39 高貴な方がいらっしゃいましたわ
いつもただただ広く静かな公爵邸が久々に賑わっている。
エドワード様とラファエル様がやってくるということで、
屋敷全体が準備に追われていた。
私もお兄様が手配してくださった家庭教師にマナーを1から叩き直された。
使用人たちが忙しく駆け回り、私も手伝えるところは手伝いながら、
なんとか当日を迎えた。
今日は、ライシュで有名なパティスリーからパティシエを呼び、
さらに宝石商も手配した。
エドワード様が喜びそうなケーキと、
ラファエル様が興味を持ちそうなジュエリーを揃えて、
庭のガゼポも修繕し、一番綺麗なバラ園でお茶を飲めるようにしている。
おもてなしの準備は万全だ。
「エドワード様、お味はいかがですか?」
私が尋ねると、エドワード様は少し目を輝かせながら答える。
「うん、とても美味しいよ。特にこのフルーツタルト、絶品だな。
ライシュトルテもいつ食べてもうまいな。宮廷に呼び寄せようか。」
彼は優雅にケーキを口に運び、満足げに微笑む。
「パティシエが特別に作ったものなんです。お気に召していただけて光栄ですわ。」
と、私が微笑んだが、お兄様は
「そんなことしたら、ライシュの損失になるだろ。
王家お墨付きくらいにしてくれ。
それか本人の希望で数年間だけとかならいいけどな。」
と冷静に返していた。
そうだ、私たちはこの領地の民の暮らしを第一優先に
考えなければいけない立場なのだ。
エドワード様は
「王家お墨付きいいね〜そうすれば取り寄せしやすくなるし。
ヴィンセントは天才だね〜」
とニコニコしている。
やはりエドワード様の笑顔ポーカーフェイス力はすごい。
私も見習いたい。
ラファエル様がジュエリーを手に取り、
きらきらと輝く石を眺めながら声を上げた。
「このサファイア、本当に美しい。ラディエール公爵領の宝石はやはり特別だ。」
といって何個も購入していた。
ミーナ様にも渡すのだろうか?
私はそんなことを考えながら、ラファエル様を見ていた。
視線に気がついたのか
ラファエル様は私に視線を向けて、にこっと微笑んだ。
「レナちゃん、君の瞳もサファイアのように美しいね。」
その瞬間、お兄様がぴくりと動いたのが視界の端に入った。
ちらりと見ると、お兄様がラファエル様を少し睨んでいるのがわかる。
やはり、こういう冗談はお兄様には通じない。
「ありがとうございます、ラファエル様。
でも、そんなにお世辞を言われると……困りますわ。」
私は軽く笑いながら、その場を和ませようとした。
「お世辞ではないさ、レナちゃん。本心だよ。」
ラファエル様はにっこり笑い、
まるでお兄様をからかうかのように私を褒め続ける。
ラファエル様はお兄様の反応を楽しんでるようだ。
後からお兄様の機嫌が悪くなるからやめて....。
そっとお兄様の方を見るとお兄様の目がさらに鋭くなるのがわかった。
エドワード様はそんな二人のやり取りを面白そうに見ていたが、
次のケーキをメイドにサーブさせ
ケーキに視線を戻し、穏やかに食べ続けている。
「ラファエル、あまり調子に乗るな。」
お兄様が静かに、しかし確実に怒りを含んだ声で言う。
そんなお兄様を見て、ラファエル様は楽しそうに肩をすくめた。
「ヴィンセント、君は相変わらずだな。
美しいものを褒めるのは当然のことだよ。」
ラファエル様はニコニコしながら、
お兄様の怒りを軽くかわしている。
私はその場の雰囲気を少しでも和らげようと、
ジュエリーの話に戻す。
「ラファエル様、このネックレスはいかがですか?
それにこのカフスボタンもきっとお似合いになりますよ。」
その間もお兄様はずっとラファエル様を睨んでいた。
エドワード様はケーキを食べ終えると、
興味深げにジュエリーを見て微笑む。
「これは見事だ。ヴィンセント、君の領地の宝石はやはり一級品だな。」
「エドワードも、何か土産に買っていってくれ。」
お兄様は少し冷静さを取り戻し、エドワード様と会話している。
その後も、ラファエル様とお兄様の間で小さな睨み合いが続きながらも、
全体的には穏やかな雰囲気のまま時間が過ぎていった。
私は、無事におもてなしが成功していることに安堵しつつも、
時折お兄様の視線がこちらに向けられるたびに、胸がドキドキしていた。
イケメン3人に囲まれるレナちゃんでした。




