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7話 朝活(イチャイチャ)

 翌日の朝、俺が目を覚ますと、隣には全裸で眠ってる女の子の姿があった。


 幻覚かと思ったけど、全然そんなことはない。


 真顔で自分の頬を引っ張ってみると普通に痛い。


 気持ちよさそうに寝息を立ててる彼女の手首に少しだけ触れてみると、心地よい体温が伝わってきた。夢を見てるのか、「うぇへへ……」と不気味な笑みを浮かべる。


 ……うん。


 わかってる。そりゃそうだよ。


 俺は昨日、監禁するという名目で、このストーカー美少女を家の中に閉じ込めた。


 で、本当なら、今日から正式にお泊まりセットを持参させ、調教生活を送らせるつもりだった。


 なのにこれだ。


 保野さんは、自由気ままに俺の隣でくぅくぅ寝息を立ててる。


 ベッドは使っていいから、絶対に俺の近くまで来ないように、って。そう言ってたのに。


 硬いカーペットの上で、ベッドから持ってきた布団を被ってらっしゃる。


 しかも、この子はなんで全裸なのか。


 寝る前、しっかり服服着てたんですが……。


 この寒い秋の季節だ。なにも暑いってことはないはず。


 もうわからん。何もわからん。段々俺の方が暑くなってきた。


 保野さんが徐々にくっついて……というか、抱き着いてきてる気がするし。


「……でも……ストーカーじゃなかったら……ほんと可愛いんだよな……」


「っ……」


「俺にはもったいないくらいだ……綺麗だなぁ……」


「っっ……!」


「……ん……?」


 この感じ……まさか……。


「……保野さん……? もしかして、起きてますか……?」


「っ……! ぐ……ぐぅ……ぐぅ……」


「…………」


「ぐ……ぐー……ぐ……ぐぅぅ……」


「……俺、嘘ついたり、騙そうとする人はストーカーより嫌いかもです」


「ふぇ!? や、やだぁ! 嫌ぁ! 嫌いにならないでくださぃぃ! あーくぅぅん!」


 涙目でぎゅっと、さらに抱き着いてくる保野さん。


 胸の辺りにふにゅふにゅした感触が凄まじく伝わってくる。


 彼女の髪の毛が思い切り顔に触れ、そこはかとなくいい匂いがした。


 俺はもう力なくなすがまま。


 駄々をこねる保野さんに抱き締められるがままになっていた。


「保野さん。冗談です。冗談ですから、どうか俺を離してください。お願いします」


「嫌です……! 嫌ですぅ……! 離したら、きっとあーくんはまた私を……! ふぇぁぁ!」


「大丈夫ですから。ちょっ、もうほんと……!」


 理性崩壊のカウントダウンが俺の中で始まる。


 俺の脚に彼女の脚が絡められ、なんというか、例のナニに良くない刺激が与えられ始めた。


 横たわっているのに、起床を始める。ヤバい。ほんと待って。良くない。


「ほ、保野さんっ……! ちょ、ま、マジでっ……!」


「嫌だ……嫌だ……やだやだやだやだやだ……! も、もう、あーくんに嫌われたら私……世界を壊すしかなくなっちゃいます……! 私以外のすべてを……! あーくん以外のスベテヲ……!」


「今やばい光を目に灯さなくていいですから! 嫌いにもならない! なりません! 神に誓って!」


「いっそのこと……あーくんのために私が死のうかな……? あーくんの傍に永遠にいるため……幽霊になってどこまでもずっと一緒に……」


「やめてください! それだけは絶対! そんなことしたら許しませんからね、ほんと!」


「あーくん……あーくん……あーくん……アークンアークンアークンアークンアークンアークンアークンアークンアークン……!!!」


「っだぁぁぁ! もうダメですってぇ!!!」


 さりげなく股間部分を毛布で隠しながら、俺は保野さんを振り解く。


 彼女はいつも通り完全に病み状態で虚空を見つめ、頬をひきつらせて笑みを浮かべてる。


 俺はため息をついた。何度も言うが、股間を毛布で隠しながら。


「あ、あのですね、保野さん? 今の俺の発言は冗談です。そのくらいのことで嫌いになったりしませんから安心してください」


「……うそ……」


「ほんとですよ……っ……そ、その……あなたが嘘眠りしてる時……俺が言ってた言葉は…………ま、まま、紛れもなく本心……ですから」


「っっっ……!」


 俺の言葉を思い出してくれたのか、病み瞳のまま、一気に耳まで赤くさせる保野さん。


 こっちを見つめ、一転してキョどりだす。


 俺の方も死にそうだ。あまりにも恥ずかしくて。聞かれてるなんて思わなかったし……。


「だ、だからですね……? そんな思い詰めないでください。お、俺はあなたを……ストーカーから脱却させないとって使命もあるんですから……」


「……うぇへぇ……」


 だらしなく、幸せそうな笑顔を浮かべる保野さん。


 俺は恥ずかしいままに続ける。


「で、でも、一応これは言っときますけど、あくまでも俺の『好き』は友達的な意味の『好き』ですからね!? ストーカーの人と深い仲になるなんてできないですし、危ないし、無理なんですから!」


「えへへ……はいっ……」


「ちゃ、ちゃんとストーカーをやめてもらって……そ、そこから……その……」


「……♡」


 ダメだ。


 そこから先の言葉は言えない。


 俺のキャパを完全に超えてた。


 悶え声を上げ、股間を隠していた毛布にくるまる。


 俺はその場でうずくまった。


 保野さんの顔なんて見ることができない。


 なんでこっちがダメージ受けてんだ。意味がわかんなかった。


「……あーくん……」


「……ナンデスカ……」


 毛布にくるまったまま応える。


 カタコトになってたのは自分でもわかった。ツッコまないでいただきたい。


「好きです……もう……心の底から……骨の髄まで愛してます……」


「っ……そ、そうでふか……」


 噛んだし……。


 く、くそっ……。


「えへへぇ……だいしゅきぃ……」


「うぐぐ……っ」


 俺は一人、毛布の中で唇を噛むのだった。


 想像以上にやばい。


 これはもう……自分との戦いでもあるぞ……。


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