第二十九話 支える者、支えられる者
夜が明ける頃、美怜は一度も眠らぬまま、じっと窓の外を見つめていた。
東の空に、ほんのりと朱が差してゆく。
鳥の声が遠くから聞こえ、街がゆっくりと息を吹き返しはじめる。
静かな夜が終わり、また世界が動き出す。
美怜はそっと三つの武器に布をかけた。
まるで、安らかに眠る誰かを起こさないようにするように。
――生きている。
確信ではない。けれど、確かにあの瞬間、彼らは“応えた”。
杖の微かな光、剣の痛み、剛剣の熱。
あれは、きっと偶然なんかじゃない。
「おはよう、ミレイさん」
ドアの向こうから、アルの声が聞こえた。
美怜は軽く返事をして、扉を開ける。
そこには、既に支度を整えたアル、ティナ、カイルが立っていた。
「今日、どうするか決めようって話になってにゃ」
「昨日の夜、結局あまり話せなかったからな。無理してないか?」
「うん、大丈夫……ありがとう、みんな」
私は微笑んで答える。
心配そうな視線を向けてくる三人に、私は言った。
「……お願いがあるの」
「この三つの武器。ライアス、ガイア、リュミナの……彼らの声が、確かに聞こえた気がするの」
三人の顔に、驚きと戸惑いが走った。
「えっと、それって、つまり……?」
アルが問いかける。
私はこくりと頷いた。
「生きてる。三人とも……きっと、どこかにいる」
沈黙が流れた。
けれど、それを破ったのは、ティナの明るい声だった。
「そっかにゃ!だったら、探すにゃ!その声、確かめるにゃ!」
「簡単に信じるのな……でも、あんたの言葉なら、信じたくなる。根拠がなくても」
「うん。ミレイさんがそう言うなら、僕は信じる」
美怜は思わず笑ってしまった。
この人たちは、ほんとうに、強くて優しい。
「ありがとう……!」
窓の外には、すっかり朝の光が満ちていた。
街が目覚め、今日もまた、一日が始まる。
私たちの旅も、ここから再び動き出す。
ライアスたちの痕跡を辿る旅ではなく——彼らを取り戻すための旅として。
「行こう、みんな」
美怜の声に、三人が頷く。
背に揺れる三つの武器。
その中に、確かに鼓動があると信じて——。




