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信仰日和

作者: 玩具リオン
掲載日:2026/02/16

初めて首をつったのは13歳の夏で、家族がみんな外食で寿司やに行っていて、自分ひとりが家にいる時だった。

期末テストだかで勉強をしていて、昼に用意されていた卵焼きが冷めてて味がしなくて、部屋がものすごく暗くて、昼なのに、それで、ああ死ななきゃと、ふと心に浮かんだ。

死にたい、ではなく、死ななきゃだった。

願望形じゃなくて、義務。

それからはずっと、毎日「死ななきゃ」だった。死の義務に駆られていた。

机にカッターでぎい、と線を引いていた。一本二本、三本……、思えばあれがアムカの予兆だったのかもしれない。

英検をうけろと言われたときも、ワークブックをカッターで、書き終わったところから切り刻んだ。家族と鍋をつっつく日も、机で座ってワークブックを切ったあと、何食わぬ顔で。

アムカをやったのは中2の秋で、これもテスト前かなんかで、家の人は温泉だかでみんないない、ひとりだった。

それで、計画したわけではないけれど、首吊りに失敗したのかな? あまり覚えていない。

とにかくなにかがあって、もしくは何もなくて、あまり深い考えもないけれど、切ってみた。

本当に何も考えていなかった。考える脳みそも空っぽみたいに。

血が出て、それが真珠みたいにぷつぷつ丸く浮かんでくるので、それを見ていた。

三本引いた。長いの一本、上下に血も出ないくらいの短い、赤い線が二本、二重みたいに。

それも考えていない。ちょうど引き終わって、カッターを置いて、椅子に体育座りに、縮こまって座っていた。

痛みはなく、少ししびれる程度だった。血はすぐに空気に触れて固まって、ポロポロと公園の砂のようになった。指でなぞるとカスが取れた。

とても落ち着いた、とでも言うべきだろうか、心があるべき場所にカップインしたというか、スッとしたものがあった。

次の日学校に行って、半袖だから、英語の時間に急にその腕が気になって、少し隠していた。

14になる前には死ななければいけなかった。自分の中で、13までは子供で、14から大人、みたいな認識があったからだ。

真夜中に起きて、3度目か四度目くらいの首吊りをした。当日の前にも、何度か試みたことはあったけれど。すべて失敗に終わった。

なにもかもが許可制で、水を飲むのも、トイレに行くのも親の許可が必要だったから、その夜も親に「トイレに行く」と言って廊下を出た。

その時に、ひそかに準備していたベルトで作った自家製の首つりロープを持っていった。

これを持っていくのが、私にとって勇気がいることだった。

別に普通のベルトでも良かったのだが、当時の私はなぜかガムテープでオリジナルなロープを作っていた。今思うと、死ぬほどダサい。

ドアノブで遂行した、何回か。

いつもの通りだった。やはりだめだった。

時計の秒針がうるさくて仕方なかった。見ると、3時半を回っていて、最初から四十分ほど経過していた。

どうしようもないと悟って、あきらめて、14歳の初めての朝を迎えた。結構長い間入っていたから、トイレの大の方で流した。排泄は全くしていなかったのだけど。

首をつる、これほど単純な作業はないのだが、どうも下手くそだった。


(『誕生日』2024/11/08 5:51 原文ママ)






「死にたい」と思った。


何度も何度も何度も何度も。


理解者なんていなくって、


暗がりにひとり、アテもなく考える。


信じるたびに裏切られて、


苦しみを叫ぶこともおっかなくって、


そのキズに、だからイチイチ痛がって、


震えそうなのを、静かに耐えている。


いつ救われるかも分からずに


救われるかも知れないのに


それでも信じていたいのは、


何かにしがみついてないと、


ただそこに『在る』だけでも


あまりにもザンコクで、


いつか抗う為のチカラすら


奪われていく気がして。


感情<ヒト>の流れに


従順でしかいられないんだ、


壊れるのが、怖いから。


(Lu, Lu Lu…)


時とともに、あたりの風景が


段々、だんだん破綻してゆくのを


この目で観ていた。


ひどく不条理なゲンジツに


くじけるのは恥だと学んでいたから、


なんとか生きよう、生きよう、と


今日をしのいできたけれど、


それを繰り返せば繰り返すほど、


存えれば存えるほど、


染みついたジゴクは拡がるばかり。


もう死んでもいいかなあ、なんて


浅く笑いながら


昨日とおんなじ気休めを吐いて、


なのにやっぱり、生きるのも死ぬのも

 

満足にやれなくて。


いつまで経っても消えてくれない傷に、


何の権限も持ちやしない憎しみに、


身体中が、狂おしい痛覚に包まれてなお


『永遠』なんて言葉を知った。


(ああ!)


生きることは罪なりや?


生きたいと、心より願うのは


まちがいなりや?


ああ、間違っていると云うのならば、


産まれてきたことまでは、せめて、


ゆるされないのでしょうか?


(休符)


いつしか眼球の奥のほうから


『なにか』がマヒしていって、


ああ、自分ひとりさえいなくなれば、


周りの人達も、皆


少しはラクになるんじゃないか?


どころか、この世界の色も


マシになるのではないか?


なんて、合理的で、実践的で、魅力的で、


理由ある解放を求める。


どうやって死のうか、なんて、


遠足まえの子どもみたいに、


ただ、迷惑は掛けたくなかったけれど、


これも己が生き永らえる罪に較べれば、


誰が咎められる?


すべてが、丸く収まる、還るべき所に。


時が、もう何も失うべきものがない


己の、何を試すのかわからなかった。


もう何も、意味を成さない。


ああ、そこには、虚無の空中には、


しかしたったひとつのヒカリが


残されていた…


死なせてくれ


何度も

 

 

 

 

 


 

 

俺はけっして 君たちのことを


浅はかとは 思わねえ 

 

信じていいぜ 信じていいぜ


心からの妥当 蹴散らせ


消えそうな灯くらい貸してやれよ

 

やりきれないだろう?

 

安寧!


 

 

 幸せとか、望みとかを調べていくうちに

 

ルールも正義も道徳も教訓も

 

まるで馬鹿げた理論にしか見えなくって、

 

 

 

 

ま、ダマす方もダマされる方も

 

おろかには違いないけれど、

 

つまるところ人間は、

 

信じるモン信じないと、

 

生きていかれないってことかにゃー


(『信仰日和』2022/09/21 09:24 原文ママ)

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