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花を編む魔女  作者: しお
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死神によく似た子

「どうしよう・・」


顔面蒼白と言った様子でラズリルは呟いた。

今日は魔女学校リズコッタの卒業試験の日。旅立ちの日だ。

毎年魔女見習いがここで学び、修行し、そして試験をクリアして魔女として巣立っていく。


魔女見習いであるラズリルもまた今日卒業試験を受けて憧れの魔女になるために友人らと集まり、広大な学校の中庭にいた。


中庭に集まったのは今回魔女見習いを卒業するために集まった受験生およそ200人ほどだ。


魔女になるためには立派な魔女の帽子をかぶらなければいけない。

他にも魔女になるための基準はあるが、まずは何にせよ帽子だ。帽子を持つ者が魔法使いまたは魔女として初めて正式に認められる。


帽子は一つの証明書なのだ。



昔から魔女になることが夢だった。

その帽子をもらう試験が今まさに開始されたばかりなのだが…


ラズリルは途方に暮れていた。



(早く護衛獣とパートナーにならないと…)


これから始まる試験に備えて、まずは魔女である先生達に仕える様々な種族の護衛獣とパートナーになるよう言い渡された。

卒業試験は言ってしまえば「旅」なのである。

旅に出て見聞を広げることが試験内容の1つだ。


実技試験でも筆記試験でもない。

今この場でパートナーを作りすぐにでも旅に出なければいけない。



(噂には聞いてたけど難易度高いよなあ…)


ため息をつきながらラズリルは当たりを見回した。


様々な種族の護衛獣達が早くも生徒達とパートナーとなり親睦を深めつつあった。

大柄な巨体の見るからに強そうなゴブリン、魔力の高そうな優しそうなエルフ等、皆お互いに声をかけあっている。


喋れる者、喋れない者と別れておりどの護衛獣と絆を結びパートナーとなるかはほぼ早い者勝ちだ。



まずい、取り残される…!


そう思った瞬間ふと視線を感じ後ろを振り返った。

そこに1匹の護衛獣が立っており、こちらをじっと見つめていた。


ラズリルはその護衛獣をひと目見た瞬間、ぞわっとした。


それは長身で人のような姿をしており、黒いコートのようなものを羽織っている。フードの下からギョロっとした白い2つの目がこちらを覗くように見つめていた。

その姿はかつて、災厄と呼ばれた「死神」にそっくりだった。


「…」



死神。


それはいつから存在していたのか分からない、恐ろしい力を持った生物。

黒いローブで身を包み、大きなフードの下からは白い目と口角のつり上がったにんまりとした口元が覗いていたという。

ほとんどの生き物は死神に遭遇すると死ぬと言われていた。

そのためラズリルも本でしか死神を見たことがない。



だが5年前に死神は消えた。


英雄ソイとその相棒のドラゴンであるエリアスによって葬られ、完全に世界からいなくなった。

それにここにいるのは生徒と先生と、その先生達が呼び出した護衛獣だけのはず。そう、不安がることは何もないのだ。

ラズリルは深呼吸をした。



(…ずっと見てくる…)


まだ少し怯えながらも頭を横にし、1度視線を外した。

そして頭の向きを変えずにもう一度その黒いコート姿の護衛獣に目をやってみた。


再び目が合った。


(…!!!)


どうやら一切視線を背けることなく、ずっとラズリルのことを見ているようだ。

焦りながら辺りを見回してみた。もうすでに護衛獣とパートナーになった生徒が多いようだが、まだパートナーを探しウロウロと中庭を歩く者もいる。

その黒いコートの護衛獣のすぐ横を通るが、それに声をかける者は誰もいない。


まるで見えていないかのように、スルーしている。


(皆怖くて声掛けないってこと!?)


気付けば黒いコートの護衛獣は少し近づいてきているようだった。

相変わらずじっとこちらを見つめて一切視線を外そうとしない。


嫌だけど仕方ない…気まずさに負けたラズリルは引きつった笑顔をその黒いコートの護衛獣に向けた。



「えっと、初めまして…まだパートナーは決まってない?」


おそるおそるラズリルは黒いコートの生物に声をかけた。

近づいてみて改めて思ったがだいぶ身長が高い護衛獣のようだ。

180cmは軽々超えているだろうか。手も足も、後ろ姿であればほぼ人間と違いない見た目だ。

唯一顔が死神に似ているところが気掛かりだが…



(…あれ?)


ラズリルはきょとんとした。


「君は…もしかして口がないの?」


思わずじっと顔を見つめてしまった。

そう、死神ならばにんまりとした大きな口があったはず。

やはり似ているだけでこの目の前の生物は死神じゃないと確信した。

でも、


「困ったな…口がないと話も出来ないし名前も分からないよ」


名前、という言葉を聞いた時黒いコートの生物は軽く首を傾げた。

先生に聞くべきだろうか…

ラズリルは辺りを見回すと、人の言葉を話せない護衛獣とパートナーになったらしき生徒が護衛獣に名前を付けてあげているのを見た。


そっか、名前が分からないなら付けてあげればいいんだ。


でもどんな名前にしようかな…。

ラズリルはもう1度黒いコートの生物をまじまじと見つめた。これと言った特徴はないから名前が付けずらい…が、もうこれしかないと1番の特徴から名前をとる事にした。



「クロ」


ラズリルが一言そう呟くと黒いコートの生物はもう一度軽く首を傾げた。

単純過ぎる名前だが、もうこれ以上は何も浮かばない…。


「君の名前。クロってどうかな?クロって呼んでもいい?」


ほんの少し間があった。が、どうやら話は通じるようだ。

クロ、と呼ばれた黒いコートの生物はラズリルの問いにおもむろに頷いた。

ラズリルはクロが頷いたのを見て安堵の笑みを浮かべた。

名前を気に入ってもらえたのか妥協してもらったのかは全く分からない。クロには口がないし、表情も一切変えないから。

でもパートナーになる事は承諾してくれたようだ。


「じゃあ改めて貴方はクロ。今日から君が私の護衛獣だよ。よろしくね!」


勝手に決めちゃったけど、クロもパートナーが決まってなかったみたいだしいっか。

ラズリルはうんうん、と一人納得した。


そしてそこで初めてクロの胸元にあるペンダントに気付いた。

赤、青、緑、そして紫の色をした花びらのような者が水晶の中に閉じ込められている。花びらの大きさはどれもバラバラだ。


「・・それは」


どこかで見た事あるような気がする。


ラズリルが口を開きかけたちょうどその時、前の方から先生の声がした。

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