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プロローグ

初めましての方も、お久しぶりの方も黒柴あんこです。よろしくお願いいたします。

白の魔法使いシリーズ、第三弾ですが、主人公たちの学生時代のエピソードなので、ここから読んでいただいても大丈夫です。多分、はい、大丈夫。

毎日、午前中に一話づつ投稿予定です。

「新入生代表、キース・アドキンズ、前へ」

「はい」

 魔法学園長に名前を呼ばれたので、僕は緊張しながら返事をして、用意していた新入生代表の挨拶文を思い出しながら壇上に立った。新入生代表は、入学試験首席の者が挨拶をすることになっている。本来ならば胸を張っていいはずだ。だけど僕は、少しだけ残念な気持ちで、挨拶を終えて壇上を降りた。


「次に、新入寮生代表、クリスティアン・エイベル。前へ」

「はい」

 まだ声変りが済んでいない、綺麗なボーイソプラノの声だった。立ち上がった男子生徒を、僕は残念な気持ちのままじっと見つめた。

 身長はあるが、まだ線が細い少年のような体つきに、綺麗な銀髪が肩のところで切り揃えられている。宝石のようなアメジスト色の瞳は美しく、ひときわ目を惹く。男子生徒用の制服を着ていなければ、女生徒と見間違いそうなほど、綺麗な顔立ちをしていた。男女問わず、彼の姿を見て感嘆の溜息をもらした。

 新入寮生代表は、壇上に上がって魔法学園長から寮の鍵を受け取る。選ばれるのは、その年の新入生の中で一番魔力量が多かった生徒と決まっていた。

 秘かに両方の代表になりたいと思っていた僕は、何の感情も見せずに学園長から寮の鍵を受け取るクリスティアン・エイベルを、少しだけ悔しい気持ちで見つめた。

「もう少し、誇らしそうにしてもいいのに……」

 思わず漏れた感想は、クリスティアンの容姿に色めき立った人の声にかき消された。


 タランターレ国の魔法学園は、原則全寮制だ。原則、と言っているのは、例外があるからだ。王族や王都に住む貴族は、希望すれば自分の屋敷から通うことも可能だ。ただ、ほとんどの生徒は寮生活を希望する。寮対抗の催しや、卒業までに同年代での親交を深める目的があるからだ。


 魔法学園は王立で、13歳になる4月に入学し、5年間魔法について勉強することが出来る。魔力測定と入学試験が行われ、合格すれば入学でき、平民も貴族も一緒に学ぶことが許されている。一応、生徒は身分に関係なく学ぶことと校則には書いてあるが、残念ながら身分は無視できない。

 そもそも入る寮も、明確に身分で分かれているのだから、平等を掲げている校則には無理があると、僕個人は思っている。

 学園には、隣接する形で4つの寮がある。

 僕が入寮するのは【赤のフェニックス寮】で、上位貴族の令嬢、令息と魔力の多い貴族が入寮する。

【白のユニコーン寮】は下位の貴族、【青のドラゴン寮】は平民の中でも裕福な商人や金持ちが入り、【緑のグリフォン寮】は一般的な平民が入寮する。

 何が違うかと言えば、部屋の造りが違う。貴族の入る寮は一人部屋だし、それなりに豪華だ。裕福な平民の寮も一人部屋だが、貴族の寮に比べればそこまで華美ではない。平民の部屋は、2~3人部屋で簡素な造りだそうだ。

 そもそも支払う寮費が違うのだから、そこは仕方がないだろう。

 卒業すれば、魔法騎士、魔法研究所、王宮武官、文官など王宮に勤める者、薬学や治癒に特化した者は街で開業、その他の者も幅広い分野で活躍していくことになる。他国からの留学生も一定数いるので、この学園で親交を深め、その伝手を使い国外へ出て行く者もいるらしい。


「………であるから、諸君は勉学に励み、得難い経験をここで得ることを期待している」

 魔法学園長の少し長い祝辞が終わった。魔法学園長は、何歳なのか不明な好々爺だ。父曰く、父が学生の時から見た目は変わっていないらしい。

 父はここで母と出会い、恋をして結ばれたと、酒に酔う度に自慢してくる。

『ミリーは皆の憧れの天使で、高根の花だった。戦闘演習で大怪我をした俺を光魔法で癒やしてくれた時に、俺はミリーに惚れたんだ。ライバルを皆蹴散らして、俺の告白に頷いてくれたんだ。ああ、あの時は……』

 馴れ初めを全て暴露しそうな父に、母がやんわりと微笑んで制止する。幼い妹のリアは父の膝の上で、嬉しそうにしている父を見て目を輝かせている。それが我が家の常だ。

 惚気る父を鬱陶しく思いながらも、秘かに両親の馴れ初めに憧れていた。僕もここで運命の出会いがあるかもしれない。そう思えば、期待に胸が高鳴った。

 僕にはまだ婚約者がいない。曲がりなりにも、侯爵家の嫡男なのにいいのかと父に聞いたが、父はその度に、この自慢話をするのだ。つまり、自力で探せということだろう。

 物心がつく頃から、両親の仲睦まじい姿を見ていた僕も、出来れば政略結婚ではなく恋愛結婚がしたいと思っている。

「さあ、僕の運命の相手はいるのかな」


 この時は、運命は運命でも恋人ではなく、親友になる男だとは思ってもいなかった。


読んでいただいてありがとうございます。

気になった方、ぜひブックマークなどしていただけると、作者張り切ります。

よろしくお願いいたします。

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