二人ともって…、いや
アイラを含めた俺たち三人は今、昨日訪れた岩山の麓へと向かっている最中だ。
俺とアイラは二人並んで進んでおり…
そしてもう一人の魔王は、木の棒を振り回しながら俺たちよりも先を楽しそうに歩いていた。
どんな感じかと言うと…
「な~のじゃなのじゃ、な~ののじゃ。今日のお昼はな~んじゃろな。」
こんな歌を歌っている感じだ。
まじで…
「ねぇ…」
「なんだ?」
「もう一回だけ確認させて。あれ、本当に魔王?私には5歳くらいの子供にしか見えないんだけど…」
分かる。
すごく分かる。
俺も、たまにそうとしか思えない時がある。
例えば今とか…
「残念ながら魔王なんだよ。」
「そうなのね…。そうなのね…。なんだったんだろ、私たちの数年間って…」
アイラが何か悲しそうにそうこぼした。
なんか、ちょっとしたデジャブを見ているような気分だった。
「どうしたのじゃ?」
近くまで魔王が戻ってきた。
「いや、子供みたいだなーって…」
「誰がじゃ?」
魔王がコテッと首を倒した。
誰のことか、見当もついてないみたいだ。
だからしょうがなく、俺は目の前の人物…いや、子供を指さした。
「んじゃ?…、お主、もしかしてなのじゃが、妾のことをまた子供と言ったのじゃ?」
「え、うん。」
「んわぁーーーっ、もうもうもう、何度言えばわかるのじゃ。妾は子供なんかじゃないのじゃ。レディ、れっきとしたレディなのじゃ!!」
「ハッ、ソウナンダー。」
「ぬぬぬ…、今お主、鼻で笑ったのじゃ?妾のこと、鼻で笑ったのじゃ?」
「そうだけど。」
「ぬわっ。違うのじゃ。絶対に違うのじゃ!!逆に、どう見れば子供に見えるのじゃ!!!」
どう見れば、って…
「全体的、に…?」
「ぬわっ!?ぬぬぬ、何が、全体的にじゃ。何が…。どっからどう見ても妾は、れっきとしたレディなのじゃ!!」
「レディ、ねぇ…」
俺は魔王を見る。
身長は低く、実るべきものは全く実っていなかった。
「ハッ。」
「ぬぁっ!?ま、また、また鼻で笑いおったのじゃ…。ぬぬぬ…」
魔王が恨めしそうに見てくる。
すると、そことは違うとこから…
「あんたたちってあれよね?二人とも…いえ、やっぱりなんでもないわ。」
「いや、そこまで言われると逆に気になるんだけど…」
「そうじゃ。気になるのじゃ。」
俺と魔王は、二人しらアイラを問い詰める。
そしたら…
「ん-、いいの?言っても…」
アイラが焦らしてくる。
「あぁ。というか言ってくれ。」
「うんうんなのじゃ。」
「そう、二人がいいのなら…。あれよねって、二人とも子供よねーって…」
「はっ!?」
「ぬぁっ!?」
子供…?
二人とも…
二人とも!?
「はっ!?え…?いや、これは分かるけど、俺も!?」
「そう…、おいお主、”これは”とはなんじゃ、”これは”とは!!」
「…、あーすまん。つい本音が…」
「そうなのじゃ…じゃないのじゃ!!なんじゃ、本音って!!なさ過ぎるのじゃ!妾への敬意が!!」
敬意か…
「そんなの、お前が復活したときに全て崩れ去ったわ。」
「ぬぁっ!?なんでじゃ、なんで崩れ去るのじゃ!!訳がわからないのじゃ!!」
「魔王というレッテルなしでの中身を見てしまったからかな。」
「おぅ?どういう意味なのじゃ?」
伝わらなかったみたいだ。
つまりは…
「そういうとこだよ。」
「ぬぬ、つまりはどういうことなのじゃ…」
「さぁな…」
「ぬぁっ!?ぬぬぬ…。分かったのじゃ…。とりあえず、妾をバカにしておるのは分かったのじゃ…」
「まぁ、間違いではないな…」
「ぬわっ!?お、お主…」
また恨めしそうに魔王が睨んでくる。
すると横からアイラが…
「そういうとこよ。アンタ達…」
そういうとこ…
俺も子供と言ってた話か…
それは…
「いやこれは、これが絡んでくるからで…」
「おいお主、また”これ”って言ったのじゃ。また、妾のことを”これ”と言ったのじゃ…」
「あーそうだな。」
「そうだな…じゃないのじゃ。謝るのじゃ!!妾に、ふ…
「ふ…?」
「ふ、ふ、ふ…」
また言葉が出てこないのだろうか…
やっぱり…
「バカ。」
「ぬわぁ――――!!!」
「はぁ…」
魔王が叫ぶ。
そのあと、アイラから大きなため息が聞こえてきた。
音の聞こえてきた方を見てみると、アイラが頭を抱えていた。
その姿に、なんかちょっと腹立った。
そして魔王からアイラへと…
「というかじゃ、女子…」
「ん?何?」
「お主、どこの誰なのじゃ?」
「えっ!?」
「あー…」
確かに、魔王の方の紹介はした気はするけど、アイラの紹介はしてなかった気がする。
「というか、今更か…」
昨日の晩も聞けたし…
それか、起きてからここまでの時間でも聞けただろうに…
ただ、すぐにアイラから…
「いや、アンタも紹介しなさいよ。私からは言いにくいのだし…」
「」
その通りだった。
そして、魔王も便乗してきて…
「そうじゃそうじゃ!!」
何こいつ…
「いや、お前もだろ…」
「はー!?妾はあれなのじゃ。たまたま、そーたまたま、夜も朝も、眠くて頭が回ってなかっただけなのじゃ…。だから…
「あー、いつものことだな。」
「おぬっ…
「それよりも、今はアイラのことだろ?」
「あー、そうじゃ。そうじゃったのじゃ。で、女子、お主は誰なのじゃ?」
首を小さく傾げながら、魔王はアイラへと視線を向けた。
そして俺もアイラの方を向くと、アイラは深くため息をついていた。
「まーいいわ。で、誰ねぇ…。そう聞かれると難しいわね。名前はアイラ。一応はこいつと同じ、勇者パーティの一員よ。だから、アナタとは一度会ったことあるわよ?」
「そうなのじゃ?」
魔王がじーっとアイラを見つめた。
そしてすぐ、首を傾げた。
「ん-、覚えてないのじゃ…」
「だろうな。」
「なぁお主、いい加減、妾をもっと…、もっと…、えっと、なんじゃ…、えっと…、敬う…?そう、敬うのじゃ!!」
また言葉が出てこないのかと思ったら、今度は出てきたらしい。
「おー、よく出てきたな。」
「そうなのじゃ。どうじゃ?妾はすごいのじゃ?」
「ワ―、スゴイスゴーイ。」
「むふー!!」
自信満々に、魔王が胸を張ってきた。
それにアイラが…
「いやアンタ、それでいいの…?」
「のじゃ?」
「あいつにぞんざいに扱われてるのよ?それでもいいの?」
アイラが優しさから、魔王へとそんなことを言ってあげる。
それに対して魔王は…
「ぞんざい…?なんなのじゃそれ?」
「ぞんざいって言うのはね…」
「うんなのじゃ…」
「というのは…、なんで、私が魔王に言葉なんて教えないといけないのよっ!!」
確かに…
「んじゃ?急に怒って、変なやつなのじゃ…」
「なっ!?」
アイラは目を見開かせ、すぐにこっちを振り向いてきた。
そして、魔王目掛けて指を指す。
すごく、何か言いたげだ。
でも、俺から言えることは一つ。
「アイラ、次からはもっと簡単な言葉を使ってやれ。」
「だからお主、妾をバカに…
「そうね。そうよね。分かったわ。」
「ぬぁっ…!?分かったってなんじゃ…、分かったって何なのじゃーーーっ!!!」
こんなことがありながらも、俺たちは岩山へとたどり着いた。




