第73話 『破壊神』勇者
ミレーヌより先にドナウザーン公国に連れて行かれていたアリアは今、暴れていた。
トラフェリア武器庫が石化しているので、自分でエルフの剣を出して高そうな調度品他を斬り刻んで行く。
「斬撃増強!!」
アリアの容赦のない斬撃がドナウザーン公国の竜王城の柱や壁に大きな傷を付ける。
「うわあああああっ!ちょ、ちょっとやめて!姫!!」
リオクや第一王子のラザルが慌てている。
竜王のガルザム=ランガイアが自分のお気に入りの椅子だけは死守しようと両手両足で掴んでいた……
「剛牙剣撃!!」
アリアの剣に横列4本の魔剣が加わって、加速度を増して同じ斬撃を作った。
とうとう大理石の柱の数々が、まるで玩具の様に崩れて行った。
更に詠唱する。
「光来葬!!」
空中に無数の光エネルギーの短剣が浮かび、一斉に壁に向かった。
ドガガガガガッ!!
壁が割れたクッキーのように崩落して行く。
そして間髪入れずに極め付け、ヴェイルにインストールしてもらったあの大技を床に手を付き詠唱する。
「覇級霧爆!!」
途端に広範囲の床が霧と化してフワサァ!と辺りを濡らし、崩壊した柱や壁、支えをなくした天井がそのまま落ちて行った。
その場所は三階だったので、崩れて落ちた物の重量で二階の床も抜け、一階に全て雪崩れ落ちた。
「うわあああああ!」
「私の椅子が!お気に入りだったのに!」
足場がなくなった王族や臣下が叫んで、浮遊力で空中に避難する。
アリアはドレス姿でありながら崩れ落ちる瓦礫を飛び石の様に使い、身軽に渡り飛び、地面に着地した。
怖そうにこちらを見る竜族達に向かって剣を向け叫ぶ。
「私を解放しろ!ナザガランの魔王、ヴェイル=ヴォルクリア陛下の元へ連れて行きなさい!」
真っ赤な目をしたアリアの鬼の形相に、皆が黙ってうんうんと頷いた。
——人には攻撃を向けなかった為、竜族側に死者は出なかった。
その代わり、城の住人は全員、今夜の泊まる場所を失った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アリアはリオクにドナウザーン公国に連れて来られた時、彼に忠告をされていた。
「今から父上の所に行くからな。お前は連れて来られたなんて言わないで、黙ってオレに着いて来い」
そう言って彼女の縄を解いたのだ。
そのまま2人で玉座の間まで行く。
そこには竜王ガルザムと、リオクの兄で王太子のラザルがいた。
「父上、兄上。ただいま戻りました」
リオクが元気良く言う。
「……リオクか。今まで何処をほっつき歩いていたんだ」
ガルザムが呆れた様に言った。
「父上、オレは配偶者を探しに行っていたのです。強い女の子を見つけて来ました」
そう言って彼は得意げにアリアを前に出した。
アリアが仕方なく礼儀正しく言う。
「ご機嫌麗しゅう、竜王陛下、王太子殿下。私はトラフェリアの第二王女、アリア=エルナディアです」
「トラフェリアの……アリア姫?」
ガルザムが目を見開いた。
「どう言う事だ、リオク。このお方はドラゴンキラーの勇者だぞ?」
「知ってますよ?」
「……ナザガランの魔王陛下のご婚約者である事も知っておるのか?」
「「え?」」
リオクとアリアが同時に言った。
——私ってヴェイルの婚約者なの?……う、嬉しいけど、いつ決まったの?
それとも噂かな……いや、これを利用しない手はないわ!!
アリアの頭の中で考えがサッと巡った。
「そうなのです!配偶者などど言うのは嘘なのです!助けてくださいませ竜王陛下!」
彼女は竜王の前に勢いよく飛び出た。
「あ!コ、コラ!」
リオクが慌てる。
「トラフェリア王宮と我が臣下、母がこの者に石に変えられてしまいました!
私に配偶者になれ、更に姉に魔王陛下の従兄弟殿下、リューク=ノワール様を殺したら石化を解いてやると脅されて連れて来られたのです!!」
「あちゃー」
リオクが目に手を当てて言った。
「なんだと?リオク!!お前はなんて言う事をしてくれた!!」
竜王ガルザムが怒って立ち上がった。
「このままではトラフェリアともナザガランとも戦争になってしまうではないか!」
「お前!なんて事したんだ!何故従兄弟殿下を?」
王太子のラザルも焦って言う。
「え?ちょっと父上、そんな大袈裟な。兄上はアウドラに帰って来て欲しいだろ?アウドラが好きな奴がそいつだからさ、出来たら殺して貰おうかと」
「な……」
ラザルが言葉に詰まる。
ガルザムがアリアに言った。
「申し訳ない、このバカ息子が……そしてそなたは謀れている。石白竜の石化魔法は何もしなくても1日程で自然解除されるのだ」
「なんですって……!!」
アリアの怒りが頂点に立った。
それからの有様が、先程の破壊行動であった……




