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第34話 謎が深まる手紙とアリス嬢の友人

 マーティンとエヴェリーナ嬢は、僕たちの心配をよそに、令嬢たちの嫌がらせをものともせず、順調にいっているようだ。嫌がらせすら、二人の絆を深めるスパイスだ。

 そのため過激な令嬢が暗躍することも増え、そろそろ手立てを考えないと怪我人が出そうな危険な状況が続いていた。ところが、僕たちが真剣に対策を考え出した頃に、何故かその令嬢たちが借りてきた猫のようにおとなしくなったのだ。

「どういうことだ?あれほど嫌がらせをしていたのに、あの令嬢たちはどこへ行ったんだ?」

 クリスは、試作品の魔道具を持って拍子抜けした顔で僕たちを見た。どうせ撃退するなら、試したい魔道具が色々あると言い出したクリスに、令嬢たちに怒り狂っていたマーティンが同意した形だ。

 僕としては、何が起こるか分からない魔道具の実験を、いくら自業自得とはいえ、令嬢たちで試すのはどうかと思っていたので、クリスには言えないが内心ホッとした。

「あ、そういえば、アリスが伝書蝶で教えてくれていたことがあってね。まさか、本当にそうなるとは思わなくて、言うのが遅くなったよ。これなんだけど……」

 コーディーが、ポケットからピンク色の伝書蝶を取り出して、僕たちの前に広げて見せた。

【コーディーへ 留学生への嫌がらせは、もうすぐ無くなると友人が言っていました。マーティン様が暴走する前に、そう言ってあげてね。アリス】

「根拠も分からないし、こんなこと言って期待を持たせても悪いと思って……」

「遠くの領地にいるアリス嬢からか。確かにいきなりこれを見せられても、にわかには信じなかったかもしれないな。でも、実際に令嬢たちの嫌がらせは無くなったわけだし、何かアリス嬢が知っている可能性はあるな。一度、聞いてもらってもいいかな?」

「それは構わないけど、多分アリスはこれ以上の事情は話さないかも……。言う気があるなら、初めから全て書いて来るはずだし。それより、この友人に心当たりがあるんだ。そっちを捕まえて聞いた方が早いと思うんだよね。同じ魔法学園内にいるしね」

 コーディーが少し悪い顔で微笑んだので、僕たちは何も言わずに、この件はコーディーに任せることにした。普段は癒し系おっとり男子のコーディーだが、怒らせると一番厄介なタイプだと、僕たちは身に染みて知っていた。

 数日後、僕たちの前に一人の女生徒を連れてコーディーがやってきた。スラリと背が高く、赤みのある茶色の髪に、薄い緑色のつり目がちな瞳が印象的な彼女は、アリス嬢とコーディーの幼馴染のベッキー・ロイ子爵令嬢で、領地にいるアリス嬢と手紙のやり取りをしているらしい。

「ああ……、ギースとクロス、尊い」

 ロイ子爵令嬢が、僕とクリスを見て小さく何かを呟いたが、何を言ったのかは聞き取れなかった。

「……初めまして。アリスとコーディー様の幼馴染で、ロイ子爵次女のベッキーと申します。何か私に聞きたいことがあるとか。お話しできる範囲でなら、お答えします」

「僕たちが聞きたいことを、出来れば素直に教えて欲しい。僕も幼馴染に無体なことはしたくないんだ。だから、ベッキー嬢、分かっているよね?」

 ベッキー嬢は、コーディーの言葉にびくりと肩を揺らした。幼馴染なら、コーディーが怒らせると厄介だということも織り込み済みなのだろう。苦々しく思いながらも、素直に答える様子を見せた。

「それで、何が聞きたいのですか?」

 コーディーはベッキー嬢の前に、アリス嬢からの伝書蝶を広げて見せた。ベッキー嬢はさっと手紙を読んで、少しだけホッとした顔をした。

「つまり、この友人が私だと言いたいんですね?留学生のいじめが無くなった理由を聞きたい、そういうことですか?」

「察しが良くて嬉しいよ。流石ベッキー嬢。それで、素直に教えてもらえるかな?」

 コーディーの言葉に、ベッキー嬢は思案顔で地面を見ていた。どこまで話そうかを悩んでいるようだ。そしてパッと顔を上げて、サッと手を前に突き出した。

「私にも守らなければいけない事はあります。コーディー様のお望みの情報を、私が情報提供可能だと思える範囲でなら、お答えいたしますわ。それ以上は、ご容赦くださいませ」

 コーディーの脅しには屈しないと、覚悟を決めた表情でこちらを見た。その際、僕とクリスの姿を捉えたベッキー嬢の瞳が、僅かに揺れたような気がした。

「分かった。出来るだけ詳しく聞きたいけど、そこは譲歩するよ」

 ホッとした顔で、ベッキー嬢はエヴェリーナ嬢のいじめが無くなった理由を話し出した。

 曰く、ある権力を持った女生徒が、思い入れのある人物に対するいじめを嫌い、過激ないじめを行っていた女生徒の粛清を行ったそうだ。どうしてエヴェリーナ嬢に思い入れがあるのか聞いた僕たちに、理由は絶対に言えないと言ってベッキー嬢は口を噤んでしまった。

 詳しい理由を聞けなかった僕たちは首を捻ったが、とりあえずそのような理由で、エヴェリーナ嬢への嫌がらせは無くなったのだと理解した。

 コーディーは、最後までベッキー嬢の態度に不信感を持っていたが、脅しには屈しないと宣言した彼女は、話し終わるとすぐに脱兎の如く駆け出し、追及する隙を与えなかった。

「絶対あやしいんだよね……。でも、何かあったら、アリスが教えてくれると言っていたし、……まさか、アリスが僕に秘密を持つなんて、有り得ないよね……」

 ベッキー嬢の逃げる後姿を見ながら、コーディーは最後までブツブツと何か言っていたが、今後の対策を話し合っていた僕たちの耳には残念ながら届かなかった。



おまけ:side友人ベッキー


「はぁぁぁ、怖いって!」

 先ほど幼馴染であるコーディー様に掴まって、強引にそのままクリスティアンクロスやキースギース、マーティン様の前に連れて行かれた時は、人生が詰んだと覚悟を決めた。

 目の前に推しカップル、ギースとクロスが立っているのを見て、思わず興奮しすぎて鼻血(乙女にあるまじき)が出るかと焦ったが、どうにか深呼吸をして乗り切った。

 アリスからの伝書蝶を見せられ、同好会の存在が明らかになったかと心臓が変な音をたてたが、アリスはちゃんと空気を読んで、肝心の部分は書いていなかった。きっとあの瞬間だけで、少し寿命が縮んだはずだ。

 エヴェリーナ嬢のいじめが急に無くなったことを不審に思っていたようで、その理由を聞かれた。まさか同好会の会長が、物語の登場人物であるモデルが害されるのが許されずに手を下したとは言えず、曖昧な言葉で説明して、そのまま逃げてきた。

 同好会は今、コーディーコニーとフレデリックフレディの物語が進行中だ。コーディー様に気づかれたら、きっとこの物語、いや下手をしたら同好会の運営も危なかったかもしれない。

 癒し系おっとり男子だと思われているコーディー様だが、怒らせたら厄介な存在だということは、幼い頃から知っている。特にアリス絡みの案件は、要注意だ。

「私がアリスに、コニーの会報誌を送ったなんて知られたら、私の人生が終わってしまうわ……。アリスにも注意するように、しっかり忠告しておかないと……」

 先日、アリスから追加分と次回作を2冊送って欲しいと連絡があった。コニーとフレディを推すとも書いてあった。つまり、アリスもこの件は、コーディー様には秘密にすることにしたということだ。ちなみに私はギースとクロス推しだ。【白薔薇を愛でる会】を守るために、私はこの秘密を厳守すると心に誓った。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

ある程度書き溜めて、毎日投稿をしていましたが、少しストックが無くなってきました。

無理やり進めると、確認作業で間違いそうなので、書き溜めるために少しだけお休みを下さい。

せっかくここまで読み進めてくださったのに、本当に申し訳ございません。

お正月休み、ガッツリ書き溜め、投稿再開予定です。暫しお待ちください。

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