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踊るだけで勇者パーティ最重要職!?テーマパークのダンサー、異世界でバフ職踊り子してます  作者: 烏丸 燈


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第七十一話 魔王とアルの真実

 転移陣の光が収まり、四人は中央都市アークルゼンの大図書院前に立っていた。巨大な時計塔がそびえる都市の中心に位置するその建物は、かつて世界の知を司った賢者たちが築いた知識の殿堂だ。


 「……急ごう。あの“記録の断章”、下手に見られたら危ない」


 ツカサの言葉にうなずきながら、美怜たちは図書院へと駆け込んだ。


 受付で緊急の防音室使用申請を提出すると、緊急の文字に司書は一瞬目を丸くしたが、すぐに静かに頷いた。


 「第三地下区画、観察記録室を使ってください。防音と遮断結界が張られています」


 カイルは軽く会釈し、四人で階段を駆け降りる。重厚な扉を開け、防音室に入り、念のため結界をもう一重重ねる。


 「——ここなら大丈夫」


 美怜が息を整えながら、“記録の断章”をそっと取り出し、アルの杖の光にかざす。


 黒い符の中から、淡い映像が浮かび上がった。


 


 それは、世界の歪みの底から始まった。


 神々に生贄として捧げられた、数多の少女たちの姿。命を軽んじられ、尊厳も未来も奪われた者たちの、終わりなき叫び。


 


 《私たちは、生まれた瞬間から否定された。誰にも必要とされず、名前すら持たずに消えていった。……だから、祈った。いいえ、“呪った”》


 


 その魂たちは一つに溶け合い、憎しみと絶望の奔流となった。そしてある日、少女達の憎悪から“魔王”という存在が自然発生的に生まれ落ちた。


 


 《私は、人間の大人を壊すことでしか、存在できなかった。人間の子供と魔族は……見逃した。彼らはまだ私を裏切っていなかったから》


 


 魔王は圧倒的な力で人間社会を蹂躙した。彼女の存在は人間にとって終焉の象徴であり、一方で魔族にとっては“救済”として崇められた。


 


 だが——


 映像が切り替わる。


 玉座の間で、幼い少年が魔王のローブの端を握り、笑っていた。名はセリオ。かつて魔王の気まぐれで拾われた人間の孤児だ。


 


 《私が“変わった”のは、この子を育てたからだ。……言葉を教え、食べ方を教え、眠る前に本を読んだ。意味も分からず、ただ親の“真似”をしただけだったのに——》


 


 セリオが微笑む映像が映る。


 その横で、表情のない魔王がわずかに眉を動かす。


 


 《……この小さな人間が、私に“心”というものを押し付けてきた。あれは、感染のようだった。知らぬ間に、私はこの子の笑顔に救われていた》


 


 映像が変わる。


 魔王の玉座に四天王が跪いている場面。だが、その中でもセリオは、幼い面影を残す少年のままだった。


 


 《この子を壊したくないと思ってしまった。それが、最初の“拒絶”だった。私の存在原理に逆らう、“異物”》


 


 やがて魔王の中に「アル」と名乗る人格が芽生え、次第に意識を侵食していった。


 


 《私は理解した。この心は、セリオから生まれたもの。私がこの世界を壊すことをやめるための、“逃げ道”だったのかもしれない。……でも、それでも、私の中に確かに在った》




 魔王は魔王城から去った。他の四天王が神妙な面持ちで佇む中、大きくなり青年になったセリオだけが、魔王に泣き縋り引き留めようとしている。


 


 映像が切り替わる。緑に囲まれた村、レーヴェン村の記憶。


 アルとして穏やかな日々を過ごす姿。農作業、祭り、そして村人たちとの笑い合い。


 


 《私は、眠るようになった。アルの時間が増えていき、やがて彼が私の代わりに旅立った。自分の“意味”を探すために。……勇者になる、と》


 


 そこまで語って、映像は途切れる。


 最後に残ったのは、魔王の澄んだ声だった。





 《だが、私の破壊衝動は収まるところを知らなかった。アルの合間に出てくる私はかつての私のように破壊を繰り返した》


 《私は、もともと誰かに愛される存在ではなかった。それでも、アルに心を与えられたのなら——》


 《その終わりを、誰かに見届けてほしい。破壊ではなく、選択として》


 


 映像が消える。


 防音室に静寂が落ちた。


 


 「……魔王が、あんな風に……」


 ティナがそっと呟く。


 


 「セリオのこと、本当に……家族みたいに想ってたんだな」

 カイルが拳を握った。


 


 美怜は、そっとアルの杖を胸に抱きしめた。


 「アルは……“生まれ”としては魔王だった。でも、それだけじゃない。“セリオを想った心”が、アルを生んだんだと思う」


 


 「俺はアルさんのことも魔王の事も分からないが、こんな事を魔王に言われたら、アルさんを信じるしかないよな」

 ツカサがはっきりと言った。




 全員が静かにうなずいた。


 封印を解くこと、それは魔王を蘇らせることと紙一重だった。


 けれど——アルが“選ぶ”未来を信じることこそ、今の彼らにとっての答えだった。

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