表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第5章 蘇る記憶 交錯する想い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/121

第114話 暴れる2人

 正気を失い、殺気を纏ったヴェイルが1歩ずつ歩いて来る……


「リューク!」

 リュークの怪我を見て母、ミシュレラが駆け付け回復魔法を掛けてやる。


 しかし、傷が癒えるか癒えないかの状態で彼はそっと親を遠ざけた。


「母上、伯父上様、皆の避難をお願いします。リヒトに操られています。

 ……アイツはもう正気じゃない……」

 2人に向かって言う。


「リヒトが?一体どうやって……」

 グラディスが問う。


「早く!オレも、もう……」

 リュークが問いには答えられずにそう言うと、顔の右半分をガッと叩くように持った。


「……逃げてください……っ!」

 瞳がまた、じわじわと藍玉色に染まって行く。


「……氷霜剛剣グラディオスレイ

 ヴェイルが呟くように詠唱した。


 見る間に空中に鋭い氷の刃が多数出現し、リュークを目掛けて襲い掛かって来る。


「チッ!!」

 グラディスがミシュレラも含む3人を覆うように、防御ランドアント魔法を掛けた。

 

 氷の刃が全て弾かれる。

「やめろ!ヴェイル!!」

 彼が叫んだ。


 その横でリュークが呟いた。

魔装ヴァルシェ天翼武装ニヴィアスブランニア


 身体に鎧が装着されて行き、苦しげに歪む顔を冑が覆う。

 そして装着完了と共に、彼の腕に現れた長刀が激しい焔を上げて唸った。


 ギイィィン!!


 ヴェイルの氷の長刀とぶつかる。

「ヴェイル!リューク!」


 グラディスが叫んだ。

 2人の合わさった氷と焔の剣が、ジュウウと音を立てて強烈な水蒸気を引き起こした。


 もうもうと上がる蒸気の中、力負けをしたのかリュークの剣がバキバキと凍って行く。


「お願いです!逃げてください!」

 リュークが正気の間の最後の思いで叫び、剣を弾いた。


「あ、ああ……分かった。皆の者、急いで避難しろ!とにかく魔王城から離れるんだ!別邸に移ろう。

 ミシュレラ!アウドラ!皆に避難指示を」

 魔王代理として大声で指示を出す。


「「はい!」」

 3人は臣下を促し、一斉に避難を始めさせた。



 ——魔王ヴェイルを殺せ!


 リュークの頭に続けて指示が入った。

「う……」


 足元がふらつく。

 その間にもヴェイルは容赦なく剣を振り被って来る。


 ガイィン!!


 ギリギリで剣を弾く。

 ヴェイルが体制を整えるために一旦離れた。



 ——魔王ヴェイル=ヴォルクリアを確実に仕留めろ。


 リヒトの声がした……


 その声は、凪いた泉に水滴が落ちるかのように彼の意識に入り込んでしまう。

 冑の中の瞳が光り、全身からゆらゆらと闘気の赤い焔が上がりだした。


 スッと立ち直り、顔の前に燃え盛る焔の剣の柄を持った手を上げ呟く。


「……承知」

 瞳は完全に藍玉色に変わってしまっていた。


「……魔王ヴェイルの命を我がマスターに……」

 誓うように一言言う。長刀に絡む焔の勢いが一段と増した。


 熱に負けて、周囲の壁や柱が溶け始める……


「……紅炎球バルラアーグ

 リュークの詠唱と共に、高温の紅い焔の球が、空中にいくつも浮かんだ。


「……氷突塊イースピラミデ

 ヴェイルも詠唱する。

 彼の周りに、細長く鋭い三角錐になった氷の塊が無数に浮かぶ。


 2人は同時に手を振る。

 紅い焔弾がヴェイルを、氷塊がリュークを、それぞれ目掛けて高速で飛んで行く。


 それをお互いに目にも止まらぬ速さで剣で弾き飛ばす。

 しかし弾き飛ばされた焔弾と氷塊は、威力を落とす事なく周囲の壁や柱を撃ち抜いてしまう。


 相反するエレメントの大量の投射体により、霜煙しもけぶりと衝撃波が発生した。

 破壊の波が舐めるように床を這う。


 順に崩壊する場所から粉塵が巻き起こり、視界が白くなって行く。

 ドォンドォンと鈍い音が何度も聞こえた。

 柱が次々と倒れて行っているようだ。


「属性融合爆発?!覇級防御ランドアント・エンデ!!」


 的確な指示で既に避難に向かう人々の殿しんがりを務めるグラディスが、叫んで巨大な防御壁を張った。


「グラディス陛下!!」

 轟音に皆が振り返る。


 彼の張った防御壁以外の床や地面が、波打った様に崩壊していた。


 魔王城の1階が崩れている。

 粉塵と砂埃がやや収まると、吹き抜けが跡形もなくなり、部分的に床を無くした2階以上も半壊している様子が見えた。


「ああ……建築士達と折角築き上げた自動修復機能付きの城が……

 お前達!せめて広域訓練場でやってくれ!!いや、殺し合いはやめろー!!」


 堪らず叫ぶグラディスの声は、瓦礫の中で剣を打ち合う彼らには到底聞こえては来なかった。


 2人は翼を得た事により、更に身軽に攻撃を避けるようになっている。

 時には向けられた投射体を、翼で打ち伏せるという荒技もやっている。


 あまりの戦いの激しさに、遠目で見るしかないグラディスの側に避難中のフィスファーナが来た。


「グラディス陛下。これは一体……」


「リヒトだ。彼が2人に命令を送って殺し合いをさせているようだ。

 昨日のパトラクトラの捜索時に城でやり合った際、ヴェイルとリュークの翼が既に真っ白になっている事に気が付いたのだろう。もう殺しても構わないと踏んだようだ。

 

 ……明日にはミレーヌ姫が来てくれると今朝連絡があったのに……どうしたものか」


「そんな……」

 フィスファーナが絶望的な声を出し、彼らを見つめる。


 ヴェイルとリュークは戦いの手を止めない。


「……パトラクトラがいない今、あの2人を止めに入れる者などいない。

 俺が行くか……?しかしもしも巻き込まれて死んでしまったらこの場で指揮を取れる者が居なくなる。

 本当にどちらかが死ぬまで戦い合わせるのだろうか……鬼め。


 ……いかん、大型魔法を撃たれたら城下も火の海になってしまう!それだけは食い止めなければ」


 グラディスはハッとして、至急で防御力の強い兵を呼ぶように臣下に伝えた。

「魔王城より被害が及ばぬよう、張れる者で絶域結界を張れ!!」


「はい!!」


 彼らは被害が最小限に済むように手配する。


 今のヴェイルとリュークにはそんな苦労を気に掛ける感情などない。


 ただ相手を殺す為に果てしなく戦いを続ける彼らの近くに、いつの間にか小さな藍玉アクアマリンの結晶が1つずつ、動きに合わせるように浮いていた。


 2人に翼が生えた時に医師に指摘されていた、魔石の核の表面に付いていたほんの小さな石だ。


 それは、リヒトが密かに仕込んでいた『双方向通信結晶コメニカシオン・キリスタ』だった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ううう.....つらすぎて....怖すぎて... 水曜日が待てません..,,待ちますっ.....
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ