第七十七話 再会
淡い光が空へと溶け、魔王の気配が完全に消えたとき——
そこに残されたのは、一人の少年の姿だった。
白銀の髪。深紅の瞳。まだあどけなさを残した顔立ちの中に、確かに彼はいた。
——アルが、帰ってきた。
「……みんな……」
弱々しくつぶやいたその声に、反応したのは美怜だった。
「……アル……?」
彼女が声を震わせながらその名を呼ぶと、アルは少しだけ首をかしげ、そして、微笑んだ。
「ただいま、ミレイさん」
その瞬間だった。
「アルううううううううううう!!」
「うおっ——!?」
ティナが勢いよく飛びつき、そのまま彼に抱きつく。
「もうダメかと思ったにゃ〜〜〜〜〜〜!! 何度も、何度も、泣いたにゃ〜〜〜〜〜!!!」
「ティナさん、ちょっと苦しい!肋骨、肋骨が!」
ティナに続いて、カイルも堪えきれず駆け寄る。
「おかえり、アル……!」
その目は潤み、声は震えていたが、必死に涙をこらえているのがわかった。
「くそ、泣くもんか……でも、やっぱ嬉しい……!」
「アル……っ!」
そして、美怜もアルの胸に飛び込んだ。涙をこらえず、泣き笑いのまま彼を抱きしめる。
「ずっと、戻ってくるって信じてた……信じてたけど……本当に、帰ってきてくれて……!」
「うわ、ちょ、ミレイさんも……あの、ちょっと恥ずかしいな……!」
顔を真っ赤にしながらも、アルはその腕をそっと美怜の背に回し、小さく笑った。
「……ただいま」
その様子を、少し離れた場所でライアス、ガイア、リュミナ、ツカサの四人が静かに見守っていた。
「よかったな……アル」
ライアスが笑みを浮かべてつぶやく。
「ふん。めでたし、めでたしってとこかしらね」
リュミナも微笑みながら頷く。
「泣かせやがって、まったく……」
ガイアがそっぽを向きながらも、どこか目元が潤んでいた。
「すごいな……。これが仲間か……」
ツカサが、目を細めてつぶやいた。
そして——
その温かな光景を、少し離れた草の上から眺めていたセリオは、ゆっくりと立ち上がった。
誰にも気づかれないように、小さく笑う。
「……よかったな、アル」
その瞳に、ほんの少しだけ寂しげな色を浮かべながら。
「……俺はもう、あの人と一緒にいれない。けど……ちゃんと、生きるよ」
風が吹く。
彼の姿は、淡く揺れる陽炎のように、ゆっくりとその場から消えていく。
誰にも気づかれないまま——
けれど、誰よりも強く、優しく、その背中は未来へと歩き出していた。
そして空は、今日もまた、澄み渡っていた。
まるで、世界がもう一度祝福しているように。
新たな再会と、これから始まる物語を——。




