第四十八話 総力戦
衝撃とともに、地面が隆起する。
裂け目から吹き上がる魔瘴は、空をも黒く染め上げていった。
「……チッ、マジで来やがったかよ……!」
カイルがナイフを握る。
ライアスが剣を抜き、即座に前に出る。
その背を追うように、ガイアも構えをとった。
「アルなのか、違うのか……そんなの、戦って確かめるしかねぇだろ!」
カイルが自問自答をする。
「でも、アルの中に“いた”存在……なんだよね?」
ティナの声が震える。
震える拳を握り魔王の姿を見据える。
リュミナが静かに言った。
「人格の統合ではなく、“目覚め”。この魔力の質……完全にアル君とは別の……でも、混ざっている……」
「ふふ、混ざってなんかいないよ。私は私」
魔王——否、“もうひとりのアル”は、白銀の髪を指先で弄びながら微笑んだ。
「みんな、私のことを忘れてたよね?でもね、私はずっと、ここにいたの。アルの奥底で。私たち、ずっと一緒だったの」
「……返して」
美怜が震える声で言った。
「アルを返して……!あなたが目覚めたせいで、アルが消えたんだ!」
「違うよ、お姉ちゃん」
魔王は首を傾げ、まるで優しく諭すように言った。
「アルは消えてない。……でも、今は眠ってるの。少しだけ、私の番」
風が、ぐらりと揺れる。
魔王の周囲に生まれた黒い魔法陣が、空間ごと軋ませた。
「さあ、遊ぼう?でも——」
紅い瞳が、美怜たちひとりひとりをなぞる。
「ちゃんと、“本気”で来てね。じゃないと、つまらないもの」
次の瞬間、黒い雷が空を裂いた。
「来るぞ!」
カイルが叫ぶや否や、魔王の腕が宙を払う。
その一撃で、大地が爆ぜる。
「ミレイ、後衛!アルには近づくな!リュミナ、魔法支援頼む!」
ライアスの号令が飛ぶ。
「了解……でも、私、これだけは言わせて」
ミレイはすらりと舞の構えを取る。
「——あなたの中の、ほんとの“アル”を、私は信じてる!」
「ふふ……そう。なら、ちゃんと見せてあげる」
魔王は踊るように一歩踏み出し、手を翳した。
その掌から放たれた黒炎が、美怜たちに迫る——!
かくして、仲間だったはずの“アル”との戦いが始まった。
だがそれは、破壊だけを望む敵との戦いではない。
眠るアルを——大切な仲間を、取り戻すための“闘い”だった。




