第2話 優しさの賞味期限はもやし -2
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「ところで......」
その後、ステータス画面の話題になった。
自分のステータスは見えるが、他人のものは見えないらしい。
「鑑定士なら見えるんじゃ?」という話も出たが、俺は首を横に振るしかなかった。
他の四人のステータスは俺よりだいぶ高かった。
勇者の陽斗でこんな感じだ。
【名前】神谷 依人
【種族】人間
【年齢】17
【職業】勇者
【レベル】1
基本ステータス
【HP】221/221
【MP】75/75
【筋力】74
【防御】74
【敏捷】66
【魔力】58
【精神】81
【運】80
スキル
【上級剣技Lv1】【指揮Lv10】【状態異常耐性Lv1】【魔力感知Lv1】【勇者】【天光剣】
......チートすぎる。
俺の何倍だ。
長剣を軽々振り回していた理由が、嫌というほど理解できた。
俺も最初は長剣を渡されたが、持ち上げるだけで精一杯だった。
今は短剣を一本、腰にさしているだけだ。
まだ、一度も使っていない。
翌日の訓練は王城近くの演習場だった。
指揮を取るのは騎士団長、ロイド・ブラックウッド。
壮年の男で、声に無駄がない。
「陽斗殿、達也殿はこちらへ」
剣の稽古らしい。
「由奈殿、さよ殿はペンブルック魔導師長についてくだされ」
と、横にいるハットを被った、これまた壮年の男に手を向ける。
そして、チラとこちらに視線を向ける。
一瞬、逡巡ののち。
「......鑑定士殿は待機を」
......名前すら呼ばれなかった。
「下手に戦闘されても困りますからな」
丁寧な口調で、切り捨てる。
「団長、それは......」
陽斗が口を挟む。
「それはあまりに──剣の稽古くらいはみてもいいのでは?」
「......ふむ。まあ、良かろう」
結果、俺も剣の稽古に混ざることになったが──
現実は、ただの晒し者だった。
剣技スキルを持っている二人と違い、俺には剣技スキルが無い。ステータスだってだいぶ低い。
俺の相手をした騎士は、子どもをあやすような対応しかしない。到底、剣の稽古といえるものではなかった。
騎士団長の刺すような視線が、背中に突き刺さる。
陽斗と達也の、憐憫の視線が、胸に痛い。
午前中は、地獄だった。
午後。
俺だけ王城内を散歩する許可が出た。
事実上の戦力外通告だ。
陽斗も、情けない俺の姿を見たせいかもう口出ししてこなかった。
翌日は再び魔物討伐。
俺はせめてもの役に立とうと、荷物持ちを引き受けた。
「なんか悪いな、依人」
「落とすんじゃねーぞ?」
「あんま気負いすぎるんじゃないわよ」
「ん......」
初日は騎士団が大勢同行していたが、今では団長と部下が二人、距離をあけて後ろからついてきているだけだ。
このパーティは、もう"大丈夫"なのだろう。
森を進む。
「スライムが3体!」「ゴブリンが2体!」「オークだ!」
鑑定を叫ぶ。「ああ!」「おう!」最初のうちは返事があった。
だが、それも徐々に減っていくを
昼食。
配膳された大皿は、自然と四人の前に寄せられ、俺の前には何もない。手を伸ばして、よくやくサラダに届く程度だ。
自分が役に立っていないことを自覚していた俺は萎縮して、取ってくれと頼むことができなかった。
サラダをつまんでいると、陽斗が皿を寄せてくれる。
「依人、肉食うか?」
「......ありがとう」
騎士団長が、不機嫌そうに顔を歪めた。
それから、三日。
「オーク!」「フォレストウルフ4体!」「フォレストスパイダー!」「ダートワーム!」
俺の声は、誰にも拾われない。
鬱陶しく思われているだろうか。
この作業を取り上げられてしまうと、手持ち無沙汰になってしまうので、辞めるに辞められないでいた。
昼食の席でも、視線は合わない。話題にも上らない。
大皿を寄せてくれたあの日の陽斗は、もういない。
──俺の居場所が削られていく。
音もなく、確実に。
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夜。俺は。
一人で、鑑定ログをぼんやり眺めていた。
(役に立たない、という評価は)
(間違っていない)
この世界では、戦えない者に価値はない。
レゾナンスに俺の居場所はないのかもしれない。
......だからこそ。
翌日、俺たち勇者パーティ【レゾナンス】は王の間へと呼び出された。




