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踊るだけで勇者パーティ最重要職!?テーマパークのダンサー、異世界でバフ職踊り子してます  作者: 烏丸 燈


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第五十五話 毒の四天王

 東の森林地帯、その奥深くに遺跡のようなアジトがあった。


 岩肌に囲まれた広間。天井から吊るされた無数の魔力灯が、薄紫の霧を揺らめかせていた。


 石造りの玉座に座る男がひとり、こちらを見下ろしている。


 蛇のような黒いローブに身を包み、毛量の多い黒髪をいじりながら、陰鬱そうな冷たい視線を向けてくるその男——

 四天王《蠱惑の牙》セリオ・ヴェリエ。


 「ずいぶんと堂々と来たものだね。勇者一行ごっこのおつもりかな?」


 その声には、毒のようにねっとりとした嘲りが混じっていた。


 カイルがナイフを握る手に力を込めたが、美怜が前へ出て、腕で制した。


 「戦うために来たんじゃない。話をしに来たの」


 「……話、だって?」


 セリオが興味なさげに片眉を上げた。


 「“魔王”……そして“アル”について。あなたは何か知ってるはず。かつて、魔王の傍にいたあなたなら」


 その名を口にした瞬間、空気が変わった。


 セリオの真っ黒な目の奥が、ゆらりと揺れる。


 その瞳の奥には、怒りでも、恐怖でもない——哀しみのようなものが滲んでいた。


 「……アル、だと?」


 くぐもった声が漏れる。


 「……ふざけるなよ」


 次の瞬間、彼の体から闇の魔力が炸裂した!


 「あいつさえいなければァァァ!!」


 玉座の後ろに浮かんでいた魔法陣が赤黒く光り、空間を濃紫の瘴気が包みこむ。




 「こ、これ……!」


 霧が一気に濃くなり、美怜たちの姿が互いにぼやける。


 「っ……ティナ!? どこだ!? 返事しろ!」


 「カイル……? そこにいるのかにゃ……?」


 だが、声は奇妙に歪み、相手の姿が異形の魔物に見え始めていた。


 ——ティナの目には、獣のように変化したカイルがナイフを構えてこちらに迫る姿が映っていた。


 ——カイルの目には、目の血走ったティナがこちらに向かって拳を構えているように見えた。


 「っ、敵……か!?」


 「にゃ!? 来るにゃ!? ちょっと待っ……!」


 ナイフが振るわれ、ティナの足元をかすめる。ティナも反射的に爪を構える。


 危うく、仲間同士の殺し合いになるところだった——


 


 その時、美怜が小さく呟いた。


 リュミナから貰った腰の鈴が小さく奏でる。


 「……“幻を祓い、真を照らす”——」


 静かに、確かに、舞が始まる。


 軽く踏む足取り。衣が揺れ、腰の動きが瘴気を裂き、銀鈴のように囁く歌が空間に流れた。


 ザハルに施された痛みはまだあったが、以前ほど激しい痛みではなくなっていた。


 「……“風よ、心の霧を払い給え”」


 それは、かつてリュミナに教えられた踊り。

 幻惑を祓い、真実を結ぶ“解呪の舞”。


 


 霧が揺れた。


 次第に歪んでいた姿が、元の姿へと戻っていく。


 「……カイル?」


 「ティナ……すまねぇ、見間違ってた……」


 「幻術だにゃ……!セリオの!」


 


 霧が晴れ、美怜の体から淡い光が広がる。


 セリオが苛立ちの表情で舌打ちした。


 「チッ……おもしろくないな。仲間割れで終わる予定だったのに……!」


 指を鳴らすと、今度は空中に毒の魔法陣がいくつも展開される。


 「じゃあ、次の演目は“苦しみ”でどうだい?」


 紫の毒霧が広がり、焼けるような匂いが辺りを包む——!




 「来るぞ、美怜、ティナ、伏せろ!」


 カイルが左腕の護符に手を当て、詠唱する。


 「——《聖なる光よ、我らを守護せよ!》」


 カイルの周囲に展開された魔法陣から、純白の光が炸裂した。


 毒霧が、まるで雪に溶ける墨のように消えていく。


 「な、なんだと……!? 人間風情が、光魔法だと!?」


 セリオが顔を引きつらせる。


 「へへっ、こっちにも“お守り”はあるんだよ」


 カイルが構え直し、ニヤリと笑った。




 「“アルさえいなければ”……そんな歪んだ考え、私たちは受け入れない!」


 美怜が叫ぶと同時に、高く飛び上がったティナの拳がセリオの顔面に炸裂した。


 「……うにゃ!!この陰険四天王!」


 ゴッ!!


 鈍い音とともにセリオがふっ飛ぶ。


 ローブが土埃にまみれ、彼は壁際に倒れ込んだ。


 「ぐ……くそ……この俺が……!」


 悔しげに歯を噛みしめ、セリオは立ち上がる。


 


 「覚えてろよ……次は、こうはいかねぇからなァ!!」


 


 足元に展開された魔法陣が光を放ち、彼の姿を包み込む。


 「……“アル”なんて……いなかったほうが、よかったのに……」


 呟きとともに、セリオはその場から消えた。




 残された三人は、肩で息をつきながら静まり返った空間に立っていた。


 「……幻術も、毒も……嫌なヤツだったにゃ」


 「でも、あいつの表情……“何か”を知ってる目だった」


 美怜はアルの杖をそっと見つめた。


 「きっと、セリオだけじゃない。他の四天王たちも……“何か”を知ってる」


 「……それを聞き出すためにも、負けてられないな」


 カイルが小さく呟く。


 


 こうして、彼らの旅はまた一歩、“魔王の真実”へと近づいていく——。

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