表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第3章 滅びし王家の血と竜騎士の帰国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/95

第74話 アリアの帰還

 ミレーヌがヴェイルの言葉に従い、時間界ザスタビーチェを解いた後、リュークはすぐに事情を聞かされ、彼女が無事だった事に安堵した。


「リューク様、申し訳ありませんでした。あの……」

 ミレーヌがモジモジとして話す。


「あ、俺達は一旦出て行くから。他の人達の確認もあるし。行こう母上」

「ああ」

 ヴェイルとパトラクトラが応接室から出て行った。



 2人だけになった室内に静かな空気が流れる。


「……時間界ザスタビーチェか。既に習得していたとはな。術をかけ慣れていた様子だったが……」

 リュークが慎重に言う。


 ミレーヌがギクリとして肩を震わせた。


「もしかして、今までも暗殺を……?」


「……はい。直接手を下した事もありますが、普段は主に幇助をしています。トラフェリアを狙う小国は多数あるので侵入者が多いのです。ですが、この事はアリアは知りません」


 彼女が観念した様に言う。


 彼は黙ってミレーヌを見つめていたが、やがてふっと笑って言った。


「まあ、初めて会った時のオレの剣の弾き具合と大斧の軌道が、人を殺めたことがある人間の所作だったからな……迷いが感じられなかった。

 ハーフハイエルフの将辺りに鍛えて貰ったんだな」


「やはりお見通しでしたのね、あなたは……わたくしも血塗られた王女なのです」

「いや、姫様はそれぐらいでなくちゃな。オレは逆に、大切な人達を護る為に自らの手を汚せる人なんだなって思ったよ」


「リューク様も同じですよね」

「ああ。そうだな、オレ達は同じだな」


 2人は顔を見合わせて寂しげに笑った。


「だけど、ミレーヌが無事で本当に良かった。でもそこまで国に尽くして来たのに、オレの命の方を選ぶなんて……ちょっと信じられないな」

 リュークが戸惑った様に言う。


「そ、そうですよね。わたくしの想いは、あなたにとって重苦しいですよね」

「そんな事はないよ」

 

 彼が思い切って言った。

「オレも好きなんだ。ミレーヌの事が」


「え?」

 彼女が驚いて、顔を上げてリュークを見た。


 彼の頬が赤くなっている。けれども視線は真っ直ぐにミレーヌに向いていた。


「リューク様は、でも……ヴェイル様の事がお好きなのではありませんか?」

 ミレーヌは以前から気になっていた事を聞いてしまった。


 リュークは、ふう、と息を吐いた。


「似たような事を他の人にも言われたよ。オレのアイツへの接し方が誤解を招くのかもな……だけどオレの中ではアイツは、最後まで生き残ってくれた大事な家族なんだ。

 ヴェイルは昔から物凄く無茶をする。大切な人を、簡単に命を投げ出してまで救ってしまう程、自分の事は大切にしない。だから放っておけないんだ」


 彼は言葉を選んで、一言ずつ話す。

 ミレーヌも黙って聞いている。


「ヴェイルに他の誰か、アリアだと思うんだけれど、心から信頼出来る人がずっと側に居てくれるようになったなら、アイツはきっと救われると思う。その時が来たら、オレはアイツから離れてもいいんじゃないかって考えている」


 リュークはそう言うと、改めて彼女を見た。


「それがいつになるかは分からないけれど、もしも待って貰えるのなら……

 それでもいいのなら、オレはあなたと正式に恋人になりたい」


「リューク様……」

 ミレーヌの瞳が潤む。



 その時、侵入者警報がナザガラン王宮に鳴り響いた。


 ビィィンビィィンと大きな音がする。


「!!なんだ?」

 リュークが胸元の貴石を見た。


[侵入者!侵入者です!王宮東庭園上空に2体の飛竜到来。いえ、着陸申請が出ています。受理します!]

 

 軍部の管制官から連絡が入った。


 リュークとミレーヌも急いで応接室を出て東庭園に向かう。

 そこには既にヴェイルとアウドラ、パトラクトラとグラディス他数名の側近、警備兵が来ていた。


 皆が上空を見上げている。


 そこへ見る間に2体の巨大な飛竜が降り立ち、翼の爆風で庭園の草花が横殴りの雨に遭ったかの様に傾いた。


 竜からリオクとラザル、そしてアリアが飛び降りた。


「ヴェイル!!」

 彼女が一目散に駆け出してヴェイルに抱き付く。


 彼もしっかりとアリアを抱き締めた。

「アリア!ああ、無事だったんだね。良かった」

 彼女に自分の頬を擦り寄せる。もう離すまいとばかりに身体に腕を回し、柔らかな金髪と頬を撫でる。


 飛竜はそのまま上昇して、ナザガラン王宮の双塔へ続くそれぞれの廊下の屋根の上にふわりと着地し、こちらに顔を向けた。


 リオクとラザルがその場に跪き、首を垂れて謝罪をした。

「「この度は大変申し訳ありませんでした!!」」


「ヴェイル、怖かった……」

 アリアの瞳に涙が滲んだ。

「うんうん。よく頑張ったね。俺が側に居てやれなくてごめん」


 ヴェイルが彼女に優しく言う。

「さ、ミレーヌもリュークもあそこにいるよ。2人とも無事だから。行っておいで」

「うん!ありがとう!」

 

 アリアがヴェイルから離れ、並んで立っているリュークとミレーヌの元へと向かった。


「ミレーヌ!リューク様あっ!!」

 半泣きで2人に飛び付く。


「キャッ?!」

「え?あっ、ちょっと……」

 アリアに抱き付かれたので3人一緒に密着する。


 彼女に引っ張られ、顔をくっ付けられてしまったリュークは、身長に合わせて屈みながら頬を少し染め、困ったようにヴェイルに視線を向けた。


「うっ……うう……」

 そのまま泣きだすアリアを見て、ミレーヌはため息を吐き、また泣きそうになりながらも彼女の背中をそっと摩った。


「もう大丈夫よ」


 3人の様子を見ていたヴェイルの安堵の笑顔を見て、リュークもくっ付かれたままのアリアに声を掛けた。

「頑張ったな、アリア」


 彼女は泣きながら何度か頷く。


 ヴェイルはくるりと王子達に向き直ると、厳しい表情で言った。


「立て。ドナウザーン公国第2王子、リオク」


 リオクが恐る恐る立った。


「!!」

 次の瞬間、バキリと大きな音がして彼が吹っ飛んだ。

 ヴェイルが殴ったのだ。


「リオク!」

 兄、ラザルが叫ぶ。


 リオクは5ガルドル程先まで飛ばされていた。

「う……」

 酷く顔を殴られ、噛んでしまった唇から血を流して呻く。


「……よくも我のアリアを攫ったな。更に我が兄とも慕う参謀の命をも狙った。

 ミレーヌ王女は思い余って自害しようとしたのだ。

 赦し難い罪であろう。お前の首をもって償え」


 ヴェイルはそう言うと、右手をサーベルの柄に掛け、スラリと抜いた。


 ミレーヌが改めてアリアを抱き寄せ、身体ごと覆ってやる。


 彼はそのまま歩み寄り、リオクの前で構えた。



「待って!!」

 アウドラが思わず声を掛けた。


「ごめんなさい、急に出て行った私も悪いの!」

 そしてリオクに駆け寄って庇った。


「……っ!」

 窮地の第2王子は目を瞑り、震えた手で彼女の袖を弱々しく掴む。


「殺すのはやめてあげて……」


「退け、姉上」

「……ヴェイル」


 その時、グオゥという低い咆哮で空気を震わせながら、リオクの石白竜ピエドラブランカが風を巻き上げ、ヴェイルに襲い掛かって来た。

 主人の危機を感じたのだろう。


「パキラ!ダメだ!」

 リオクが叫んだ。


 刹那、魔王ヴェイルはその場で膝を曲げ鮮やかな動作で跳び上がる。

 そのまま石白竜ピエドラブランカの頭に左手を当て、顔色のひとつも変えずに詠唱した。


「……蒸発ロドン


 途端に体長8ガルドルの巨大な飛竜の鱗と体躯が、空中から襲い掛かったままの姿でカラカラに萎れた。  

 

 ストンと着地した彼は、振り返ることもなく静かに佇む。 


 萎れた竜はシュオンと微かな音を立て、粉雪のように砂と化した。 

 風に煽られながら、リオクとアウドラの周りを別れを告げるかの如くしばし舞い、やがて大気に溶け込むように散って行く。


「ああ……あああ!パキラァァッ!!」


 リオクの悲痛な叫び声が、その場に響いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あまりにも尊くて最高ですっ....!!! ミレーヌ、本当によかった、、、!!よかった、、!! アリアも強くて可愛くて、本当に眩しいですっ この4人が大好きです。どうか幸せになって……! そして最後の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ