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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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第26話 消えた勇者たちの噂

 それから数日間、俺たちはルナシリス湖南部を狩場に設定し、レベルアップを繰り返した。


 自信をつけた俺たちがギルドで受注したのは、Dランク冒険者が受けられる最高難度の依頼――。

行商人の「迷宮都市バザルトへの護衛」だ。


 バザルト。そこは"亡霊の森"の深部を抜け、天を突く険峻な"断罪(ガイザス)山脈"の麓に位置する、手練れの冒険者が集うダンジョン都市。


 東側は深い森、西から北にかけては切り立った岩壁の山脈に守られたその街は、小規模ながらも独立した活気に満ちているという。



 というわけで、俺たちは依頼書をギルドカウンターへ持ち込んだ。


「依人さんは、ルーフェルからバザルトへ向かうルートは初めてですよね?ギルドから公式な注意事項が二つあります。必ず守ってください」


受付嬢ルティアさんが前置きをし、一枚の地図を広げた。


 そこには、目的地であるバザルトを包囲するようにそびえる"断罪山脈(ガイザス・ピーク)"と、その手前に広がる広大な"亡霊の森"が記されていた。

 さらにその手前にはルーフェルが記されている。


「まず、こちらが亡霊の森を抜けるルートとなりますが、街道は整備されておりません。代わりに一定間隔で"導標石"が道しるべとして打ち込まれています。森の中はとても迷いやすいので、この"導標石"を決して見失わないようにしてください」


 彼女は森への入り口を指し示し、ルートを指でなぞってから、一呼吸おいて続ける。


「次に、森の最深部にはドラゴンが生息しております。正規ルートを外れなければ遭遇の心配はほとんどありませんが、危険地帯を抜けるということを重々ご留意ください。今回はあくまで護衛任務ですので、強敵と戦闘する必要はありません。索敵を駆使して戦闘を避ければ、難易度自体は高くありませんから」


 本来、亡霊の森深部まで行く依頼はCランクの担当だ。今回、Dランクの俺たちが引き受けられたのは、魔物討伐ではなく、護衛という名目だからだろう。


「あの森、ドラゴンなんていたのかよ……」

 俺は思わず顔を引きつらせた。


「ええ。ここまででご質問はありますか?」

「……いや、大丈夫だ。続けてくれ」


 ルティアさんは説明に使用した地図を丁寧に折りたたみ、俺に手渡してくれた。


「……それから、最後は忠告です。現在、バザルトのダンジョンでは王国の勇者パーティ【ヘヴンウィングス】が、演習及び物資輸送のために駐留しています。彼らは王命を盾に、理不尽な要求をしてくることがあるかもしれません。もし遭遇しても、絶対に逆らわないでください」


「……以上です、よろしいですね?」


 最後の注意事項を伝える際、彼女の声には隠しきれない重苦しさが混じっていた。


「ヘヴンウィングス……?レゾナンスじゃなくて、か?」


「ええ、そちらとはまた別の勇者パーティですね」


 これで、俺が抱いていた疑念が一つ解消された。

 ──やはり、勇者パーティは複数存在する。


「そうか……わかった、ありがとう」


 俺たちがカウンターを離れたあと、ルティアさんが何やら不安になる独り言を漏らしていたが、そんな事は知る由もなかった──。


「……あ。厄介な魔物の説明するの忘れちゃったわ……まあ依人さん達なら大丈夫よね──」


────


 ギルドから出ると、エリナが声をかけてくる。


「依人、あなた、まさか他の勇者パーティの存在を知らなったの?」

「え、……まさか常識なのか?」

 エリナが頷く。


「王都が積極的に公表しているわけじゃないけど、噂は普通に入ってくるわよ。私も別に詳しいわけじゃないけどね」


 ──なんということだ。俺はとんだ常識知らずだったってわけだ。


「で、その『逆らうな』っていうのは?」


 遠征に備えて市場へ向かう道中、俺はエリナに尋ねた。


「昔からある勇者パーティには特に多いんだけど……とにかく態度が横柄なのよ。道を開けさせるのは当たり前、この店を貸し切りにしろ、と騒いだり、酷いときには暴力を振るうこともあるわ」


 勇者パーティがどれだけ偉いかはわからんが、身分にかこつけて、威張り散らかしている、というわけか。

 胸糞悪い話だ。


「あと、もう一つ。まあ、これは彼らが危険な任務に就くことが多いから、という理由で片付けられる話なんでしょうけど……」


 エリナがふと、声を潜めて言った。


「五年以上続いたっていう勇者パーティは、聞いたことが無いわ」

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