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色ある世界で
大きな木がそびえ立っていた。
緑色の神々しい葉が枝から生い茂り、それは視界すべてを覆い隠してしまうのではないかと思われるほど高く広がっている。
大樹の目の前にある石の上に、一人の男が座っていた。
「行くのか?」
男は振り返る事なく、後ろにいた人物に声をかけた。
声をかけられた人物は静かに頷いた。
「そうか。まあ最後だからな。好きにしたらいい」
満足したら帰って来いと男は手を上げてひらひらさせてみせる。
後ろにいたはずの人物はすでにいなくなっていた。
「さて、と」
男は立ち上がった。
「会いたい奴に会いに行くってか。若いねえ」
男はふふっと笑いながら目の前の大樹を見上げた。
「この世界は何色になるかな」
風も吹いていないのに草花が静かに揺れる。
力強く土から顔を出す大樹の根が、ほんの少し灰色に染まったような気がした。




