ばれず、丁寧な口調で切り捨てられた。
困った俺の表情を見かねてか、陽斗が口を挟む。
「団長、それは──それはあまりに……剣の稽古くらいはみてもいいのでは?」
「......ふむ。まあ、良かろう」
陽斗のおかげで俺は稽古に混ざることが出来たが、実際やってみるとただの晒し者だった。
二人は剣技スキルを持っているため、素振りも見事なもので、騎士たちとの模擬戦も卒なくこなしている。
一方で、俺には剣技スキルもなければステータスもかなり低い。
素振り訓練では騎士団長の刺すような視線を背中にひしひしと感じ、模擬戦では陽斗と達也の憐憫の視線が胸に痛かった。
俺の相手をした騎士は、子どもをあやすような対応しかしない。
到底、剣の稽古といえるものではなかった。
素振り訓練では騎士団長の刺すような視線を背中にひしひしと感じ、模擬戦では陽斗と達也の憐憫の視線が胸に痛かった。
地獄のような午前を乗り越え、午後のことだ。
俺だけ王城内を散歩する許可が出た。
事実上の戦力外通告だ。
陽斗も、情けない俺の姿を見たせいかもう口出ししてこなかった。
翌日は再び魔物討伐。
俺はせめてもの役に立とうと、荷物持ちを引き受けた。
「なんか悪いな、依人」
「落とすんじゃねーぞ?」
「あんま気負いすぎるんじゃないわよ」
「ん......」
初日は騎士団が大勢同行していたが、今ではロイド団長と部下が二人、距離をあけて後ろからついてきているだけだ。
このパーティは、もう"大丈夫"という判断なのだろう。
森を進む。
「スライムが3体!」「ゴブリンが2体!」「オークだ!」
鑑定で見えた内容を叫ぶ。「ああ!」「おう!」最初のうちは返事があった。
だが、それも徐々に減っていく。
────
昼食の時間になった。
配膳された大皿は、自然と俺以外の四人の前に寄せられ、俺の前には何もない。手を伸ばして、ようやくサラダに届く程度だ。
自分が役に立っていないことを自覚していた俺は萎縮して、取ってくれと頼むことができなかった。
仕方なく、何とか自力で届くサラダをつまんでいると、陽斗が別の大皿を寄せてくれる。
「依人、肉食うか?」
「......ありがとう」
それを見ていた騎士団長が、不機嫌そうに顔を歪めた。
────
それから、三日も経つ頃。
「オーク!」「フォレストウルフ4体!」「フォレストスパイダー!」「ダートワーム!」
俺の声は、もう誰にも拾われない。
鬱陶しく思われているだろうか。
この作業を取り上げられてしまうと、手持ち無沙汰になってしまうので、辞めるに辞められないでいた。
昼食の席でも、視線は合わない。話題にも上らない。
大皿を寄せてくれたあの日の陽斗は、もういない。
────
俺の居場所が削られていく。
音もなく、確実に。
その日の夜、俺は。
一人で、鑑定ログをぼんやり眺めていた。
(役に立たない、という評価は……間違っていない)
この世界では、戦えない者に価値はない。
レゾナンスに俺の居場所はないのかもしれない。
そして、その不安は的中したようだった。
翌日、俺たち勇者パーティ【レゾナンス】は王の間へと呼び出された。




