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45 公爵家と私 

王都のはずれまでやってきた。

馬車から降りて、お兄様に着いていくと、かわいいおしゃれなパンとケーキのお店についた。そこにはカフェが併設されていて、中では人が賑わっていた。

「ここは?」

というとお兄様はニコッと微笑んで、

「レナの好きなフルーツタルトがおいしいってきいてね。」

お兄様はそう笑って、カフェの方に入っていった。

多分この辺でお兄様や私のような服装をしたものがいないからだろう。

お客さんたちが一斉にこちらを見ていて、なんだか恥ずかしくなる。

「ここのタルトタタン2つと紅茶をください。」

とお兄様がいう

「タルトタタン?」

「レナの好きなあのケーキ、この辺ではタルトタタンというらしい。

この街が発案者の生まれ故郷で、敬意を込めてこの名前で呼ばれているらしいよ。」

「そうなんだ!」

そうか、あのフルーツタルトはそういう名前だったのか。




ケーキが運ばれてきた。

もう匂いが香ばしい。見た目もこんがりきらきらしている。

フルーツも大きくカットされていてタルトからはみ出そうだ。

この匂いを嗅ぐとなぜだかお腹が減ってくる。

早速一口、口に運んだ。

「んっっっ!!!!!おいしい!!!!!」

口に広がるわずかな酸味と甘味と苦さ。

そしてふんわり香るシナモン。

ジューシーな果実とサクサクの生地。

ん......?



「..........というかこの味.........?」

この味はどこか懐かしかった。

私がこのタルトを好きな理由ーーーーー

それは私のお母さんの得意料理だったからだ。

何かいいことがあると、このケーキを焼いてくれた。

ぼんやりとお母さんとケーキの思い出が蘇る。

「おかあ.....さん?」




そのとき

「ヘレナ????ヘレナなの???」

そういって近づいてくる、エプロン姿の女性がいた。

水色の綺麗な瞳に、薄いピンクの髪をしていた。

私はなんだかこの人を見たことがある気がした。

「ヘレナは......お母様の名前.....?」

と混乱していると、

「まさか、ヘレナの娘?」

とまたその女性が驚くようにいった。




お兄様が

「落ち着いてお話しできる場所、ありますでしょうか?」

と言った。

カフェに併設されている、家のリビングに通してもらった。

お兄様は

「急な訪問ですみません。私はラディエール・フォン・ヴィンセントと申します。」

女性は

「ラディエール.......妹を殺した?」

とすごい形相で睨んだ。

「帰って、帰ってよ!!!お姉ちゃんをどうしたの!!!」

その女性は優しい顔からは想像できない形相で叫んだ。

「本当に申し訳ない.....」

お兄様は、ただひたすら謝った。

「どういうことなの?何があったか説明して。

あたたのせいで、私は母と妹を失ったのよ。

母は妹が死んだという知らせのショックで寝込み、

その時の過労がたたって2年後に亡くなったの。

それなのに、あなたたちはお金を渡してくるだけ。

妹の葬式すらあげられなかった。」

そういって女性は目をうるませた。

「それは本当に申し訳ない。

私の父がしたことですが、私が代わって謝罪させていただきます。」

「...もういいわ、なにがあったのか教えてもらってもいいかしら?

この子の、この子のことを知りたいの。」

と優しい目で私を見つめる。







お兄様は姿勢を正した。

「ローナさん、あなたの妹であるヘレナさんは私の家のメイドでした。

そこで、私の父ライアスと出会いました。父の一目惚れだったそうです。

でも父のライアスには婚約者がいた。それがこの国の第二王女ルウナだったのです。

よって私の祖父は絶対にその恋愛を認めなかった。

だから父とヘレナさんは純愛を貫いていたそうです。

しかし、とうとう父と王女の結婚が決まり、婚約式と結婚式の日取りまできまった。

もう免れないと思った父は、ヘレナさんを従兄弟の侯爵家にうつしました。

万が一、自分との過去の関係がバレて、

ヘレナさんに危害が及ばないようにしたといっていました。

しかしどうしてもヘレナさんを忘れられなかった父は

年に一度だけ、侯爵家でヘレナさんにあっていたそうです。

父は結婚してすぐ、母は私を授かりました。

私が3歳になり、もう後継に問題がないと考えたのか、

父はヘレナさんとの駆け落ちを考えたのです。

父とヘレナさんは駆け落ちし、

この国のラーナという国境間近で暮らしていました。

その時に授かったのがレナです。

しかしそれを私の母ルウナは許しませんでした。

国王陛下に直々にラディアール家を取り潰せと抗議するとまで言い出したのです。

そして祖父は父を探しだし、家のために、

後継者である僕のために戻ってきてくれといいました。

父は絶対に帰らないといったそうです。

しかしヘレナさんは子供のために、僕のためにもどってくれ、

そして爵位を譲ったら戻ってきて欲しいといったのです。

父はそれに従い私が爵位を継ぐことのできる6歳になったら戻ると決め

ヘレナさんには不自由のない生活をその土地でできるようにして家に帰りました。

そしてレナが生まれ、3年後、国境付近で流行った流行病にヘレナさんはかかりました。

そのことを知った父はすぐにヘレナさんのもとに行きましたが、

すでに病状は悪化していました。

父は王都の一番いい病院にヘレナさんをいれ、自分もできるかぎり見舞ったそうです。

ヘレナさんを病院に入れる時、父はレナを引き取りました。

結果的に父のせいで妹さんを辛い目に合わせたことになります。

本当に、何をしても償えることではありません。

でも、レナのことはどうか、血のつながった家族として接してもらえないでしょうか?」

そう言ってお兄様は頭を下げた。静かな沈黙が流れた。

私はびっくりして言葉がでなかった。そんなことがあったなんて。

なんで教えてくれなかったの?という疑問とともに、

教えてくれていても、私にはどうしようもないことだったという理解もできた。

さらに沈黙が数分間続いた。

「そう......そうだったのね。あなたも大変だったのに、さっきはごめんなさいね。」

とふっと諦めたように、優しくローナさんは微笑んだ。




「その話から察するに、一時期お父様がいなかったんでしょう?

それにその状況でお母様の情緒も安定せず、さぞ苦労したことでしょう。

あなたが謝ることではないわ。それに.....」

というとローナさんは一度言葉を切った。

「あの子は、ヘレナは.....どうでもいいような人に流されて

一生を捧げるような心の弱い子ではないわ。

そこまでしたということは、あなたのお父様を心から愛していたのでしょうね。

だから....結果としてどうかはわからないけど、

あの子の人生に幸せな時はあったと思うの。」

ローナさんは遠くを見つめるようにしていった。

「レナちゃんも授かれて、

きっと、きっと、後悔のない最期だったと、そう思うことにするわ。」

「まあ、死に際になっても連絡をくれない公爵家は嫌いだけど」

と最後に少し冗談めかして付け加えた。

「それは....」

「わかっているわ、あの時の流行病は隔離施設。

つまり私たちがいっても会えない。

だからあえて知らせなかったんでしょう。

でも死んだことだけ伝えらるこっちのみにもなってよね。」

と勢いよくいうローナさん。

「それは本当に申し訳ないです。

そもそも王都に連れてくるだけでも当時は本当は重罪だったんです。

でも父が医療施設を一個増設する、研究に貢献するという条件で

そこにかくまってもらってていたのです。

色々な事情があったにせよ、申し訳ないことをしました。」

またお兄様は深々と頭を下げた。

「ふふっ、親のやったことを子供が謝るものじゃないよ。

勘違いしていた私も悪いんだけど。

公爵家の名前を聞いたら頭に来てしまって。

冷静さを失っていたわ、ごめんなさい。

でもありがとう。本当に。話してくれて。

そしてレナちゃんに会わせてくれて。」

と優しく私を見て微笑んだ。

「暗い話は終わりにしましょ!公爵のお坊ちゃんも顔を上げて。

ケーキを持ってくるから、もっとヘレナとレナの話をきかせてくれない?」

「もちろんです。」

そう言って、部屋を出ていった。




「お兄様.....」

「すまんレナ、今まで話していなくて。

もし話してレナまで公爵家が嫌いになったらと思って話せなかったんだ。

すまない。もし本当に俺のことが嫌いになったなら....」

「そんなことはありませんわ。びっくりしましたけど、

お父様は思った以上にお母様のことを好きだったとわかって

むしろ嬉しさが勝りました。

流行病は国境で流行った後に国全体に広がりましたし、

国境に住まわせていたから死んだのだとは言い切れませんもの。

それに私は、私を一人ぼっちにしないように引き取ってくれれ、

お兄様と引き合わせてくれたお父様をもともと恨んでなんかないですから。」

そういうとお兄様はほっとした顔をした。

「ありがとう、レナ。」




「はーい。タルトタタンだよ〜〜!!」

そういってローナおばさまは焼きたてのタルトタタンを運んできてくれた。

これはお母様が作ってくれたものと同じ味。

私はなんだか、お母様がここにいるような気がした。

私とローナおばさま、

そしてお兄様のこの集まりを微笑んで見ていてくれるような、そんな気がした。







第一章の婚約編完結です!!

結婚編も始めるよ予定ですが、一旦完結とさせていただきます。

R18の「冷徹侯爵は妹を病的に甚振る(いたぶる)」が思った以上に好評なので

こちらも併せて続けていこうと思っています!

何卒よろしくお願いいたします!

(R18集約も考えましたが.....今のところ別にしようと思ってます!)



何回か心折れかけたのですが、作品に足を運んでくださる方のおかげでここまで完走できました。

本当にありがとうございます!

今後ともよろしくお願いします(*´ω`*)

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