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第50話 SS コーディーとアリスの結婚式

白の魔法使いシリーズ、魔法学園編、これにて完結です。

ありがとうございました。

「嘘……コニーとフレディが別れちゃった……悲しい」

 コーディーが卒業する日に「白薔薇を愛でる会」の会報最新刊が発行された。コーディーの卒業祝いと、5日後に結婚式を挙げるために、両親と共に王都に来ていた私は、友人のベッキーに頼んで発行当日に最新刊を手に入れることに成功していた。

 結婚式を終えれば、コーディーと王都のタウンハウスで一緒に過ごすことになるため、出来ればその前に読んでおきたかったのだ。コニーとフレディは、きっとハッピーエンドになるのだと信じていた。

「コニーは涙をこらえて、そっと旅立つフレディを隠れて見送り、婚約者の待つ神殿に向かうのだったって、私とコーディーが結婚すること、まるでこの作者の人、知っているみたいだわ……まさか、よね……」

 推しのカップルがハッピーエンドでない事実に、その日はずっとショックで落ち込んでいた。夜には、コーディーがやって来て、一緒に卒業祝いをする約束をしていたので、そろそろ何とかしないと拙い状態だ。

「どうしよう。かなり泣いて、目が赤くなっているかも……」

 私は急いで目元を冷やせるように、氷を持ってきて欲しいとメイドに頼んだ。


「こんばんは。アリス、どうしたの?目が赤いよ。何かあったのかな?」

 私の目元を覗き込んで、コーディーが心配そうな顔をした。冷やして化粧で誤魔化そうとしたが、コーディーには分かってしまったようだ。私はこの時のために用意した言い訳を言うことにした。

「あのね、図書館で借りてきた小説が悲恋物語で、思わず泣いてしまったの。折角のお祝いの席なのに、こんな顔でごめんなさい」

「そう、悲恋物語、ね。アリスは、泣き顔も可愛いから気にしないで。そうか、図書館で借りてきたんだ」

「ええ、そうなの……」

「そうか、嘘をつくアリスも僕は愛しているから、ちゃんと許すよ」

 どこか仄暗い笑顔でコーディーが呟いた言葉は、小さすぎて私には聞こえなかった。

「え?なに?」

 コーディーがなんでもないと微笑んで、私の座っていたソファーに並んで座った。

「あ、そうだ、エヴェリーナ嬢とアリスは仲良くなっただろ?」

「ええ、社交界で何度か会って、マーティン様とコーディーが一緒にいることが多かったから、自然に仲良くなったわ。是非、エリシーノ国にも遊びに来て欲しいって(筆談で)言われたけど、流石に遠いから……」

「それなんだけど、折角だから新婚旅行に行こうよ。今のアリスなら、体力もついてきたし、旅行にも行けると思うんだ。エリシーノ国に出張できるよう、医務局長と交渉したんだ」

 生まれつき虚弱体質だった私は、微弱な魔力しか持っておらず魔法学園に通うことが出来なかった。領地に引き籠り、成長と共に虚弱体質は改善されてきたし、コーディーが体にいい薬草を沢山処方してくれたお陰で、人並み以下ながら体力もついてきた。

「新婚旅行なの?出張なの?」

「う~ん、僕の中では新婚旅行だね。出張の目的は、エリシーノ国にしか自生していない薬草の取引交渉なんだけど、それはエヴェリーナ嬢と事前に交渉出来ているから、後は現地で書類を交わせば済むしね」

「いつの間に?」

「アリスがエヴェリーナ嬢と仲良くなって、エリシーノ国に行きたいって言った時かな?」

 それはかなり前のことだった。それも、何気ない会話の中のひとつだったはずだ。

「どうして?」

「だって、一度きりの結婚式だし、新婚旅行も最高の思い出にしたいじゃないか。ずっとアリスを幸せなお嫁さんにするんだって思ってきたんだから、出来ることはやらないとね」

 コーディーが嬉しそうに笑った。私も嬉しくなってコーディーの胸に飛び込んだ。昔はぷくぷくとしていた体は、今ではすっかり男性らしい引き締まった体になった。太っていた彼も、今の彼も私の中では等しく大好きなコーディーだ。

 学園生活ですっかり痩せたコーディーが、学園で可愛い、格好いいとモテだしたとベッキーに聞いた時は、嫉妬心なのか何なのか分からない感情が沸き上がって腹が立った。痩せなくたってコーディーは、格好いいし可愛いのに、体形で見方を変えるなんて失礼な話だと思ったのだ。


「そう言えば、私の婚約者って、初めからコーディーだった?小さい頃の記憶だから、ところどころ曖昧なのよね……」

「どうしてそんなことを聞くの?」

「何となく。ほら、結婚するから、二人の馴れ初めとか、思い出を振り返ってみようかなって……」


Side コーディー

 当初、アリスの婚約者は、僕の2番目の兄、5歳上のアルト兄様がなるはずだった。隣接する領地に住む一人娘のアリスと5歳年上のアルト兄様なら、ちょうどいいとすぐに話がまとまりそうだった。

 僕はアリスと同じ歳だから、遊び相手にいいだろうと、婚約の話をする時に一緒に同行しただけだ。

初めてアリスを見た僕は、上手く説明は出来ないけど一目でアリスを気に入ってしまった。一目ぼれと言っても過言ではない。なんだったら運命だと言ってもいい。

 幼かった僕は、すぐに行動した。まず末っ子の僕に激甘な母様を「あの子は僕がお嫁さんにしたいんだ。母様、一生のお願い、聞いて欲しいな」と言って落とした。

 そしてアルト兄様も説得した。兄様は大きくなったら魔法騎士団に入りたいと言っていた。アリスは一人娘だ。魔法騎士団に入ったとしても、直ぐに退団して領地を継がなくてはならないだろう。一生、魔法騎士団に所属したいなら、僕が婚約者になった方がいいと思うと耳元で囁いたのだ。

 単純なアルト兄様は、僕の囁きに素直に頷いた。父様に、自分よりコーディーの方がアリス嬢には似合っていると思うから、婚約者は辞退したいと言わせることに成功したのだ。

 父様だけが怪訝な顔で僕のことを見ていた。結果的に、幼い二人の婚約はすぐには認められなかったけれど、数年経って僕が本気だと父様が認めたことで、婚約は無事に成立した。勿論そんなこと、アリスは知らないんだけどね。



「アリス……」

 呼ばれて顔を上げたら、軽く唇が触れあった。成人した頃から、スキンシップにキスが加わった。婚約しているので、そこは常識の範囲内だと思う。

 流石にそれ以上は、結婚式が終わってからにして欲しいと言ったら、コーディーも納得してくれた。ただそのせいなのかは定かではないけれど、その頃に急に結婚の予定が前倒しになった。多分私の考え過ぎだろう。

「もう少しで、キス以上が許されると思うと、この焦れる感じも愛おしいな」

「え?何か言った?」

「結婚式、楽しみだなって言ったんだよ」

「そうね、もう少しでずっと一緒にいられるね」

「うん。ずっと一緒だよ」

 コーディーの言葉に、一瞬背筋がぞくっとした気がしたが、きっと気のせいだ。コーディーは小さい頃から、気に入ったものをとても大切にする。きっと、いい旦那様になると思うのだ。


 王都にある天界樹が見える神殿で、私たちは結婚式を挙げた。白いウエディングドレスは、コーディーの礼服とお揃いのデザインでとても可愛い。

「可愛いよ、アリス。ずっとこの日を夢見ていたんだ。初恋が叶って本当に嬉しい」

 幸せそうに微笑む二人に、惜しみない拍手が贈られた。

「初恋、だったの⁈私が?」

「そうだよ、初めて会った日に、絶対この子を花嫁にするんだって決めたんだ」

 近くで聞いていたキース様、マーティン様、クリスティアン様が、一瞬ギョッとしたような顔でこちらを見たような気がしたけど、きっと気のせいだろう。

「そうなのね。気づかなくてごめんなさい。でも、きっと私の初恋もコーディーだわ」

 私の言葉に、先ほどの3人がホッと息を吐いたような気がしたが、これも気のせいかもしれない。コーディーが嬉しそうに私を抱き上げた。所謂、お姫様抱っこだ。

 私は持っていたブーケを、マーティン様と一緒に参列してくれたエヴェリーナ様に手渡した。

「次はエヴェリーナ様が幸せになれますように」

 加護のせいで話せないエヴェリーナ様は、私の目を見て、嬉しそうにしっかりと頷いてくれた。いつか筆談ではなく、緑の精霊の加護が消え、普通に話せるようになれるといいなと心から願った。

 コーディーが、抱き上げている私の耳元に唇を寄せて、そっと囁いた。

「アリス、もう薄い本は卒業だよね?だって、本物の僕がずっとアリスの側にいるんだから。これで内容も一致させたし、もういいでしょ?」

「コ、コーディー⁈もしかして……」

 コーディーはそれ以上、その事について話さなかったし、私も怖くて聞けなかった。まさか会報の内容を知っているのかなんて聞いて、もし知らなかった場合、私が墓穴を掘ってしまうことになるからだ。

 特に今回の会報は、別れを切り出したフレディをコニーが何とか引き止めようと、かなり濃厚なシーンが繰り広げられた。会報を持って来たベッキーが、今回の物語は前会長が引退する時に書き残した、渾身の名作だと興奮気味に言っていた意味が分かった。別れのシーンはショックだったけれど、確かに感涙と興奮の作品に仕上がっていたと思う。まさに神作だ。

 流石にこれをコーディーに読ませるわけにはいかない。私の部屋の隠し扉の中に、厳重に保管する所存だ。


 新婚初夜から新婚旅行に行くまで、コーディーは休暇を取っていて、私はほとんど寝室に監禁状態だった。私は、甲斐甲斐しく世話をしてくれるコーディーを、拒否することが出来なかった。

 幼い頃から、執着心が強いことは知っていたし、これも惚れた弱みだと受け入れられた。幸せの形は、人それぞれ。私はとても幸せだと思えるのだから、きっとこれでいいのだ。

「明日から新婚旅行だね。楽しみだね」

「そうね。私をエリシーノ国に連れて行ってくれてありがとう。大好きよ、コーディー」

「僕の方こそ、どんな僕でも変わらず愛してくれてありがとう。大好き、愛している」

 微笑むコーディーは最高に可愛いし格好いい。それがどんな思惑の笑顔でも。これはもう認めるしかないだろう。コーディーの重過ぎる愛ですら、幸せに思える私の愛も、人には言えないほどかなり重いのだと。

「結局、私たち似た者同士なのよね。絶対に何があっても離さないって思うもの」

「え?何か言った?」

「うん……、幸せだなって言ったのよ」


最後までお付き合い、ありがとうございます。これで、魔法学園編は完結です。

次はゴルゴール国、エリシーノ国へ行くお話になりますが、現在構想を練っており、投稿まではしばらくお待ちください。

よければブックマーク、評価もお待ちしております。励みに頑張っております。

よろしくお願いいたします。

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