第22話 黄金の慢心
レゾナンスのシーンです!
──少し、時を戻して。
「王都を脅かす穢れは、僕がこの手で掃除してあげる」と言い残し、意気揚々と森へ向かった勇者パーティ『レゾナンス』の話をしよう。
彼らが向かった先は。
長いこと「亡霊の森」と呼ばれ、入り口付近は初心者の狩場として重宝され、奥に進むに連れて大型魔獣が棲みつく、とても広い森だ。
そこを抜けるとダンジョンがあり、その先には迷宮都市が広がっている。
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ガタガタと揺れる馬車の御者台で、陽斗は不機嫌そうに手綱を捌いていた。
「……クソッ、なんで勇者の僕が馬の世話なんてしなきゃいけないんだ。依人がいれば、こういう雑用は全部彼に押し付けられたのに」
陽斗は、慣れぬ手つきで馬を操りながら、苦渋に満ちた表情を浮かべている。
「──ふぁ……。ねえ、いつまでこんな薄気味悪い森に居なきゃいけないの?」
荷台で、退屈そうに欠伸をしたのは、魔法衣装を身にまとった水瀬由奈だ。
指にはめられた聖遺物【深淵の環】が黒々と光っている。
彼女が視線を向けた先には、黒い鎧に身を包んだ剣士、黒川達也がいた。
背中には漆黒の刀身に禍々しい赤線が走る大剣──【半魔剣グラムス】を背負っている。
「王都直々の命令だ、仕方ねえだろ。この森も王都の管轄だし、様子がおかしいっていうなら調査するしかねえ」
彼らが通り過ぎた背後には、「調査」のついでに散らしたであろう魔物の残骸がいくつか転がっていた。
「二時の方向、四体。たぶん岩トカゲ」
荷台の一番後ろで、探知魔法を薄っすらと展開し続けていた白縫さよが伝える。
国宝級の魔道具──【聖天の羽衣】を纏う彼女の姿は、この陰気な森には不釣り合いなほど白く輝いていた。
「……陽斗、任せたわ」
「はいはい、わかったよ」
由奈の指示に、陽斗が前を向いたまま投げやりに応じる。
程なくして横の草むらから飛び出した岩トカゲ四体は、まともに姿を見せる暇もなく、陽斗の放つ聖剣の閃光によって瞬殺された。
「しっかし、ここまで何もねえとは拍子抜けだよなあ。なあ陽斗、もう調査終了でいいんじゃねーか?」
荷台の気だるげな空気に毒されたか、黒川達也が提案する。
「そうだな。これだけ何も出てこないなら、異常なしってことでいいと思う。ま、何かあったらあったで、そのときに対処すればいいだけだ」
陽斗は聖剣の柄に手をかけ、驕った様子でそう言い放つと、乱暴に馬車を止めた。
「よし、引き返すぞ!」
「賛成~!さっさと王都に戻って、温かいシャワーと美味しいワインを楽しみましょう!」
──あるいは、彼らがもう一分でも長く探索をしていれば、「銀色の物体」が這う姿を捉えることが出来たかもしれない。
──そしてそれが、岩トカゲを侵食し、岩塊竜へと無理やり進化させる光景を見ることが出来たかもしれない。
だが彼らは、そこまで危機感を抱いていなかった。
慢心故の、怠慢。
驕ったが故の、抜かり。
彼らが、この調査が「失敗していた」と知るのは、随分と先の事となる──。




