41 お兄様はずるいです
ラファエル様とエドワード様が帰った後、
屋敷はようやくもとの静けさを取り戻した。
どうなることかと思ったけど、無事におもてなしができてホッとした。
お兄様が「なんか突風だったな」
と笑いながら言った。
確かに、嵐のような訪問だったかもしれない。
「やっと2人きりになれたな」
と、にやっと笑うお兄様を見て、
私の心臓がまた少し早く鼓動を刻む。
久々のお兄様と二人きりの時間、なんだか特別に感じる。
「せっかくだし、湖畔のガゼボでお茶でもしよう」
と誘われ、私は頷く。
アニーがお茶と焼き菓子を用意してくれた。
「レナは本当によくもてなしてくれた。
エドワードも、自分の妹よりも作法が完璧で
身のこなしが綺麗だと褒めていたよ」
と言いながら、お兄様が私の頭をそっと撫でてくれた。
「がんばったな」
と優しく頭をぽんぽんされ、胸がドキドキしてくる。
お兄様の手の温もりがとお兄様のはにかんだ笑顔に
胸がキュッとなった。
お兄様が少し真剣な顔をして言った。
「レナ、俺は早く婚約式をして、正式にレナが俺のものだって言いたい。
だからこちらの仕事が終わり次第、
なるべく早く王都の公爵邸に帰って婚約式の準備を進めようと思っているんだが、
レナはどう思う?まだ早いと思うならお前のペースにあわせる。」
「それに私も早く婚約式がしたい。
正式にお兄様の婚約者になりたいです。不安になるのはいやです。」
と私は素直に答える。
まだ告白だけで、お兄様がどこまで真剣に考えてくれているのか
わからなかったが、お兄様のその言葉にほっとした。
お兄様とずっと一緒にいられるんだ。
その実感が沸々とわいてきた。
「そうか」
とお兄様が嬉しそうに微笑むのを見て、私も嬉しくなった。
「婚約式のドレスもティアラも、
この国一番のものを用意させないとな」とお兄様は張り切っている。
この国では、貴族は婚約式を自宅で行う。
親族と少数の友人を招き、国王様から頂いた婚約承認書を読み上げ、
そこにいる全員が署名する。
そして男性が女性に婚約の証としてティアラを渡す。
ドレスのデザインは各家で異なるが、大体が家紋の色に合わせたものが多い。
「ティアラは前にいらないって言ってたけど、
嫌なのか?それなら他のものを用意するが」
とお兄様が聞いてきた。
私は、なぜティアラがいらないと思ったのか理由を説明する。
すると、お兄様はニヤニヤと笑いながら
「もうその時から俺のこと好きだったのか」
とからかってきた。
「やめてください……」
と恥ずかしさで顔を赤らめる私に、お兄様はにやりと笑って、
私の顔を覗き込んだ。
「照れてる顔も可愛いよね」
と、さらに顔を近づけてくるお兄様。
ドキドキが止まらない。
「やめてください」
と言った瞬間、またあの柔らかい感触が唇に触れた。
こんなお兄様の一面があるなんて知らなかった。
いつも優しくてクールなお兄様がこんなことするなんて。
少し恨めしく思いながらも、私の心は幸せでいっぱいだった。
この幸せな時間が、いつまでも続けばいいのに。
そう思いながら、お兄様のそばで穏やかなひとときを過ごした。
きゃーーーー




