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第十五話 盗賊退治

 盗掘団のアジトへとつながる古代遺跡の通路は、入り組んでいて不気味なほど静かだった。


 崩れた石の門をくぐり抜け、私たちは慎重に足を進める。


 「空気、妙に重いな……魔力が滞留してやがる」


 カイルが魔導灯で周囲を照らすと、壁に刻まれた古代文字がぼんやり浮かび上がる。


 「通路の奥に……人の気配がある。焚き火の匂いもするにゃ」


 ティナが鼻をぴくぴくさせながら囁いた。


 (さすが猫獣人……嗅覚が仕事人すぎる……)


 そのまま左右に分かれ、私たちは中央広間を包囲するように展開する。


 「……いた」


 焚き火の周囲に十数人の盗賊。飲み食いしながら騒いでいて、縛られた少女が隅で怯えていた。


 ——そして次の瞬間。


 「喝ッ!!」


 ティナが飛び出した。


 「待ってって言ってない!?もう!!」


 「爆脚旋風!!」


 彼女の回し蹴りでガタイの良い盗賊が数人、吹っ飛ぶ。


 「て、てめえらァ!!」「侵入者か!?」「囲め!!」


 アルが魔力を込める。


 「ええっと……出力調整……《閃光障壁》!」


 眩い光が盗賊たちの視界を奪い、カイルが一瞬の隙をついてナイフを投げた。


 私はその隙に少女の縄をほどき、背を押す。


 「走って!通路の出口に村の人がいるから!」


 少女が走り去るのを見届けて、私は振り返る。


 そこには、大剣を構えた盗賊の親玉がいた。


 「てめえ……」




 私はステップを踏み、相手の防御力を下げた。


 「踊ってんじゃねぇ!」


 「踊るんだよ、これが私の戦い方だから!」


 タイミングを合わせ、ティナの飛び蹴りが炸裂!


 「とどめにゃーーーーッ!!」


 ドガアァン!!!


 親玉が壁にめり込んで、そのまま意識を失った。


 


 ——そして。


 戦いが終わり、私たちが息を整えている間、カイルは黙々と仕事をしていた。


 「ええ……それ、なにやってんの……?」


 私は見てしまった。気絶して倒れている盗賊たちの服や装備、金品を、カイルが器用に剥ぎ取っている姿を。


 「回収だ。戦利品は漏れなくいただく」


 「って、パンツ一丁になるまで!?ちょっと待って、引くよ!?普通にドン引きだよ!?」


 「パンツは残してやってるだけ温情だ。剥ぎ取れば売り値もわずかに上がる」


 「パンツの売り値とか考慮しないで!?ていうか盗賊のパンツなんてどこに需要があんの!?どこでも売れないでしょ!?」


 「……まあ、変な趣味の店なら売れるかもな」


 「やめてぇぇぇぇぇ!!!!!」


 


 そのやり取りを尻目に、ティナがご機嫌に親玉の鉄の籠手を装備していた。


 「おおっ!このゴツい感じ、悪くないにゃ!」


 「いや盗賊の装備、普通につけるんだ!?」


 アルはといえば、ひとり岩陰で、


 「……盗賊さん、ごめんなさい……でもカイルさんの言いつけで……」


 と、謝罪しながら盗賊の財布を抜いていた。


 


 こうして、“踊り”と“拳”と“追い剥ぎ”で戦いを終えた私たちは、村へと帰還する。


 ——朝焼けの中、村人たちの拍手と感謝に迎えられて。


 


 「ふっふっふ……今回の戦利品、上々だな」


 「いやもう、あんたが一番盗賊だったよカイルさん!!」

 美怜はツッコまずにはいられなかった。


 それでも、誰一人として欠けることなく帰れたことが、何よりだった。


 


 ——これは、まだ旅の途中。


 踊るように、しなやかに。


 誰かを守るために戦う、私たちの物語の、続き。

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