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アイラ、すまん

 「の~じゃ、の~じゃ、今日のお昼はな~んなのじゃ~。」


 目の前にいる魔王からそんな歌が聞こえてくる。


 今はお昼。

 だからお昼を食べようという話に当然なって、いつものように魔王へお昼を渡すため、俺はアイテムボックスへ手を突っ込んでいるところだった。

 そして、取り出したものを魔王へと手渡した。

 フランクフルトとサンドイッチを…


 「ま、また、これなのじゃ…?」

 

 魔王から残念そうな声が聞こえてきた。


 「どうした?嫌だったか?」

 「そりゃそうなのじゃ!!昨日も、その前もこれだったのじゃ。飽きたのじゃ。妾はもう飽きたのじゃ!!今日はもっと他のものがいいのじゃ!!!」


 また、いつものようにわがままを言ってくる。

 ただ、考えてみると普通のことだったのかもしれない。

 でも残念ながら…


 「そーか、でも今日は、(おまえの分は)これしかないんだよ。」

 「ぬぅ…、ぬ、はー…、分かったのじゃ。今日はこれで我慢して、あげるのじゃ…」

 「いや、そんなに食べたくないなら…


 ぱくっ…

 魔王が、手渡していたご飯を食べ始めた。


 「はぁ、結局食べるのな…」

 「ぬぁ~、やっぱりうまいのじゃ。うまいものはいつでもおいしいのじゃ!!」

 

 俺の話は聞いてないらしい。

 というか…


 「結局、美味いのかよ!!」

 「ん?何バカなことを言っておるのじゃ?うまいものはいつでもおいしいに決まっておるのじゃ!!」


 ぱくっ…


 「ん~、うまいのじゃ!!」

 「なんだこいつ…。さっきは、飽きたとか言ってたくせに…」

 「さっきはさっき…、今は今…。もう昔のことは忘れたのじゃ。」


 ぱくっ…

 また魔王は、ご飯を食べ始めた。


 でもあれか…


 「すぐ忘れるから、バカなのか…」

 「ばー、ばだ、ばだひっばぼ…

 「あー、もう汚いって。黙って食ってろ。」

 「&%’&*@;…」


 まだ魔王が何か言っている。

 でもそれを無視して、昼飯を食べるため、俺はアイテムボックスをまた漁った。


 さ~て、今日の昼飯は何にするかなー…


 「ねぇフェデ、フェデはお昼何食べるつもり?」


 アイラから声がかかった。


 「ん-、どうしようかなーって。今考え中。アイラは…?」

 「ん-、私も考えてるとこ…」


 アイラは、魔王へと視線を移して…


 「フランクフルトは、今の気分じゃないけど…、でも、サンドイッチはいいわね。」

 「サンドイッチなー…」

 「でもあれ…?」

 「ん?」

 「サンドイッチ…、入ってないみたいだわ。」


 アイラのアイテムボックスの中にって意味だろう。


 「あー…、じゃーいるか?」

 「んー、じゃー…」


 アイラが何か言いだそうとした時、バカの声が聞こえてきた。


 「勇者はば~か。気が利かないば~か。本当にば~か、なのじゃ~。」


 なんだろう、この幼稚でむかつく歌は…

 すごく癇に障る。


 「はぁ…」


 横のアイラからため息が聞こえてきた。

 でも今はそれどころじゃない。

 あのバカにやり返す方が先だ。


 「なんだ?生粋のバカ。」

 「きっすい…?それはどういう意味なのじゃ?」

 

 魔王には少し難し過ぎたみたいだ。


 「はは…、少しはお勉強しようね。おバカさん。」

 「ぬぁ、なっ!?何じゃ、その言い方は!!小馬鹿にするような笑い方は!!妾をバカにするのもいい加減にするのじゃ!!」

 

 おお~…


 「小馬鹿。そんな言葉、よく…、あーでも、さすがにそれくらいは言えるか…」

 「またじゃ。また、バカにしたのじゃ!!」

 「だって、バカだし。」

 「ぬぅぅぅ…、ハンッ。そう言うお主の方がバカなのじゃ!!!」


 はっ…?

 

 「なんでだよ!!」

 「ハッ…、そんなのも知らないのじゃ?お主はほんとバカなのじゃ。」

 「あ゛っ…?」


 なんだこいつ…

 

 「そんなの当たり前なのじゃ!!先にバカといった方がバカなのじゃ!!だから、お主の方が…

 「なら、お前の方がバカだな。」

 「ぬぁっ!?なんでじゃ!?」

 「だって、今回はお前の方が先にバカバカ言い出しただろ?なら、お前の方がバカってことになるじゃん。」

 「な、なんでじゃ!?」

 「いやだから…」


 ちょっと待てよ…

 こいつに…

 

 「だからなんじゃ?!早く、その先をいうのじゃ!!」


 俺が途中で止めた言葉の先を、魔王が催促してきた。

 でも…


 「いやあれだわ。やっぱ止めたわ。」

 「なんでじゃ?!」


 魔王が大きく目を見開かせてきた。

 

 「だって、バカでも分かるように説明する自信ないし…」

 「ハンッ。これだから…。これ、だから…。まさかじゃがお主…、それ、また妾をバカにしてるんじゃないのじゃ…?」

 「おお~、よく気づいたな。」

 「よく気づいたな…じゃないのじゃ!!バカなお主が、賢い妾をばかにするんじゃないのじゃ!!」

 「バカが何か言ってるわ。」

 「ま、また…、また言ったのじゃ!!妾はバカなんかじゃないのじゃ!!お主の方がバカなのじゃ!!」

 「あ゛ぁ!?」

 

 「はぁ…、バカが二人ね。」


 アイラから、そんな声が聞こえてきた。


 「はぁ!?こんなのと一緒にすんなよ!!」

 「そうなのじゃ!!こんなのと…、こんなのと…、なぁ、女子おなご…」

 「ん?何?」

 「それ…、何なのじゃ…?」


 魔王はアイラの手にある、ハンバーガーのような形の物が気になったらしい。


 「ん?あっこれ?これは、カイザーサンドね。」

 「カイザー…、サンド…」


 そう、アイラが手に持っていたのはカイザーサンドだった。

 

 フランスパンのように少しカリっとしたような、でも形はハンバーガーのパンのように丸く切られた二枚のパン…

 その二枚のパンの間に、レタスやハムやチーズ、あとはトマトだろうか…

 それらを挟んだ、具材的にはサンドイッチに、形してはハンバーガーに似ているパンだ。


 「カイザー…、何とも、妾に似合う…、し…、し…、かっこいい響きな名前なのじゃ!!」


 「またか…。でもそれ、おいしそうだな。」

 「でしょ?この前、露店で売ってたのよ。だから買っちゃった。」


 アイラが、嬉しそうな笑顔を向けてくる。

 そしてそんな目新しく、美味しそうなものを見てしまった魔王が何をするのかと言うと、当然…


 魔王はアイラへと向けて…


 「それ!!それ!!妾食べたいのじゃ!!すごく食べたいのじゃ!!!」


 駄々が始まった。


 「えっ?い、嫌よ。」

 「でも妾、欲しいのじゃ!!すごく欲しいのじゃ!!食べてみたいのじゃ!!!」

 「えっ…?えっ!?」


 アイラが困っている。

 でも魔王はお構いなしで…


 「嫌じゃ!!食べたい!食べたいのじゃ~っ!!!」


 外から見てみると、やっぱりあれだな。

 マジで子供だな。

 魔王…


 「でもこれ、私のなの。だから嫌よ!!」

 「そんなの知らないのじゃ!!妾食べたい。食べたいのじゃ!!!」


 さて、お昼どうしようかな…

 

 アイラが持ってるカイザーサンド。

 それは、少し高級そうなシュークリームのように、カリっとしてそうな上下の生地。

 それに具が挟まれていて、遠目から見てもきれいで美味しそうに見える。


 よし決めた。

 今日のお昼は、俺もカイザーサンドにしよ。


 俺はアイテムボックスからカイザーサンドを取り出す。

 そして頬張った。


 カリっとした…

 クッキーとはまた違う触感。

 ただ、噛むたびに来るサクサクとした触感が楽しく…

 そして噛めば噛むほど、トマトなどの水気を多く含んだ具材でパンが柔らかくもなっていく。


 うん。

 これはこれで美味しい。


 そして目の前では…

 魔王がアイラの服を引っ張りながら…


 「欲しい!!妾、欲しいのじゃ!!!」

 「嫌よ!!それに伸びる。服が伸びる!!」

 「そんなの知らないのじゃ!!早く!!早く!!!」

 「あーもう嫌よ!!」


 大変そうな光景が目の前で広がっていた。

 

 アイラ大変だな~

 そう思いながら、俺はまたカイザーサンドを頬張る。

 あーおいし。


 「あーもう、なんで私がアンタの面倒を見ないといけないのよ。そんなのフェデに…」


 アイラがこっちを見てきた。

 

 「ねぇフェデ、その手にあるのって、もしかして…」

 「ん?カイザーサンド…」

 「んじゃ?」


 魔王までもが、こっちを振り向いてきた。


 おっと、これはまずい。

 俺は残り少なくなっていたカイザーサンドを口の中に放り込んだ。


 「のじゃ~~~~っ!!!!」

 「あ~~~~~~っ!!!」


 二人から、叫び声が飛んでくる。

 でも俺は気にせず、口の中にあるものを咀嚼する。


 ん、おいしかった。


 「お、お主…、今のは…」

 「さっきのって…」


 二人して、何か言ってくる。

 

 「ん?なんだ?」

 「さっきのは、か、か…、妾が欲しかったやつじゃないのじゃ!?」

 「そうよ。カイザーサンドだったわよね。フェデ、あんたサンドイッチとフランクフルト以外、持ってないって話じゃなかったのっ!?」

 「あーそう、カイザーサンドなのじゃ…」


 「ん?そんな話したか…?」

 「したのじゃ!!」

 「したわよ!!」


 してたね。

 魔王にあげる分はないってだけだったけど…

 

 「あっれ~、そうだっけ…?覚えてないな~。」

 「わざとらしいわね~っ!!」

 「そ、そうじゃそうじゃ!!」


 アイラが詰めて来て…

 それに、魔王が乗っかって来る。


 んー…

 

 「まぁでも、もうほんとにないから…」


 カイザーサンドは。


 「そんなの信じられないのじゃ!!」

 「はっ…!?」


 魔王が言い寄ってくる。

 そしてアイラは冷静になったのか、距離を取って、こそこそとカイザーサンドを食べ始めた。

 賢いな。

 

 「でも、ないものはないからな~。」

 「嘘じゃ!!そんなの嘘じゃ!!あるのじゃ!!まだきっとあるのじゃ!!!」

 「いや、ほんとにないから…」

 「そんなの嘘じゃ!!妾は信じないのじゃ!!」


 ん~、実際にないし、別に信じてもらう必要はない。

 でも、このまま言われ続けるのはめんどくさい。

 だからアイラ、許してくれ。


 「まぁ、信じなくてもいいけど、でもいいのか?」

 「は、何がじゃ?」

 「ん、そりゃー…」


 俺はアイラの方を指さした。


 「アイラ、”お前の”カイザーサンド、食べてるぞ!!」

 「んっ!?」

 

 「んじゃ?あ~、妾の~~~!!!」

 「はっ!?何が妾のよ!!これは私のなの!!」

 「違うのじゃ!!妾のじゃ!!!」

 「なんでよっ!!!」

 「くれ~~、なのじゃ!!!」

 「嫌よ!!」


 またこうして、アイラと魔王とでカイザーサンドの取り合いが始まった。


 わー大変…


 「フェ、デ~~~~~!!!!」

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