第十三話 続いていく旅
夜になり、宿の部屋に戻った私たちは、布団にばたばたと倒れ込んだ。
「ふにゃあ〜〜……燃え尽きたにゃ……」
ティナが天井を見ながら尻尾をぴくぴくさせている。優勝賞金の入った袋を胸に抱いて眠りそうな勢いだった。
アルはというと、タオルで汗を拭きながら、まだ緊張の余韻が抜けきらない顔をしていた。
「……ごめんなさい。いろいろ……派手にやらかしちゃって……」
「いいよ。出禁くらいで済んでよかったよ。下手したら牢屋コースだったからね!」
美怜は布団の上でぐったりしながら笑った。
カイルはというと、さっきからひとりで小さな帳簿を開いて、金貨を一枚ずつ数えていた。
「宿代、食費、装備代……それを引いても今日の賞金でプラスだな。悪くねぇ。ティナ、明日は寝てろ。無理に次の仕事入れると怪我する」
「え〜〜働けるにゃ〜〜」
「おまえが怪我して働けなくなったら計算狂うんだよ!」
「さっきまで興奮してたのに急にリアルなこと言うのやめてにゃ!」
私は布団に横になりながら、あの闘技場のざわめきや、観客の視線を思い出していた。
——誰かの目の前で踊ること。息を合わせ、空気を読んで、場を導くこと。
それはもう、“ただの踊り”じゃなかった。
私は、戦っていたんだ。
そう思うと、不思議と胸が熱くなった。
「……ねぇ」
私はぽつりと声を出した。
「次、どこに向かうの?」
「北のオアシス地帯を越えて、砂漠の道を抜ける。その先に、“静寂の渓谷”って村がある。奇妙な遺跡があって、最近、盗掘団が出没してるって話だ」
ため息混じりにカイルが言う。
「うわ、いかにも面倒そう……」
「依頼金は高いからな」
カイルはそれだけ言うと帳簿に次の依頼料を記載した。
でも、そのとき。
宿の窓の外、暗い砂の夜に紛れるように、何かがこちらをじっと見ている気配がした。
——誰かの視線。
いや、気のせいかもしれない。でも、背筋をなぞるようなその感覚は、確かに私の中に残った。
旅は、続いていく。
拳と、魔法と、踊りで——誰かの心と、自分自身の未来を切り開くために。
このパーティーとなら、きっと進める。
どんな嵐が待っていても、私たちは、前を向いていける。