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第42話 4年生夏季休暇2

 夏季休暇も後半になり、僕とクリスは王都に戻ってきた。その後は、夜会に出て親交を深め、令息の集まりに参加して社交界の情報収集をしていた。その中でもよく聞くのは、炎の貴公子ことアルベール先輩の魔法騎士団での活躍だった。

「さすがというか、何というか……、既に小隊長に昇進とは、俺たちが卒業する頃には、隊長になっていてもおかしくないな」

 同じ会に参加していたマーティンの言葉に、僕とクリスは尊敬と畏怖を込めて頷いた。

コーディーはまだアリス嬢のいる領地に留まって、あちらの領地で社交に勤しんでいるそうだ。

 今夜の会は、赤のフェニックス寮の卒業生と現役寮生の交流会だ。就職活動をする学生は、卒業生のコネも使いながら、自分の希望の職業に就くことも多い。就職先が決まっている学生は、職場の情報を得るために同じ職場の先輩に積極的に話しかけている。

 今回は勤務中のため、残念ながらアルベール先輩は不参加だが、噂話はいい意味でも悪い意味でも多く、いないのに存在感だけはある。

『それにしても、流石は炎の魔王、じゃなくて貴公子。将来は魔法騎士団長も夢じゃないな。今から下についていた方がいいかな』

『ははは、お前じゃ相手にされないだろ』

 遠くで誰かが、アルベール先輩のことを炎の魔王と言っている声が聞こえた。僕たちの間では、貴公子という通り名より、魔王の方が聞きなじみがある。勿論本人の前では、絶対に言えない通り名だが。

「それよりさ、今朝聞いた噂なんだけど、ガレア帝国に嫁がれた聖女様の守護印が消えて、帰国されているらしいって」

 マーティンの囁きに、僕とクリスがギョッとして周りを見渡した。幸いマーティンの声は僕たち以外聞こえてなかったようだ。

「あれ、その態度、もう知っていたのか?」

 僕とクリスは、仕方なく頷いた。僕たちも偶然知ったのだ。ちょうどアドキンズ侯爵領から王都へ向かおうと準備していた時に、王都から急使がやって来たのだ。


「なに、エレノーラ様の守護印が消えたのか……。それで、ガレア帝国から帰国される際の出迎えを俺に?」

 父さんの声が、偶然部屋の前を通りかかった僕たちにも聞こえて来て、思わずドアの隙間から覗き込んだ。

「はい、エレノーラ様本人たっての希望でして……。本来ならば、現役の白の魔法使い、もしくは王族のどなたかがお迎えにあがるのですが、白の魔法使いはまだ学生ですし、王族ですと王弟殿下がおられるのですが、その、いろいろと過去のことが、ですね……」

 急使は、言い難そうな顔で父さんの顔を見ていた。父さんも王弟殿下が迎えに行けない理由に心当たりがあるのか、苦虫を噛み潰したような顔をした。

「ああ、そうだったな。エレノーラ様の一方的な、だったか……」

「はい、現役のクリスティアン様の容貌も、エレノーラ様の…好みですね……。ですので、マーカス様が適任だろうと、陛下も聖女様の希望に許可をお出しになりまして……」

「だが、ガレア帝国まで迎えに行くとなると、相当の時間を要する。娘の健康状態が不安定なんだ、間が悪いことに……」

 父さんが困った様に頭をガシガシと掻いた。リアの魔力暴走が、最近頻繁になっているのは、僕も心配していた。迷っている父さんの様子に、僕は思わず部屋の外から声を掛けてしまった。

「あの、僕がもう少し領地に留まるから、父さん……」

「マーカス様、僕もそういうことなら一緒に滞在します。リアのことも心配ですし……」

「お前たち……、聞いていたのか」

「すみません。偶然声が聞こえてしまいました。僕とクリスがもう暫くここに留まれば、リアの暴走も押さえられると思うのですが、どうでしょうか?」

「確かにそうだが、クリスも白の魔法使いの仕事があるだろ?」

「おそらく事情を話せば、陛下も納得されるでしょう?僕が迎えに行けない理由があって、マーカス様に白羽の矢が立ったのでしょう」

「……と言っているが、どうだ?」

「はい、至急伝書蝶で連絡をとってみます。迎えには転移門の使用許可が出ていますので、最短で行き来が出来ます。2週間、クリスティアン様がアドキンズ侯爵領に滞在出来るか、問い合わせます」

 急使は急いで退室していった。そして陛下からの返信を持って帰って来た。

「お待たせいたしました。許可を頂きました。マーカス様が迎えに行っている間は、クリスティアン様が王都に戻らなくても、魔法研究所職員総出で対処させるとのことです。まずは聖女様の迎えが急務だそうです。どうか、マーカス様、この案件を穏便に処理して下さい」

 懇願するように急使でやって来たボンド伯爵が、父さんに祈るような瞳を向けた。父さんは少し嫌そうな顔をしたが、ボンド伯爵の願いを無下に出来なかったのか渋々了承した。国王陛下の頼みなので、断ることは出来ないと思うのだが、父さんなら平気で断りそうだから恐ろしい。


「と、いうようなことがあったんだ。それで、王都に戻って来るのが遅くなったんだ」

「なるほど、聖女様と王弟殿下の噂話なら、俺も聞いたことがあるな」

 王弟殿下は、今では落ち着いた美丈夫だが、少年時代はかなりの美少年だったそうだ。聖女として天界樹の守護印が現れ、王城に招かれた聖女エレノーラ様は当時20歳。「始まりの天界樹」へ祈りを捧げるため、ガレア帝国へ帝王の花嫁として輿入れが決まっていた。

「王弟殿下、当時は第二王子だったか。聖女様が歓迎会の夜、王弟殿下の寝室に押し入ったらしいな。かなりの美少年好きだったらしい。ガレア帝国に行く前に、想いを伝えたかったと言っていたそうだけど、当時王弟殿下はまだ10歳くらいだ。かなり衝撃的な事件だったけど、まさかガレア帝国に行く聖女を牢に放り込むわけにもいかなくて、翌日早々にガレア帝国に送り出されたらしい」

「そうか、それでクリスも危ないと判断されたんだ。流石に聖女様も40歳を越えている。今は趣向も変わったんだろ。だから父さん、なのか……」

「ん?何かあったのか?」

 聖女を迎えに行った父さんが、領地に帰って来たのはちょうど2週間後だった。父さんは、ぐったりと疲れたていた。どうやら聖女様は、帰国する際に父さんに自分を娶るように迫ったらしい。

 ガレア帝国に、帝王の花嫁として輿入れする聖女だが、力が失われ守護印が消えると帰国することが多い。天界樹に祈るために、輿入れするのだから、守護印が無くなればお役御免というわけだ。

 しかし、帝王の花嫁なので、子供が出来ればそのまま王妃や側妃として残る可能性もある。各国から聖女が輿入れするので、多い時には4カ国の聖女が妃としてガレア帝国に滞在することになる。

 帝王とはそりが合わなかったのか、エレノーラ様に子はおらず、迷わず帰国を選んだそうだ。帰国後の生活は国が保障しているし、思う相手が出来れば結婚も可能だ。

 父さんのことは、白の魔法使いとして他国でも肖像画が多く出回っていたので、その際に一目ぼれして、帰国したら父さんと結婚しようと思っていたらしい。(あくまで聖女様の独断である)

 本来なら、帰国を大々的に宣伝するはずだったが、父さんとのことがあって、少し落ち着くまで様子を見ることになったそうだ。現在は王宮に滞在して、父さんのことは諦めてもらうよう説得中らしい。


読んでいただきありがとうございます。

次回は二日後、投稿予定です。

学園生活も残り少し、頑張って書いておりますが停滞気味です。私事で申し訳ないのですが、人生初のぎっくり腰中で、長くパソコンに向かうことが出来ておりません。

少しだけお待たせしてますが、広い心で見守っていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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