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麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第5章 蘇る記憶 交錯する想い

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第107話 大聖女ハウエリア

 ルムンの翼が生えて5日目。

 今日は予定を合わせてくれたトラフェリア国の女王、ハウエリアとミレーヌ姫が来城してくれる日であった。


 女王からの指定で何故か来賓室ではなく呪術室を面会の場とする事になった。


「伯父上様。陛下と私だけでも翼で場所を取りますのに、追加で簡易寝台を置くとは……ハウエリア様のご指示なのですか?」


 グラディスに言われて元々あるベッドに加えて、横にもう1台簡易寝台を置きながら、リュークが不思議そうに聞いた。


「そうだ。なんでも従者も入らせないからとの事で、たってのご希望で呪術室なのだ」

「左様ですか……」


 彼は不思議そうに言いながらも寝台を設置する。間に椅子も置いた。



 グラディスに加えてヴェイルとリューク、フィスファーナが待つ中、定刻通りにハウエリアとミレーヌが到着した。


「久しいな。ハウエリア陛下」

「グラディス陛下。お久しゅうございます」


 グラディスとハウエリアが互いに挨拶をする。

 その横で同じく頭を下げるヴェイルとリュークを見て、ミレーヌが声も出ない程驚いていた。


「……ヴェイル様……リューク様。なんと言う神々しさでしょう」

 暫くして夢の中の様に言った。


「一応、『死界ルムンの翼』なのですが……」

 リュークが目が合わせられない状態で呟いた。



 狭い中でも各自座って事情を詳しく話す。


「あなたが、フィスファーナ様なのですね?」

 ハウエリアが見た目も雰囲気も変わってしまった自分の娘に問う。


「はい。フィスファーナ=アガンと申します。この度はアリア様の御身にこの様な形で憑依してしまいまして……大変、大変申し訳ありません」

 フィスファーナが言う。


 ——これが……あのアリア?

 認識阻害魔法が掛かっているらしいけれど……髪は銀青色だし瞳の色は藍玉アクアマリン色。

 物腰も随分と大人っぽいわね。


 ミレーヌがフィスファーナを繁々と眺めて思う。


 ——あの可愛らしかったアリアが。

 ヴェイル様は本当に大丈夫なのかしら……


 ——いえ、翼が生えている時点でもう既に一段階危機が進んでおられるわ。

 リューク様も……でも、と、とてもお気の毒なのに本当に美しいわね……

 あれ、飛べるのかしら?……

 はあ……素敵だわ。


 心配をしているつもりなのに、つい憧憬の眼差しで2人を見てしまう。



「あまり言うとフィスファーナ殿が気の毒なのだが、私としてもお預かりした姫君がこの様な事態になった事を深くお詫びする」

 グラディスが親として謝罪した。


「いえ、どなたのせいでもありませんのよ?それよりもパトラクトラ様が行方知れずとの事、大変心を痛めております。どうぞ早くに見つかって頂きたく思っております」

 ハウエリアが応える。


「痛み入ります」

 彼と共にヴェイルも頭を下げる。


「そして……その翼の核を欺く為に『時間界ザスタビーチェ』を使えないか、との事ですが……」

 彼女がリュークを見て話す。


「私では精密な調整が難しいのです。私自身や、ある一定範囲全体に掛けるのは得意なのですが。

 仰るような指定した人物や物を外して術を掛ける、という点ではミレーヌが得意です。

 正確な核の位置を確かめた上でそれ以外のお身体自体に術を掛ける、という鍛錬を暫く致しましたならば可能かと思われます。

 そうよね?ミレーヌ」


「は、はい……恐らく」

 ハウエリアから急に話を振られたミレーヌが俯き加減で答えた。


「ご協力感謝いたします」

 リュークがミレーヌを見て言った。


「……尽力いたします……」

 彼女が答える。


 ——ああ……リューク様ダメです見つめないでください。

 好きと言われてからもうわたくし、夢心地で……うう。好き……


 考えただけで顔が赤くなってしまう。

 少し暗めの呪術室で良かったなとミレーヌは思った。


「ヴェイル様の翼に関してはどの様になさるおつもりですか?」


「それはまだ分からないのだ」

 グラディスが返事をした。

「ヴェイルには『時間界ザスタビーチェ』が使えないからな。一応は体温を極度に下げる事で仮死状態にするのはどうかと言う話が出ている」


「……そうですか……お身体が耐えられる事をお祈りいたします」


「ありがとうございます」

 ヴェイルが少し気落ちした様に答えた。



「ところで、お話は変わりますが、今日こちらのお部屋をお願いした事の本題に入らせていただいて宜しいでしょうか」

 ハウエリアが持って来た荷物を探り、香のセットを出して来た。


「そちらは?」

 グラディスが聞く。


「ちょっと、私の娘に会いに行こうかと思いまして。術式が通り易い香をしたためさせていただきますね」


「はい?」

 その場にいたナザガラン組全員が不思議そうに言った。


 彼女が香をセットした。

 穏やかで品の良い香が呪術室に広がる。

 

 香を確認すると、爽やかに微笑んで解説しだした。


「ナザガランでは信仰というものがあまり浸透していない様ですが、私共トラフェリアでは先祖信仰が強いのです。

 私が輿入れする前にハイエルフの祖、リーガレルタに仕える大聖女をしていた事をご存知でしょう?

 その頃からの力で『心癒こころゆの術』が使えるのですよ。

 

 今からフィスファーナ様の中に沈んでいるアリアに会いに行きます。

 ヴェイル様もご一緒されますか?」


「その様な事が可能なのですか?是非同行させてください!」

 

 ヴェイルが驚いて言いつつ立ち上がった。

 大きな翼が楚々と柔らかな音を立てる。


「私からもお願いします。是非アリア様に会わせてあげてください」

 フィスファーナも嬉しそうに言う。


「分かりました。まずはご用意いただいているベッドの片方にフィスファーナ様に横になっていただいて、もう1台にヴェイル様に横になっていただきます。

 ……翼、畳めますか?大丈夫ですか?」


 ハウエリアが気を遣う。


「はい。大丈夫です」


 ヴェイルの翼が音もなく更に小さく畳まれ、羽先が香の煙をわずかに揺らした。

 フィスファーナと共に、それぞれベッドに横になる。


 ——翼を使いこなしてらっしゃる。もう神話ですわ!そしてふわふわ……


 ミレーヌがまた感激して瞳を輝かせ、少し乱れた羽先を指先でそっと整えた。


 

 他の者が見守る中、間に置いた椅子にハウエリアが座った。

「お2人のお手を取りますね。楽にしていてください」


 2人が目を瞑る。

 ハウエリアが彼らの手にそれぞれ自分の手を添え、祈り出した。



 

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