第五十九話 仲間を求めて
リミエルとの戦いの後——
美怜たちは、《白霧の林》を離れ、一旦中部地方へと戻る決断をした。
雪解けの森を抜け、旅の道すがら、美怜は拳を握る。
(通じなかった。舞も、術も、防御も——今の私たちでは限界がある)
敵が格上であることは明白だった。
セリオとの戦いでは何とか勝利したが、リミエルはその遥か上をいっていた。
「強くならなければな……だが、レベルを上げてる暇はない」
カイルの言葉に、美怜も静かに頷いた。
「時間がかかれば、その間に“アル”が、どうなってしまうか分からない。だから……」
「“仲間”を探すにゃ」
ティナが、凛とした声で言った。
数日後、中央都市。
人と魔族、両方の文化が交差する巨大都市。王城に続く商業の中心地であり、冒険者たちの拠点でもある。
冒険者ギルド《蒼牙の鐘》は、朝から喧噪と熱気に満ちていた。
「勇者一行、仲間を募集します——っと。こんな感じでいい?」
ティナが壁に張った募集ポスターを確認する。
そこには手書きの文字で、
【急募】
新たなパーティーメンバーを募集中。
高難度任務多数。対魔族戦闘経験者優遇。
条件:実力重視。素行不問。年齢・種族問わず。
「うーん、ちょっと物騒すぎない?」
「甘い募集じゃ来ないにゃ。強い奴ってのは大抵、面倒で拗らせてるからにゃ」
「それも一理あるか……」
その後、三人はギルド内で情報を集め始めた。
「なぁ、最近パーティー抜けた実力者とかいないか?」
カイルがカウンターの老冒険者に尋ねる。
「おうよ、ちょうど最近“クビになった”奴がいたな。剣士だ。相当腕は立つが……ちと問題があってな」
「問題?」
「元々Sランクパーティーにいたが、性格に問題があって抜けさせられたって話だ。だがな、腕だけは本物だ。剣一本で強力な獣魔を両断したって噂もある」
「どこにいるんだ?」
「《青狼亭》って宿屋の二階だ。……ただし、今行くなら気を付けな」
「?」
老冒険者は、どこか言葉を濁した。
「……ちょっと、様子が変らしい」
その宿屋、《青狼亭》。
石造りの廊下を進み、二階の一室、二〇二号室の前で足が止まる。
ギィ、と扉が軋む。
部屋の中は暗く、カーテンは閉ざされていた。
そして——
「っ……!」
部屋の奥。
天井の梁にロープが掛けられていた。
そこに、ひとりの青年が立っていた。
椅子の上に乗り、無言で、自分の首にロープをかけようとしていた——
「待って!!」
美怜が駆け寄る。
床に音が鳴った瞬間、青年の目が動いた。
まだ、間に合う——
「だれ……」
その剣士は、静かに、美怜たちを見た。
だがその目には、燃え尽きた灰のような光しかなかった。




