表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第4章 死者を愛する者の罠

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/96

第83話 魔王陛下のお部屋訪問

 明日のパトラクトラの捜索に向け、その日の業務を早めに終えたヴェイルは、自室の浴室で広々とした浴槽に浸かっていた。


 湯の表面が、もたれて座る彼の呼吸に合わせて微かに揺れる。


 唯一身に付けている長めのピアスから、滴る雫が傾げた白く長い首筋に落ち、筋を残して胸元へと伝う。


 梟が気に入ってつついていた仕草を思い出し、湯から引き上げた細い指でピアスを摘むと、ほのかに笑った。


 湯気を纏う長い睫毛が、伏せ気味の瞳を僅かに陰らせる。


 やがて少し動いて中程に行くと、湯の中で一度深く息を吐き、身体を首元まで沈めて呟いた。


「伝書梟が居場所が分からないとなると……タイカーシアでもましてやナザガランでもない。母上は鬼族ラーキシャスの地の何処かから戻れなくなっているということか……」  

 

 勿論その問いに応えてくれる者はいない。

 常に湧き出す掛け流しの湯が、穏やかな湯音を立てているだけであった……


 暫くして浴槽から上がると、顔を覆うように両手を添え、肩にかからない程度の長さの髪をかき上げて雫を落とした。


 形の美しい指が揃った裸足の爪先が、ゆっくりと歩いて床に小さな湯の跡を付ける。


 脱衣室に入り、畳んで置いてあったバスローブを羽織る。

 髪を乾かすと、背から滑らせるようにそれを脱ぎ、白く艶めく肌に気に入りの衣を纏った。


 その後、彼は自室の一角にある書斎へと入って行った。


 母からもらった資料を開いてみる。

 鬼族ラーキシャスの地に入るならば彼らの言葉、ラキシャ語が必要になるかも知れないと思ったからだ。


「失礼します。陛下、まだお勉強をなさるのですか……」

 ヴェイルの執事の1人、グラバラドが声を掛けた。


「ああ……少し気になる事があって」

「明日は遠出になられるのでしょう?お身体をお厭いくださいませ。浴室のお掃除、済ませておきますね」

「ありがとう」


 執事は先程彼が使用した浴室を丁寧に掃除し、必要な物がないか確かめてから出て行った。



 それから半刻ほど後の事だった。

 ヴェイルの部屋の扉をノックする者がいたのだ。


「今頃誰だろう……」

 静かに勉強していた彼が不審がる。


「はい」

 それでも返事をし、扉を開けてみると、そこにはリュークとアウドラ、アリアがいた。


「こんばんはヴェイル。私達、遊びに来ちゃいました!」

 アウドラが元気よく言う。


「え?遊びに?」

 突然の事に彼が驚く。

 アリアが少し赤くなって下を向いている。


「姉上がさ、パトラクトラ様の件でヴェイルが辛くて寂しそうだから、皆んなで励ましついでに遊びに行こうって……オレは止めたんだがな」

 リュークが目を逸らせて言う。


「そうよ!天下の魔王陛下のお部屋で、なんなら夜通し遊ぶわよ」

「待って、なんで俺の部屋で?」

 ヴェイルが慌てる。


「なんでって……どさくさに紛れてお部屋探索したいからに決まってるじゃない。どんな素敵なお部屋なんだろうって。

 アリアですらあんまり詳しく知らないって言うし。アリアもよく見たいよね、ヴェイルのお部屋」


「え。あの、私はヴェイルに会えたらそれだけで……いえ、ええ、そうですね」

 アリアが照れながら途切れ途切れに言う。


「リューク……」

 彼が困った様にリュークを見た。


「正直、オレもちょっと面白そうかなって……」

 リュークが肩を窄めて言った。


「別に特に面白い物なんて何もないけど……まあいいか。さ、どうぞ」

 ヴェイルが扉を大きく開けて3人を招き入れた。


「ありがとう。お邪魔しまーす。わ、凄い調度品。広っ」

 アウドラが入ってすぐに歓声を上げる。


「お。オレの部屋にはない陶磁器陳列棚……年代物のティーセットがある。あ、祖父上様がご愛用だったブレイドだ。ここに飾ってあったのか……」

 リュークも入って来て言う。


 ヴェイルが執事数人を呼んで軽食とスイーツ、ティーセットを用意するように頼んだ。


「夜だから皆んなハーブティーでいいかな?」

「いいわよ」

 アウドラがご機嫌で言う。


 執事達に指示を出して引かせると、彼はアリアを見て言った。


「アリア、確かめる様な事言ってごめんね。今日は……アリア本人かな?」

「うん」

 彼女がニッコリした。


「私はアリアよ。大丈夫」


「アリア!来て来て!すっごい素敵なソファーがあるよ。流石魔王陛下のお部屋ね」

 アウドラが声を掛けた。

「……実はオレの部屋も仕様は同じなんだ」

 リュークが座りながら言う。


「えっ?そうなの?あんた達どれだけ優遇されてるの……」

「そりゃあオレだって一応、ヴェイルに子供が出来ない間は王位継承権第一位だからな……」


「子供……」

 何気ない彼の言葉に、ヴェイルとアリアが頬を染めた。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アリアのこと、パトラクトラ様のことなど、 不安もい多いですが、、、、 ゔぇっヴェイル様...!!!!!!?!???!!! 多大なファンサービスを受けて無事に鼻血が... ありがとうございますありが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ