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踊るだけで勇者パーティ最重要職!?テーマパークのダンサー、異世界でバフ職踊り子してます  作者: 烏丸 燈


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第七十九話 泣いて笑って、また会おう

 見送る朝は、少しだけ肌寒かった。


 森の入り口。荷物を背負い、旅支度を整えたティナとツカサがこちらを向く。


 


 「んじゃ、そろそろ行くにゃ」


 ティナはにかっと笑って、右手を挙げる。


 


 「……ほんとに行っちゃうんだね」


 美怜は名残惜しそうに唇を尖らせた。


 「まあ、さすがに結婚式には呼ぶでしょ?」


 ツカサが笑い、ティナも「招待状に肉球スタンプ押しとくにゃ」とふざける。


 みんなが笑う中、カイルもふっと息をつき、荷物を背負い直した。


 「さて、俺も行くか。妹の顔、久しぶりに見に帰らんとな」


 「……くれぐれも薬は“合法的に”運んでね……?」


 美怜が眉をひそめると、カイルは爽やかな笑みを返した。


 「大丈夫。もう盗まない。今度は正式に……借りパクしてくる」


 「それは盗るって言うの!!」


 


 笑いの輪が広がって——けれど、その空気の中に、ふっと寂しさのようなものも漂った。


 何度だって別れはあるとわかっていても、それでもやっぱり、胸の奥が少しだけきゅっとなる。


 


 「……じゃあ、みんな。また、な」


 カイルが一歩、森の外へ踏み出す。




 ツカサがボロボロと泣き出す。


 「旅、楽しかった……。ぐすっ……また会おうな……」


 ティナがやれやれとツカサの顔面を雑に白いハンカチで拭う。


 「大丈夫にゃ。また結婚式で皆と会えるにゃ」


 ティナはぶんぶんと手を振る。

 「にゃふふ〜、元気でにゃ〜〜!」


 


 それぞれの背中が、少しずつ遠ざかっていく。


 


 「……行っちゃったね」


 


 ぽつりとつぶやく美怜に、アルがそっと寄り添った。


 そして、照れくさそうに目を伏せて言う。


 


 「……寂しい?」


 


 「……ちょっとだけ、ね」


 


 「……なら、僕がずっと一緒にいるよ」


 


 「さらっと口説くのやめてくれる!?ほんとにもう!どこで覚えてきたの!そんなの!」


 


 コツンとアルの腕を小突きながら、美怜の口元には笑みが浮かんでいた。


 


 そして——


 


 その夜。


 二人きりで静かに焚き火を囲んでいた時だった。


 


 「……ミレイさん」


 


 いつになく真剣な表情で、アルが向き直る。


 


 「さっき、あらためて答えをもらえるって……信じていいかな?」


 


 火の灯りが揺れる中、美怜は一度目を伏せて、そしてゆっくりと、顔を上げた。


 


 「……うん。私もちゃんと考えたから。色んなこと、ぜんぶ含めて……」


 


 深呼吸。


 


 「……私、アルくんが好きよ」


 


 その言葉に、アルの目がぱっと見開かれる。


 


 「でも!」


 美怜はぴしっと指を立てた。


 「年の差も問題だし、社会的なアレもあるし、まずはお友達からです!!」


 


 「……あっ、はい……!?お友達から……!?」


 


 「うん。まずは友達。で、アルくんが成長して、ちゃんと大人になって……そのとき考えよう」


 


 「……わかった。じゃあ、まずは全力で友達になるよ……!」


 


 二人の間に流れた静かな空気は、心地よく、どこかあたたかかった。


 


 そして夜空を見上げると、流れ星がひとつ。


 


 「願いごと、しないの?」


 美怜が尋ねると、アルは少し考えて——


 「……もう叶ったから、十分だよ」


 にこっと笑ったその顔は、あのとき魔王だった彼ではなく、ただの一人の少年だった。




 


 仲間たちは、それぞれの道を進んでいく。


 でも、どんなに離れていても——


 


 「またいつか、冒険しよう!」


 


 美怜のその言葉に、誰もが笑って、頷いた。


 


 だからきっと、これからも。


 


 魔王だった少年と、その仲間たちの物語は——




 終わらない。


 


 またいつか、どこかで。




 「ただいま」って言える日まで——。

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