表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/73

第十八話 記録の都へ

 翌朝。

 空気はひんやりとしていて、昨日の戦いが夢だったように感じた。

 けれど、腰につけた鈴が、歩くたびに微かに鳴る。あの夜の記憶は、現実だ。


 「おい、ミレイ」


 市場通りでパンを齧っていたカイルが、紙くずを広げて見せた。

 地図だった。中央都市アークルゼンへと続く道が、赤く線引きされている。


 「ここだろ。情報集めるんなら」


 「……うん。行こう、アークルゼンへ」


 あのセリスの言葉が、胸に残っていた。

 「リュミナは祈りを捨てた」。

 なぜ?いつ?彼女は、どこに行ったの?


 私は、もう一度あの人の背中を追いかけたくなっていた。


 


 街を発つ準備をしていると、ティナが手を腰に当てて言った。


 「ふーん。結局あたしたち全員、ついていくことになったにゃ」


 「いや、別に無理にとは……」


 「バッカにゃ。仲間にゃ。ひとりで抱え込むなにゃ」


 「そーそー。どうせ中央都市なら、治療研究所もあるだろ?俺の目的地でもある」


 カイルが珍しく真面目な顔をした。


 「……それに」


 アルが、小さな声で口を開いた。


 「リュミナさんって……ミレイさんの、昔のパーティーメンバーなんだよね……?だったら、魔王の手がかりもあるかもしれない……」


 その言葉に、私は目を見開く。


 「そう、だよね。リュミナも、ライアスもガイアも……魔王と出会った」


 もし、彼らの軌跡を辿れば——今、私たちがどこへ向かうべきかが見えてくるかもしれない。


 「よーし!じゃあアークルゼンで“ライアス・パーティー”の記録、探しにゃ!」


 「お前、ライアスのこと知らないだろ」

 カイルかツッコむ。


 「ミレイの元カレかにゃ?」

 ティナがくすくすと笑う。


 「え、ミレイさん元カレとかいたんですか……!?」

 アルが動揺する。


 「違う!!!!!」


 美怜が食べてたパンを吹き出した。


 その瞬間、みんなが笑った。


 なんだろう、この空気。

 昔、パーティーの仲間と旅をしていたときの、懐かしい感じに、少し似ている。


 


 「……じゃあ、行こうか。記録の都へ」


 誰かの過去を追うことは、

 きっと、自分自身の現在を見つめ直す旅でもある。


 


 私は、踊る。


 祈りを込めて。


 もう一度、あの人達の背中を目指すために——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ