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 今俺たち三人で、俺が借りている部屋へと帰ってきていた。

 明日の打ち合わせを終わらせ、今はただ、ご飯を食べた後のみんなでぐーたらするだけの、ルーティンのような時間だ。

 俺はベッドに腰掛け、アイラは据え置きの椅子に座り、そして魔王はさっきからずーっと、直置きされた布団の上で四つん這いから頭を布団につけるようにうずくまっていた。

 その理由は…


 「痛い…!!!お腹、痛いのじゃ…!!!」


 そう、ただの食べ過ぎだ。


 「はぁ…。だから言ったじゃない。たくさん食べたらお腹壊すわよって…」

 「知らないのじゃ…。妾、そんなの聞いてないのじゃ…」

 「言ったわよ、ちゃんと。」

 「ぬぅぅ…。痛い…!!痛いのじゃ…!!」


 魔王はアイラの言葉に返事する余裕すらないようだ。


 「大丈夫…?

 「大丈夫じゃないのじゃ…!!痛い、痛いのじゃ…!!ぬぅぅ…。早く、早くどうにかするのじゃ!!」

 「はぁ…」


 アイラはしょうがなさそうにため息をついた後、自分のアイテムボックスの中を漁り出した。


 「ん-、何かあったかなー…。あっ、これ、とかどうだろう?」


 アイラはアイテムボックスから何か取り出していた。

 小瓶で、その中に苦々しい色の緑の液体が入っている。

 あれは…

 

 「毒消し、薬…?」

 「そ。どう?効きそうじゃない?まだ…」

 「まだ、か。」

 「そう、まだ、よ。しょうがないじゃない。他に腹痛に効きそうなものがなかったんだから…」

 「あー。でもそれ、本当に効くの…

 「いいのじゃ!!もうそれでいいのじゃ!!だから早くくれ!!なのじゃ。ぐぬぅぅ…」

 「あー、うん。はい。」

 

 アイラが薬を手渡す。

 それを受け取った後、痛みがひどいのか、ぎこちない手つきで魔王は瓶のフタを開け…


 「ぬぅ!!」


 中身を勢いよく飲み込んだ。


 この魔王が知っているかはともかく、この世界の薬はとにかく即効性が高い。

 だから効くなら一瞬、なのだが…


 俺とアイラが見守る。

 そして薬がどうなったか、というと…


 「痛い…!!お腹、痛いのじゃ…!!!ぬぅぅ…!!」


 やっぱり効かなかったみたいだ。


 「効果ない、みたいね…」

 「だな。まー、食べ過ぎって、食べ過ぎたものが消化できないから、食べた物を無理やり排出させようって話だし、毒消し薬が効かなくてもしょうが…

 「今はそんなのどうでもいいのじゃ!!お主ら!!早く、早くどうにかするのじゃ!!」

 「あー…」


 どうにか、なー。


 俺もアイテムボックスを開く。

 でもやっぱり、胃薬的なものは持ってなかった。

 それはアイラも同じだろう…


 「ん-、回復薬、ならあるけど、飲んでみるか?」


 コクコクと、魔王が辛そうに頷いてくる。

 

 「はいよ。」


 バシッ…

 勢いよく俺の手から魔王は回復薬を奪い取り、口の中に放り込む。


 「にぎゃい…」

 「まぁ、一応は薬、だからな。でどうだ?」


 魔王は二度、目をパチパチとさせ…

 そしてまたすぐ、うずくまった。


 「痛い…!!」

 「効果なし、か。でもそりゃーそうか。」

 「なんでじゃ…!!」

 「そりゃー、回復薬、だからな。体力とか損傷は回復できるけど、食べ過ぎには…

 「長いのじゃ…!!話が長いのじゃ!!それに今は、そんな難しい話はどうでもいいのじゃ…!!」

 「いや、難しくは…

 「どうでもいいったら、どうでもいいのじゃ!!」

 

 「自分で聞いたくせに…」

 「ほんとよね。」

 「今はどうでもいいのじゃ!!それよりもじゃ!!」

 「何?」

 「この痛いの…!!早く、早くどうにかするのじゃ…!!」


 まぁ、そうだよな…

 俺はアイテムボックスの中を再度漁る。

 でもやっぱり、腹痛に効くようなものは何も入ってなかった。


 「やっぱり役に立ちそうなもの、俺の方には入ってないな。アイラはどうだ?何かあるか?」

 「ん-。私の方もない、わね。」

 「だよ…

 「使えないのじゃ!!お主らは、ほんと使えないのじゃ!!」

 「はっ!?何こいつ…!!」


 魔王の無駄な一言で、アイラが表情が心配から怒、になった。


 「まー、まー。相手は子供。それに今は病人みたいなもんだから…。だから落ち着けって…」

 「落ち着いてるわよ!!」

 「妾は、子供じゃないのじゃ!!ぐぬぅぅ…」


 アイラはどう見ても怒ってるし。

 魔王、今お前はそれどころじゃないだろ…


 「はぁ…」


 どうしたものかなー。


 「あっ、サーナさんに聞いてみるか?胃薬持ってるかどうか…」

 「あっ、そうね!!その手が…

 「決まったんなら早く行くのじゃ…!!早くするのじゃ…!!」


 魔王から自分勝手な言葉が飛んでくる。

 そ~と、アイラの顔を覗いてみると、怒りを通り越してしまったのか、すごい笑顔だった。

 こめかみのあたりがピクピクとさせた…


 これは、やばい…


 「えーと、アイラ、さん?どっちが行く…、行きますか?」

 「私が行ってくるわよ!!」

 「はい…」


 ドンッ…!!

 アイラは立ち上がって、勢いよくドアを閉めていってしまった。


 はぁ…


 「なー、少しは言葉選べよ…」

 「ハンッ…!!お主らが使えないのが悪いのじゃ!!だからじゃ、妾、全く悪く…ぬぅぅ…!!」


 イラっ…!!

 

 「ほんとこいつは…」


 

 5分後くらい。

 

 その間ずっと…

 「痛い…!!ぬぅぅわぁぁ…!!」

 魔王は痛みに悶えていた。

 

 そしてそんなとき、ガッと、ドアが勢いよく開いた。

 アイラが帰ってきたのか、そう思ってドアの方に視線を向けてみると、何かが勢いよく飛んで向かって来ている。


 「ぉわっ…!!」


 俺はそれを両手で受け止める。

 するとすぐ、バタンッ!!とドアが勢いよく閉まり、アイラの姿はそこにはなかった。


 「アイラ、相当怒ってるみたいだな…」

 「フンッ…!!そんなの知らないのじゃ!!お主らが…ぬぅぅわぁぁ…!!!それよりも、じゃ、早く、くすり、くすりを…」

 「はいはい…」


 俺は布袋に入っていた薬と新しく注いだ水を魔王へ手渡す。

 魔王はすぐに薬の方をバシッと奪い取り、口の中に放り込む。

 そしてまたすぐに水の方も奪い取り、水で口の中に入ってたものを流し込んだ。


 「っは~。」

 「どうだ?」

 

 パチパチと、また魔王が瞬きをする。

 そして…


 「ぬぅぅ…!!痛い…!!」

 「ダメか…。これは時間かかるやつだな…」

 「ぬわっ…!!そ、そんなの嫌じゃ…!!どうにかするのじゃ…!!!」

 「無理だな。」

 「のわーっ!!!うぅぅ…。ほんと使えないのじゃ!!お主ら、ほんと使えないのじゃ…!!ぬわーーーっ…!!!」


 こうして魔王は一晩、腹痛と格闘を繰り広げることになったとさ。

 

 あとついでにだが…

 魔王が心配だったらしく、アイラは30分おきくらいで、何度も部屋の前まで訪れてきていた。

 

 そんな心配だったなら、様子を見て行けば…

 いや、喧嘩になったら嫌だし、それはやっぱ嫌だな、うん。


 こうして、魔王の腹痛劇の幕は…




 寝る前…

 

 「痛い…!!痛いのじゃ…!!」

 

 まだ魔王は痛みに悶えていた。


 「じゃー、そろそろ俺は寝るな?」

 「ぬわっ…!!ずるいのじゃ…!!お主一人…。妾がこんなに辛いのに…!!なのにお主一人…!!ダメじゃ!!痛いの治るまで、お主はぜーったいに寝るなじゃ…!!」

 「ふぁ~。そう言われてもなぁ。もう眠いし…」


 俺は目をこする。


 「ぬぅぅ…!!ダメじゃ…!!寝るなら、こ、この痛いの、治してから寝るのじゃ…!!ぐぬぅぅ…」


 ひどい話だ。


 「全部自分のせいなくせに…」

 「ハッ…。ぬぅぅ…!!妾…、わらわ、悪く、ないのじゃ…!!止めなった…、治せないお主らが全部悪いのじゃ…!!!ぬわっーー…。うぅぅ…」

 「何言ってんだ、こいつ…。はぁ…」


 でも確かに、このままだと寝にくい。


 悶える声がうるさいし。

 それに寝たら途中で起こしてきそうだし。

 ん-…


 あっ、そうか!!


 俺はアイテムボックスをまた漁る。


 「治すの…、何か出してくれるのじゃ…?」

 「いや、使えそうなのは全部使っただろ?そうじゃなくて…。あ、これこれ…」

 

 アイテムボックスから俺はとあるものを取り出した。


 「ぬぅぅ…。な、何なのじゃ?それ…」

 「これはな、今日買った、防音機能付きの結界魔道具だよ。」

 「結界…?ぬぅぅ…。そ、それが今何に使えるのじゃ…!!それに防音とは、何、なのじゃ…!!ぬぅぅ…!!」

 「防音は音を防ぐ、だな。」

 「防ぐ…」

 「そ。」

 「それが、今何に使えるのじゃ…!!うぅぅ…」

 「あー、何にっていうと…」


 俺は手のひらサイズくらいの魔道具を操作していく。

 

 「範囲は2メートル、でいいかな。時間は8時間、でいいだろう。よし。」

 「何がよし、じゃ…」

 「ん?」


 俺は魔道具の発動ボタンを押した。


 「それはな…。おぉ~っ!!」


 魔道具から、モノを透過しながら透明な壁が作り出されていく。

 範囲は、俺が持っている魔道具を中心に半径1メートルくらい。

 ベットのすぐ横の壁も透過しているが、問題ないみたいだ。

 きっと、外から中へと刺激を与えるものだけを遮るモノなんだろう。

 

 「そして防音の方は…。うん、良い感じみたいだ。」


 外からの音も遮っているみたいだ。

 その証拠に、ドンドンという音でもさせそうなほど魔王が防壁を強く叩いているのを、壁が防ぎ、音も遮っているみたいだった。


 「よし。」


 俺はベッドに横になり、布団をかぶる。

 そして、リモコンで電気を消した。


 「じゃー、おやすみ~。」


 聞こえるはずもない挨拶を俺は魔王にして…

 そして今日の疲れを取り除くため、俺は静かでゆったりとした幸せな眠りへとついた。


 あ〜、今日も楽しかったな。


 「〜〜〜〜〜っ!!!」


 深い眠りへとつく一瞬、外から何か声が聞こえてきたような気がした。

 が、きっと気のせいだろう。

 こうして俺の一日は終わりを迎えた。


 そして次の日の夜に聞いた話では、一晩中…

 

 「起きるのじゃ~~!!!」

 「痛い、のじゃ…」

 「ずるい…!!お主だけ寝てズルいのじゃ~~!!」


 そんな声が、隣のアイラの部屋まで届いていたらしい。

 可哀想に…

 アイラ、が。

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