第二十八話 美怜に残された物
夜が更けても、眠れなかった。
窓から差し込む月明かりが、床に淡い銀の影を落としている。
美怜は静かに起き上がると、部屋の隅に置いた三つの武器を見つめた。
ライアスの剣。
ガイアの剛剣。
リュミナの祈祷杖。
どれも、美怜にとっては“遺品”のようなものだと思っていた。
けれど——なぜか、触れることができない。
怖いのとは違う。悲しみとも、少し違う。
ただ、目を逸らせないような、呼ばれているような感覚があった。
美怜は恐る恐る、杖に手を伸ばした。
リュミナの祈祷杖。何度も見たその杖の装飾は、今もあのときのままだ。
けれど、砕けた宝玉の欠片が、微かに、ほんの微かに——光っていた。
「……え?」
慌てて目を凝らすと、光は消えていた。
けれど、確かに、今、杖は“応えた”。
美怜は剣と剛剣にも近づく。
ライアスの剣の柄に触れると、一瞬、指先にビリ、と小さな痛みが走った。
ガイアの剛剣に触れると少し熱を持ってる、気がする。
その瞬間——胸の奥が、ざわついた。
まさか——。
美怜は、武器たちをじっと見つめた。
もし、リュミナが——彼女たち三人が、生きているとしたら。
あの呪いの森の奥で、なぜ彼女が私だけを転移させたのか。
「……生きてるの?」
呟いたその声に、応えるように、今度は三つの武器が同時にわずかに震えた。
風もないはずの室内で——。
その夜、美怜は涙をこぼした。
悲しみの涙ではなかった。
希望が、ほんのわずかに胸を突き破って顔を出した——その確かな実感に、震えていた。
美怜は、もう一度立ち上がる。
この武器に、宿った声を聞くために。
この中にいる、私の大切な人たちに——もう一度会うために。
そして、信じてくれた仲間たちと共に、この真実を解き明かすために。
朝が、もうすぐ来る。




