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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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第15話 凶報と、静かなる予兆

 リーフェルの街に戻った俺たちは、そのままギルドの受付へと滑り込んだ。


「……えっ!? ハイゴブリンと、複数種の上位個体ですか!?」


いつもの穏やかな顔を驚愕に染めたのは、受付嬢のルティアさんだ。


彼女は俺の出した受注票と、証拠として持ってきたハイゴブリンの魔石を見つめ、信じられないといった様子で声を震わせた。


「依人さん、これは本当ですか?初心者エリアにそんなものが……?」


「ああ。俺たち以外にも目撃者がいる。……そこにいる彼らだ」


 俺が後ろを指すと、一緒に逃げてきた茶髪の少年たちが必死に頷く。


三羽兎(トライブラビッツ)の方々ですね。少々お待ちください」


 事態の深刻さを察したルティアさんは、すぐにカウンターの奥へと消えた。

ほどなくして彼女が戻り、俺たちを奥へと促す。


「依人さん、エリナさん。それと……あなたたちも。副ギルマスが直接お話を聞くそうです。奥へ」


 案内されたのは、重厚な扉の向こうにある応接室だった。

 ギルドマスターは多忙らしく不在だったが、代理の副ギルマス、バーナードさんが俺たちの報告を聞くべく対応してくれた。


「……状況は分かりました。魔物の暴走(スタンピード)、とも違うようですが……断定はできませんね。由々しき事態であることには違いありません。すぐに高ランクパーティを調査に向かわせましょう。君たちは下がっていいです、よく知らせてくれました」


────


 緊迫した報告を終え、俺たちはギルドの向かいにある食堂へと足を運んだ。

 どっと出た疲れを癒やすように、一緒に逃げ延びた三人組とテーブルを囲む。


「……ふぅ。改めて、俺はレイス。こっちの眼鏡がゼンで、女の子がリンだ。三人で三羽兎(トライブラビッツ)っていうパーティを組んでいる。よろしくな」


 茶髪の少年、レイスがジュースを一気に飲み干して笑った。


 安堵からか、魔導師のゼンは眠たげな目を手でこすりながら、


「それにしても、ハイゴブリンを二人で倒したなんて、相当強いんですね」


 ゼンの言葉に、エリナが少し照れくさそうに髪をいじっている。


「いやいや、あんなのまぐれだよ。俺たちはまだ駆け出しのFランク冒険者さ」


 ええっ!?と驚く三人をよそに、俺は話を続ける。


「……それより、さっきレイスが言ってた『多数目撃した』ってのは、具体的にどのくらいだったんだ?」


レイスの顔が、再び強張った。


「それがさ……。俺たちはゴブリン討伐してたんだけど、森の奥からフォレストウルフが数体出てきてさ。迎え撃とうとしたら、さらに後ろからでっけぇフォレストウルフが二体いるのが見えて、慌てて逃げたんだ。あれは上位種のシルバーウルフじゃないかな……」


「逃げている途中、ハイゴブリンと一体鉢合わせましたね。まあ、奴は動きは遅いので逃げるだけなら問題ありませんでしたが」


と、ゼンが補足する。


「……そんな異常事態、本当に調査パーティだけで大丈夫なのかな」


リンが不安げに呟くと、隣のテーブルで酒を飲んでいたベテラン冒険者が、鼻で笑いながら割り込んできた。


「心配ねえよ。運がいいぜ、お前ら。ちょうど今、この街には『王都からの貴客』が滞在してんだ」


「貴客……?」


「ああ。さっきギルドの裏口に、派手な馬車が止まってただろ?王都の騎士団も一目置く、Aランク越えの超エリート様一行だ。名前は……確か、勇者パーティ『レゾナンス』とか言ったかな」


その名前を聞いた瞬間、俺の心臓が嫌な音を立てた。


「……陽斗(はると)が、来ているのか」


俺の呟きは、レイスたちの「勇者!?すげえ!」とはしゃぐ声にかき消された。


思えば、ここリーフェルは王都の隣町だ。


 活気があって居心地がいいからつい忘れていたが、勇者パーティと関わりたくないのならもっと離れた町へ移るべきかもしれない。


 事が落ち着いたら、エリナに相談してみよう。……着いてくるかは、彼女次第だが。


────


食事を終え、三羽兎(トライブラビッツ)やエリナと別れた俺は、魔道具屋に足を運んでいた。


 町の移動も視野に入れ、魔法鞄(マジックバッグ)を購入するためだ。

 空間魔法が施されているらしく、たくさん収納できる便利な鞄なのだが、便利なだけあって値段がそこそこする。


 しかし、今の俺にはハイゴブリンの魔石を売った報酬がある。


金貨六枚を支払い、念願のバッグを手に入れた俺は、すっかりほくほく顔で店を後にした。


魔物の暴走のことなどほとんど忘れ、その晩は柔らかなベッドで泥のように眠った。


────

 しかし、翌朝。


 調査の結果を聞こうとギルドを訪ねると、日常の安穏とはかけ離れ、地獄のような様相を呈していた。


 昨日派遣された調査パーティや、情報を知らずに巻き添えを食らった冒険者たちが重症を負ってギルドに運び込まれているのだ。


状況を教えろと怒号が飛び交い、冒険者たちでごった返している。


「無理だ……あんなの、数が多すぎる……」


運び込まれる冒険者の一人が、虚空を見て震えている。

ギルド内がパニックに陥り、副ギルマスの静止の声すら届かないその時──。


「──随分と騒がしいね。この程度の『バグ』に、何をそんなに怯えているんだい?」

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