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第45話 閑話 コーディーの暗躍(少し前のお話)

「ねぇ、マーティン。君なら「白薔薇を愛でる会」の会長、誰なのか知っているんじゃないかな?」

 後期試験勉強のため図書館に来ていた僕は、マーティンと二人きりになったタイミングで、小声で隣に座っているマーティンに話しかけた。

 エヴェリーナ嬢を虐めていた令嬢たちが急に大人しくなった理由を、アリスが何故か知っていた。アリスはマーティンの友人の僕も当然知っているだろうと思って話していたようだが、僕は何も知らなかった。もちろんその場は、知っている様に装ったが……

 休暇ごとにアリスと過ごすようになって、順調に仲を深めている自負はある。でも、唯一アリスが僕を拒否する場所があるのだ。以前は気軽に入ることが出来たアリスの私室だけが、立ち入り禁止のままなのだ。

「……どうして俺が知っていると思うんだ?」

 少しだけ動揺したマーティンが、不思議そうに僕を見た。僕はエヴェリーナ嬢の虐めの件は、陰で会長が動いたことを知っていること。そして、会長が動いたことを知ったマーティンなら、当然会長の存在も知ろうとしたはずだと思った。

「なるほど、確かに俺の性格なら、存在を知ろうとするだろうな……。そして当然、会長が誰なのか知ることが出来た。う~ん、知っているけど、一応エヴェの件では世話になった恩人だしな、簡単に教える訳には……、って怖い顔で微笑むなよ。一応知りたい理由を聞いてもいいか?」

「実は、アリスが僕に内緒で「白薔薇を愛でる会」の会報を取り寄せて読んでいるようなんだ」

 僕の言葉に、マーティンの肩がびくりと動いた。

「その反応は、アリスが会報を読んでいることは知らなかったけど、会報の内容は察しがついているのかな?」

「……だから、その怖い笑顔はやめてくれって。そうだな、クリスとキースや、コーディーとフレデリックが恋人のような……」

「フレデリック⁈え、僕とフレデリックなの……??なんで?」

「理由は知らないけど、確か組み合わせはそうだったぞ。それで、今更会長を探してどうするつもりだ?書くのをやめさせるのか?」

「いや、アリスの楽しみを奪うのも可哀そうだから、そこは我慢するけどさ。架空の設定とはいえ、物語の結末は気になるんだよね」

「こだわるのがそこって……、まあ、あまり責め立てないのなら、教えてもいいけど……、くれぐれも、穏便に頼むよ」

「うん、善処するよ」

 僕の笑顔に、マーティンの顔が引き攣っていたけど、僕は情報を教えてもらってすぐに行動に移した。


「はじめまして。ベイリー先輩、ですよね?」

 僕が後ろから一人で歩いていた彼女に声をかけると、振り向いて僕を見た彼女が、「ぴゃいっ」と飛び上がって返事をした。

「コ、コニー、じゃなかった。えっと、ロジャーズ様ですよね。ごきげんよう。何か私に?」

「はい、単刀直入に申し上げますね。あなたが「白薔薇を愛でる会」の現会長ですよね?卒業後は退かれるのでしょうか?」

「な、なんのことをおっしゃっているのか、私には分かりませんわっ……」

 ベイリー先輩は誤魔化そうとするように、僕から視線を背けて目を泳がせた。とても分かり易い反応をする彼女が、陰で会を牛耳っている会長には見えなかったが、マーティンの情報に間違いは無いはずだ。僕は後ずさる彼女を壁際に追い込み、ドンッと手をついて進行を遮った。

「か、壁ドン⁈やだ、ちょっと、可愛いコニーが、ワイルド系なの⁈萌えるわ」

 半分以上訳の分からない事を呟く彼女に、僕はにっこりと微笑んだ。

「卒業後は、モリー伯爵とご結婚が決まっているそうですね。伯爵は、あなたのそのご趣味を理解しておられるのでしょうか?お知りになったら、さぞ驚かれることでしょうね?」

 びくりと肩を揺らす彼女に、僕はとびきりの笑顔で微笑んだ。仲間内では怖いと評されているので、アリスには見せられない笑顔だ。ベイリー先輩はびくびくと僕を見て、ごくりと喉を鳴らした。

「何が目的なのですか?」

「僕を題材に、会報を書かれているそうですね?おっと、言い訳は結構です。確か、フレデリックとの恋模様、でしたか?作者はベイリー先輩ですよね?」

 ベイリー先輩は真っ赤な顔で狼狽えているが、作品自体を読んでいない僕は、知っている情報を言っているだけだ。赤面するような内容なのかと心配になってきたが、そこは聞けないので平常心で乗り切った。

「あくまで架空の人物なのですわ。創作活動は個人の自由だと思います……」

「架空、創作活動?では、この挿絵は何ですか?」

 ベイリー先輩が持っていた会報の表紙には、僕にそっくりな挿絵が書かれていた。ベイリー先輩は、慌てて隠したが時すでに遅しだ。

「別に書くのを今更止める気はないんです。ただ、この物語の結末を窺ってもいいですか?」

「え?書いてもいいのですか?結末は勿論、手に手を取って愛の逃避行を……、ひぃっ」

 僕の微笑みを見て、ベイリー先輩が小さく悲鳴を漏らした。

「誰と誰が愛の逃避行ですか?」

「ですから、コニーとフレディの……」

「ほう?それは聞き捨てならないな。僕はね、例え架空の人物であっても、婚約者のアリスを捨てて逃避行するなんて、想像しただけで許せないんですよ。思わず、あなたの趣味をモリー伯爵に喋ってしまいそうだ……」

「ドSなの⁈腹黒キャラ。え、ツンデレじゃなくて、本気……。キャラ設定間違えたのかしら?転生したはずなのに、この世界、設定がめちゃくちゃだわ……」

 焦ったベイリー先輩が、また訳の分からない単語を呟いていたので、僕は少しだけ怒りを込めた声で囁いた。

「結末、変更していただけますよね?コニーはフレディとは別れて、婚約者と卒業後すぐに結婚する」

「え?卒業後すぐに結婚?」

「ええ、卒業後すぐ、僕たち結婚するんです。いくら創作とはいえ、そこは事実通りにして欲しい。どうでしょうか?ベイリー先輩」

「そ、そうね。悲恋モノもいいかもしれない……。いいわ。では、最終話は来年の卒業式に出すようにするわ」

 ベイリー先輩は想像が膨らんだのか、僕のことを無視してメモ帳にペンを走らせている。僕は満足してその場を立ち去った。


 1年後、僕たちの卒業の日に発行された「白薔薇を愛でる会」の会報誌には、コニーの将来のことを想い、別れを切り出したフレディが悲しみをこらえて祖国に帰り、彼の後姿をそっと隠れて見送ったコニーが婚約者と結婚式に向かうという話が掲載されたらしい。

 会員たちは尊い恋の行方に泣き崩れ、二人のハッピーエンドを夢見ていた会員からは賛否両論あったらしいが、愛する人の未来を考え、潔く身を引いたフレディの行動に称賛する声が多く集まっているそうだ。

まさかその結末を強要したのが、僕だとは誰も気づいてはいないだろう。

「アリスも落ち込んでいるのかな?大丈夫だよ。僕が何も知らないフリをして、たっぷり慰めてあげるからね」

 僕の呟きを偶然聞いた前会長のベイリー先輩が、「コーディーって、ヤンデレだったの⁈こわっ」と戦慄していたことなど、僕が知る由もなかった。


読んでいただきありがとうございます。

不定期投稿で申し訳ございません。

土日休みで、来週も不定期で投稿させていただきます。

よろしくお願いいたします。

よければブックマーク、評価もしていただけると幸いです。

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