34 デート?です!
次の日、ついに待ちに待った
デート(?)の日がやってきた。
お兄様にとっては私はついででも、
私がデートだと思えばデートだ。
デートの朝、アニーがいつも以上に
気合を入れて私のメイクをしてくれた。
アニーは手際よくあっという間に私の顔を仕上げていく。最初は少し不安だったけど、
鏡に映る自分の顔を見て驚いた。
アニーのおかげで、
舞踏会の時と同じで、まるで別人のよう。
普段とは違う自分に少しだけ自信が湧いてきた。
動きやすいようにとアニーが選んでくれたのは淡い水色の動きやすいワンピースドレス。
細かいディテールがとても上品で、
動くたびにレースがひらひらと揺れる。
リボンがアクセントですごく可愛い。
「これで完璧です、レナ様。公爵様もきっと驚かれますよ」
とアニーが自信満々に言うのを聞いて、なんだか緊張が高まってきた。
馬車の前に着くと、お兄様がすでに待っていた。いつもの出かける時よりもラフな格好をしていて、シンプルなシャツ姿がすごく似合っていた。普段はフォーマルな服装が多いお兄様だけど、今日は少し違った雰囲気で、その姿に思わずドキッとしてしまった。
「お待たせしました」と声をかけると、
お兄様は私を見て一瞬だけ驚いたような表情を見せたけど、すぐにいつもの落ち着いた表情に戻った。
「……似合ってるな」と静かに言われて、
私は顔が熱くなるのを感じた。
街に着き、まずお兄様が連れて行ってくれたのは、
宝石商だった。
公爵領はダイヤモンドやサファイアの産地で
、一級品が王都と同じか、それ以上に揃っている。
この店は馴染みの宝石商で、
入るとすぐに支配人が対応してくれて、
奥に通された。
ガラスケーキには色とりどりの
綺麗な立派なジュエリーが並んでいた。
お兄様は私に似合うジュエリーを支配人に選ばせた。イヤリング、ネックレス、ブレスレット――
お兄様は気にいると「これをくれ」
と一言いい、すでにそれが1時間くらい続いていた。どれも美しいが、
正直、こんなにたくさん1人では使いきれない。
「こんなに、毎日はつけられませんわ」
と正直に言うと、お兄様は真顔で、
「毎日違うものをつければいいんじゃないか」
とさらりと言った。
私は少しため息をつきながら、これ以上は諦めた。
支配人が私のジュエリーを選んでる間、
展示されたガラスケースを見ていると、
店の奥にあるティアラが目に入った。
この国には、婚約の際にティアラを贈る習慣がある。美しい輝きに目を奪われていると、
横からお兄様が少し複雑な顔で
私を見つめているのに気づいた。
「……お前は、どんなティアラがいいとか、あるのか?」
と尋ねてきた。
「私は……ティアラはいりませんわ」
と、迷わず答える。
誰かと婚約すれば、お兄様と離れ離れになる。そんな未来のためにティアラなんていらない、そう思った。
お兄様は少し驚いた顔をして、
「そうなのか?」と尋ねてくる。
「そうです」
「なぜだ?」
「それは……言えませんわ」
と視線を逸らすと、
お兄様は不思議そうな顔をして、
「他に欲しいものがあるのか?」
と立て続けに聞いてくる。
私は少し考えてから、
「それなら……お兄様からいつでも身につけられるシンプルな指輪が欲しいですわ」
と言った。
指輪なら毎日つけていられるし、
見るたびにお兄様を思い出せる。
お兄様は少し戸惑った顔をしながら、
「……そうなのか。
お前は、思ったより宝石好きじゃないのか?」と、見当違いな結論を出してくる。
「そういうことじゃありません!」と少しムッとしながら返すが、お兄様はますます混乱している様子。そんなやり取りの後、ふとお兄様が指輪を選び出し、
「じゃあ、これはどうだ?」
とシンプルで可愛い指輪を見せてくれた。
小さなダイヤとサファイアがトップに輝く、
日常使いにぴったりのデザインだった。
「これって、毎日つけて大丈夫ですか?」
と宝石商の支配人に耳打ちすると、
「こちらはプラチナですので、問題ありませんよ」と優しく答えてくれた。
「じゃあそれがいいわ」
と、私は即決で選んだ。
宝石商が微笑みながら、
「この指輪は、ミアスという花をモチーフにしています。花言葉は“永遠の愛”です。仲の良い兄妹で羨ましいですわ」
と言ってきた。
お兄様は少し赤くなってる。
そんなこと知らなかったんだろう。
それでもなんだか私は嬉しくてその場で身につけた。
その後、私たちは必ず訪れるカフェに寄った。ここではとても美味しいフルーツタルトが食べられる。王都のカフェとはちょっと違って、このカフェならではのおいしさがある。
私はせっかくならと二つも注文してしまった。
「太るぞ」とお兄様は笑ったが、
「今日はたくさん運動したから大丈夫なの!」
と私は答え
た。甘いものをあまり食べないお兄様も、
今日は同じケーキを注文していた。
「久しぶりに食べると美味いな」
とお兄様が言った。
お兄様は使用人へのお土産に加えて、余分にケーキを包んでもらうよう頼んだ。
「お前、帰ったら食べるだろ」
と笑った。
お土産を用意してもらってる間
カフェの外を眺めると、
街の一角に移動遊園地が見えた。
私が窓越しに見ていると、
「……行きたいのか?」
とお兄様が聞く。
「いいのですか?」
「夕食までには時間がある。少しくらいならいいだろう」
と言ってくれたので、
私は大喜びで遊園地へ向かった。
遊園地にはメリーゴーランド、観覧車、ジェットコースター、コーヒーカップ、そして空中ブランコがあった。
「お兄様も一緒に乗りますか?」
と聞くと、
「流石に俺は遠慮する。ここで見てる」
と言うので、私はその言葉に甘えて、ジェットコースターやメリーゴーランド、空中ブランコに乗って楽しんだ。久しぶりの遊園地で、私は子供のように無邪気にはしゃいでしまった。乗り物の合間に、手を振ってくれるお兄様を見つけるのも楽しかった。
最後に観覧車の前に立ち、
「観覧車は流石に1人は寂しいです!一緒に乗りませんか?」
と誘うと、少し仏頂面になりながらも、
「まあ、いいか」
と最後は一緒に乗ってくれた。
観覧車に乗って、私は窓の外の景色を見ていた。街全体が夕焼けに包まれ、黄金色に輝いていて、本当に綺麗だった。
「綺麗……」と呟きながら景色を見つめていると、ふとお兄様の視線を感じた。横を見ると、お兄様がじっと私を見つめている。
「どうかしましたか?顔に何かついてますか?」と尋ねると、お兄様は少し顔を逸らしながら、
「いや……なんでもない」と言った。
お兄様がなんでもないと言う時、
だいたい何かあるのだ。
私は少し疑いながらも、それ以上は追及せず、また外の景色に目を戻した。
すると、お兄様が不意に口を開いた。
「そういえば、前にお前が寝ぼけていた時に……俺に何かーーー」
その瞬間、観覧車が急に揺れた。私はバランスを崩し、お兄様の方に倒れ込んでしまった。
気がつくと、お兄様の胸に顔をおしつけ抱きついていた。
お兄様の心臓の音が近くで聞こえる。
私の胸もドキドキと高鳴って、
どうしていいかわからなくなった。
「お兄様……」
「……大丈夫か?」
「大丈夫です……わ。」
私は
「ご、ごめんなさい、離れ……。」
と言って離れようとすると
お兄様が強く私を抱きしめ返してきた。
「レナ……俺は……」
その瞬間外からアナウンスが聞こえた。
「ただいま緊急停止中です。安全が確認され次第、再開いたしますので、しばらくお待ちください。」
観覧車は止まってしまった。
お兄様は
「すまん、なんでもない。」
そう言って私をやさしく席にもどした。
狭い空間の中、私たちは顔を赤らめたまま、
沈黙が続いた。お兄様の胸の感触がまだ残っていて、心臓がずっと早鐘のように鳴っている。
そのあと数分後,観覧車は再び動き出した。
気まずさの中で、
何も言えないまま私は外を見つめた。
やがて観覧車は頂上に近づき、
ちょうどその時、夕日が山の際に重なって、
空をオレンジ色に染めていた。
「綺麗」
「綺麗だな」と言った。
お互いの声が重なり、
思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
ほんの少し前の緊張が嘘のように、
自然と笑顔がこぼれた。
頂上からの景色を楽しんだ後は、
また普通にお喋りをしながら観覧車が地上に近づくまで過ごした。
観覧車が地上に着いた時、
私はまだ胸の奥でドキドキしている
自分を感じながら、馬車に乗り込んだ。
今回も読んでくださりありがとうございます٩(ˊᗜˋ*)و




