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ふもととおしゃべり

 今俺たちはゴブリンたちとも一緒に、定期的に来ている岩山のふもとへとやってきていた。


 「「ふぁ~。」」

 

 すぐそばにいるいつもの二人から同時に大きなあくびが聞こえてくる。

 声に釣られて二人を見てみると…

 魔王は眠そうに目を擦っていて、アイラは「あっ…!!」と呟いてから、目が合うとすぐに口元を手で隠した。

 朝食から道中、そしてここでもたまにあくびをしていたのは聞こえてきていたが、どうやら二人とも寝不足らしい。


 「あら二人とも、大きなあくびですこと。」

 「ッ…!!うっさいわね!!そんなこと、一々言ってこないでよっ!!」

 「そうじゃそうじゃ!!元はと言えば誰のせいだと思っているのじゃ!!」


 ふざけて言った一言に、二人から厳しい声が返ってくる。

 というか…

 俺は魔王へと…


 「いや、お前は普通にお前のせいだろ!!」

 「ぬぁっ!?なんでじゃ!!おかしいのじゃ!!」

 「おかしいのはお前の頭だろ…。ったく…、はぁ…」

 「ぐぬぬ…!!おかしい…。今妾のことをおかしいと言ったのじゃ!?ひどいのじゃ!!ひっどいのじゃ!!おなご、お主もそう思うじゃろ?」


 魔王はアイラの方へ振り向く。

 するとアイラは魔王の言葉に、何か強い気持ちを押し殺したように言葉を返す。


 「ねぇ…!なんで今日、私が寝不足なんだと思う?」

 「はっ…。そんなの、妾が知るわけないのじゃ!!でもどうせ、ただ夜寝れなかったとか、そんなバカみたいな理由なのじゃ。きっとそうなのじゃ!!」

 「はっ、はっ、はっ…」


 頬と口元だけを笑顔のように繕ってこめかみをピクピクとさせているアイラから、何故か細切れの笑い声が響いてくる。

 そしてその不可思議な笑いはとどまり、まだ募った何かを我慢するように…


 「あ、あぁ…。そう言うこと言うんだ~。ふ、ふ~ん。い、いいわよ。じゃ~、教えてあげるわよ。なんで私が寝不足なのかを…!!」

 「はっ…。言いたいなら好きに言えばいいのじゃ!!さっさと言えばいいのじゃ!!」

 「ムカッ…!!こいつ、マジむかつくんだけど…!!」

 「言わないのじゃ?じゃー、黙っておるのじゃ!!」

 「むっ…!!言うわよ!!」

 「ならさっさと言うのじゃ!!」


 「二人とも、朝からぴりぴりし過ぎだろ…」

 「うっさい!!」

 「そうじゃ!!これは妾たち話なのじゃ!!お主は黙っておるのじゃ!!」

 「当たりきつっ…!!俺別に、何も悪いことしてなくね?」

 「そんなの知らんのじゃ!!どうでもいいのじゃ!!」

 「はー…」


 ほんと、当たりがきつい。

 寝不足だからって限度があるだろ…

 

 俺にストレスを吐き捨てた二人は、また二人で向き合う。

 そしてアイラが…

 

 「どこぞのバカが、一晩中、ずっと、痛い痛いってうるさかったからよ!!」

 「あ~。」


 なるほど。

 俺は快眠だったけど…

 すごく快眠だったけど、一晩中…

 魔王が言うには確か、日が出て空が明るくなるくらいまではお腹が痛かったらしい。

 そしてそんな声がその時間までずっと…

 そりゃー寝れないわな。


 「大変だったんだ…うっ…」


 他人事のような俺の一言に、アイラはキッと鋭い視線を向けてきた。

 ただすぐに、また魔王へと視線が返っていった。

 こわっ…!!

 

 そして、アイラの言葉を聞いた魔王はというと…

 

 「は~、そんなバカみたいなやつがいたんじゃな~。」


 自分のことだとは、微塵も思ってないようだった。


 「アンタのことよ!ア・ン・タ!!」

 「ぬわっ!?妾のことなのじゃ!?でもじゃ、妾はバカなんかじゃないのじゃ…!!だから違うのじゃ!!ぜーったいに…

 「うっさい!!バカ!!」

 「ぬわっ!?」


 魔王は驚きのあまり、大きく目を見開かせた。

 そしてプルプルと身体が震えだして…


 「また言ったのじゃ…!!また妾のことをバカと言ったのじゃ!!もう許さないのじゃ!!ぜーったいに…

 「うっさい。バカ。」

 「ぬわっ…!?」

 

 魔王がまた目を見開かせた。

 その姿が…

 というかやり取りだろうか、それがなんか面白かった。


 「ククッ…」

 「お、お主…!!何を笑っておるのじゃ!!なんで笑っておるのじゃ…!!」

 「いやーすまん。なんか面白くて、つい…」

 「ぬぅぅ…!!」


 少し歯を食いしばったように、魔王が睨みつけてきた。


 「はいはい。じゃー二人とも夜明けくらいまでは起きてたわけか。そりゃー眠いな、うん。」

 「ねぇ、なんでアンタはそんな他人事なの?隣の部屋の私ですら眠れなかったんだから、同じ部屋のアンタなんて…」


 不思議そうにアイラが見てくる。


 「こやつ、すごくずるいのじゃ!!ヘンテコな…

 「ずるい…?」

 「そう、ずるいのじゃ!!」

 「えっと、何が…?」

 「それはなのじゃ!!ヘンテコな物を出して、それで壁を作って、ぼーへきなのじゃ!!」

 「ん?んっ!?」


 アイラは困惑を始めた。

 

 「いや、それじゃー絶対に分からないだろ…」

 「なんでじゃ!!すごく分かりやすいのじゃ!!逆に、分からないやつがバカなのじゃ!!」

 「いやいや…」

 「はっ…。すっごく分かりやすいのじゃ!!むっふん!!」


 背筋と鼻を高くして、魔王が自信満々にふんぞり返った。


 「分かったやつの方がすごいだろ…」

 「ほんと、意味不明よね…。でフェデ、ヘンテコな物って何よ?」

 「あーそれはな、昨日出かけた時、防音機能付きの結界魔道具を買ったんだよ。」

 「防音の、結界…魔道具。はっ!?えっ!?」

 「そ。だから昨日の夜、さっそくそれを使ってみたんだよ。するとすごい静かでさ、昨日はすごく快適に…。ん?アイラ、どうかしたのか?」

 

 目の前にいたアイラは、口をポカンと開いて呆けていた。

 だけどすぐに険しい表情になって、力強く俺の両肩を掴んできた。


 「ど、どうした?じゃないわよ!!ずるくない?アンタだけずるくない!?私は一晩中寝れなかったのに…。なのにアンタは…!!ねぇ、ずるくない?ずるくないっ?ねぇっ!!ねぇっ…!!!」


 ぐわんぐわんと、アイラが掴んだ肩を揺らしてくる。


 「ねぇ!!ねぇっ!!」

 「そうなのじゃ!!お主は…

 「うっさい!!アンタは黙ってて!!!」

 「は、はい…」


 アイラは魔王を一蹴した。

 そしてまた、肩を揺らしてくる。


 「ねぇ、なんで?なんで…!!」


 揺らす力が強くて、頭が…回る…


 「アイラ、落ち着いて…。頼むから…」

 「なんで?なんでよ…!!」


 ただ俺の言葉は聞こえてないらしい。


 「あの、さ。あれ、なんだよ…」

 「何!何よ!!」

 「あの、…」


 頭が…


 「せっかく、買った…から、だから試しで…」

 「試し…」


 アイラの手が、ようやく制止、した…


 急に停止したからか、それとも血の気が引きすぎていたせいか、全身から力が抜ける。

 上半身…だけでなく、下半身も…

 だから立っていることも難しく、俺は尻から地面に落ちた。

 ガッ…


 「ッ…!!」

 「だ、大丈夫っ!?」


 落ちた俺を、アイラがすごく心配してくる。

 でも…


 「お前が言うのか…」

 「う、うっさいわね!!」


 アイラは恥ずかしそうに頬を赤らめていたが、今はそれどころじゃない。

 

 「すー。はー。」


 とりあえず、息を吸って吐いてを繰り返す。

 効果があるかは知らない。

 もう条件反射だ。


 「大丈夫?」

 「な、なんとか…」

 「そ。なら良かったわ。」


 お前が言うな…

 またそう言いたかったが、今はその言葉を胸の中に留めた。

 今、また何かされたら俺、死にうる、から…


 「で魔道具、効果はどう、だったの…?」

 「魔道具!?今魔道具があるのじゃ?」

 

 魔王がすごい勢いで会話に入ってきた。


 「今はないけど…」

 「そうなんじゃ…」


 アイラの返事に、魔王ががっくりとした。


 「けどあれよ?昨日フェデが使ったっていうやつ。アンタがさっき言ってたヘンテコってやつ。それが魔道具よ。私はみてないからおそらく…だけど…」

 「そ、そうなのじゃ!?あれっ、あれ魔道具だったのじゃ!?」

 「お前、昨日あれ見た時、なんだと思ってたんだよ…」

 「のじゃ?それは、ヘンテコなもの…?なのじゃ…」

 「ヘンテコ…。ヘンテコなー。」

 「ヘンテコはヘンテコなのじゃ!!」


 魔王はそう言い切った。

 

 「はー。作った人かわいそ…」

 「ふふっ、ほんとよね。」

 「なっ。」


 「なんで二人とも笑っておるのじゃ!?なんでじゃ!!」

 「なんで…。ん-、少しお勉強しようね。そうすれば分かるからさ。」


 知らんけど…

 あと、答えるのが普通にめんどくさかった…


 「ほんとほんと…」

 「むぅぅ…。嫌なのじゃ!!だから、なんでか早く言うのじゃ!!」

 「めんどくさい…」

 「めんどっ…!!ぐぬぅぅ…!!ひどいのじゃ!!妾だけ分からないの!!そんなの嫌なのじゃ!!」

 

 「でもさ…」

 「なんじゃ!!」

 「勉強すれば、お前がよく言う、立派なレディに近づけるんだぞ?だから勉強した方が…

 「はっ…、それなら必要ないのじゃ!!妾は立派なレディ!!もう立派なレディなのじゃ!!だから勉強なんていらないのじゃ!!」


 またいつものように、魔王は悲しい自画自賛をした。

 ただ横にいたアイラからぼそっと…


 「いるわよね?」

 「当り前だろ。」

 「よね。」

 「なに、二人だけでコショコショと話しておるのじゃ!!言うのじゃ!!妾にも聞こえるように言うのじゃ!!」


 正直言うのは、めんどくさい…

 というか、めんどくさくなりそうだ。

 ん-、だから…


 「あれだよ…」

 「なんじゃ!!」

 「魔王お前が、すごいレディだよなって話してただけなんだよ。」

 「そ、そうなのじゃ?」

 「そーそ。な、アイラ?」


 俺はアイラの目をじっと見た。

 俺のその目で察してくれたのか、ためらい交じりでアイラも…

 

 「え、えぇ、そう、よ…」

 「そ、そうなのじゃ?よ、ようやくお主らも、妾がすんごいレディじゃと分かってくれたのじゃ?そうじゃ!!妾はすんごいレディなのじゃ!!すんごいすんごいレディなのじゃ!!すんごいすんごいのじゃーーゅ!!むふふーんっ!!」


 魔王が段々と、すんごいにやけ面になっていった。

 ポーズも、えっへんといった感じだ。


 「チョロ…」

 「アンタ…」


 何か言いたげに、アイラが見つめてくる。


 「だって、ほんとにチョロいだろ?」

 「まぁ、それは確かに、ね。フフッ…」


 アイラは…

 「妾がすんごいのじゃ!!すんごいすんごいレディなのじゃーー!!」

 そう嬉しそうに一人舞い上がっている魔王を見ながら、頬を緩めた。

 そして魔王の方を見続けながら、アイラが…


 「で…」

 「ん?」

 「さっき言ってた魔道具、効果はどうだったの?」

 「あー、すごかったぞ?外にいたあいつ(魔王)の声なんて、もう全く…

 「へー…」


 アイラの方から、ねっとりとした恨めしそうな声が聞こえてくる。

 声がしてきた方を見てみると、アイラはいつの間にかこっちを見てきていた。


 「うっ…」

 「それは随分、快適そうなこと!!」

 「あぁ。すごく…快適、ではあったよ…」

 「へー。そっか。そうなんだ~。うるさくて私が眠れない中、アンタは快適に…。へ~。」

 

 やっぱり、アイラの声はねちっこい…


 「怒ってる?」

 「別に、怒ってないわよ…?」


 怒ってない…

 この言葉を言って、本当に怒ってないということがあるのだろうか…

 いや…


 「暴力反対!!」

 「しないわよ!!暴力なんて…!!」


 アイラは素早く反応してくる。

 でも…

 

 「いや、さっきしただろ…」

 「え、あっ…!!」

 

 気づいて…

 思い出してくれたようだ。


 「あれは、辛かった…」

 「ぐっ…!!」


 アイラが苦しそうな声を絞り出す。

 顔も歪ませている。

 それが何故か心地よい。


 「ほんと、辛かった…」

 「あーもう、うっさいわね!!私が悪かったわよ!!」

 「謝れてえらいえらい。」

 「子供扱いすんなっ!!」

 「はははっ…」

 「むぅ。アンタ、ほんと嫌な性格してるわよ!」

 「そう?ありがと。」

 「褒めてない!!」

 「はいはい。ありがとありがと。」

 「だ~か~らっ…

 「はいはい。」

 「ほんと、アンタってやつは…!!」


 この時のアイラは、恨めしそうに睨んで来ていた。


 「なー、お主ら…」


 魔王が話しかけてきた。

 どうやら、自画自賛の時間は終わったようだ。


 「何?」

 「どうした?」


 「今日は、何をするのじゃ…?」

 「あれ?昨日、話さなかったけ…?」

 「そう…よね?」


 アイラの言葉からも、話してないわけでもなさそうだ。

 でも魔王は頭を横に振りながら…


 「いや、聞いて…ないのじゃ…」

 「そっか…」


 まぁ、いっか。


 「今日はな…」

 「うんなのじゃ…」


 俺はアイテムボックスを開く。

 そして中を漁り、とあるものを取り出した。

 そう、何重にも折りたたまれた一枚の大きなシートを…

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