表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
踊るだけで勇者パーティ最重要職!?テーマパークのダンサー、異世界でバフ職踊り子してます  作者: 烏丸 燈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/80

第六十話 明暗の剣士

 青年の足元の椅子を、美怜が蹴り飛ばした。


 「っ……!」


 ロープは一瞬首にかかったが、カイルが即座にナイフを飛ばしロープを切り裂く。


 ドサリと、青年は床に倒れた。


 「大丈夫!?あなた……何を……!」


 「……放っといてくれ」


 かすれた声だった。

 彼の黒髪は乱れ、頬はやつれ、肌は青白く冷たい汗に濡れていた。

 黒い瞳には、焦点の合わない虚ろさが宿っている。


 「俺はもう、終わってるんだ……。生きてる意味も、理由も、何もない……」


 「でも……!あなた、ツカサさんでしょ?剣士として凄く強いって——」


 「“強い”……?」


 ツカサは床に膝をつき、ゆっくり顔を上げる。  その表情は、微笑んでいるようで、泣いているようで、何も映さない仮面のようだった。


 「“強い”のは……一部だけだ。調子がいいときだけ。俺は、いつもそうだ。強いときは誰にも負けない。剣も冴える、反応も冴える。頭の中が透明になって、世界が静かに見える……」


 「でも……突然、全部崩れるんだ……。俺は動けなくなる。手が震えて剣が持てない。誰かの声が全部雑音に聞こえて、何もできない。みんなの足を引っ張る。なのに、何も言えない。自分が壊れてるって、言えないんだ……」


 誰かに語ることもできず、笑ってごまかしてきた過去があるのだろう。


 「前の仲間に言われた。“役に立たないなら出ていけ”って……そりゃ、そうだよな。俺なんか、いない方がいいんだ」


 言葉の一つ一つが、冷たい床に落ちるように響く。


 ティナが、小さな声で呟いた。


 「……ほんとに、それ、あんたの本音かにゃ」


 「……?」


 「“いない方がいい”とか“終わってる”とか、それ、あんたの本音じゃないにゃ。ただ、あんたの中の“病んでるあんた”が、そう言ってるだけだにゃ」


 ティナは、ロープを拾い、ため息まじりに呟いた。


 「首を吊る勇気があるなら、一度くらい、“本当の自分”と戦ってみるにゃ」


 ツカサは目を伏せたまま、答えなかった。


 ——だが、手は震えていた。

 心のどこかで、まだ、自分を完全に見捨ててはいない証拠。


 「私たち、仲間を探してるの。強い人。でも、“完全な人”なんて求めてない」


 美怜は静かに膝をつき、彼の目を覗き込んだ。


 「完璧じゃなくていい。立ち止まってもいい。暗いときは私たちが光を灯す。だから、あなたも、立ち上がって。ツカサさん」


 その名を呼ばれた瞬間、ツカサの瞳に、わずかに色が戻った。


 彼の胸の奥で、何かが崩れ、何かが残った。


 ——ほんのわずかでも、“生きよう”とする気持ちが。


 静寂の中、外の鐘の音が一つ、ゆっくりと鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ