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3 お屋敷を探検します

そろそろ溺愛したいです。

目が覚めてから一週間がたった。

体はすっかり元気を取り戻し、

医師からは屋敷内を歩いたり、

庭を散歩したりする程度の運動を勧められた私は、

アニーと共に屋敷を歩き回っていた。





「こちらが一番大きなダイニングルームで、

お食事の際に使われる場所です。」

「こちらが中央階段です。

前公爵様と奥様の肖像画があちらにあります。」

「ここはサロンです。

お客様を招いて談話を楽しむ場所です。」

「ここがアーニーで、公爵様がお茶を楽しんだり、

レナ様がお茶会を開かれる場所です。」

次々と現れる部屋に、どこか懐かしさと新鮮さを感じながら屋敷を見学した。

広大な屋敷は、1、2時間ではとても回り切れないほどの広さだった。




歩き疲れた私を心配したアニーが、

広々としたウッドデッキに用意されたテーブルに

お茶とお菓子を用意してくれた。

「ねえ、アニー。記憶を失った私と一緒にいるのって、どう思う?」と尋ねた。

「わ、私ですか?

私なんかが口出しする問題ではないですが……

レナ様が意識を取り戻して、本当に安心しました。

それだけで十分でございます、

私は小さいころからお仕えしていますので

レナ様がいなくなるなんて考えられません。」

「小さいころって、何歳から?」

「レナ様が4歳のときからです。私の母がレナ様の乳母でしたので。」

「えっ! じゃあ、もう8年も?」

「そうなりますね。」

アニーははにかみながら答えた。大きな目が優しく細まり、ふわっと笑顔が花開いたようだった。





「アニーって私と同い年だよね?

4歳からずっと一緒にいたなんて、

幼馴染じゃない! これからもよろしくね。」

「レナ様……幼馴染なんて、

もったいないお言葉です。

ありがとうございます。

もちろん、これからもずっとお側におります。」

「幼馴染なら、もっと堅苦しくない言葉で話してほしいのに。」

そう言うと、アニーはまたはにかんで笑った。

「どうしたの?」と聞くと、

「いえ、記憶を失ってもレナ様は変わりませんね。」

というので

「どういう意味?」

と聞き返すと、

「倒れる前も、『もっと友達みたいに話して』と小さいころからよくおっしゃっていましたから。」

懐かしむように微笑むアニーを見て、

私は自然と笑顔になった。

「私は私よ。多分だけど…」

と少し語気を落とすと、

アニーは優しく笑い、

「レナ様は何もお変わりありませんよ」

と言って微笑んでくれた。

正直自分が自分であるという自信はあまりない。

けどそうやって身近な人が変わっていないと言ってくれると少し安心した。

「じゃあ、私についてわからないことは

なんでもアニーに聞けばいいのね!心強いわ!!」

というとまたアニーは微笑んだ。






記憶の話をしていると、ふと兄と言われた存在が気になった。

「ところで、お兄様は?」と尋ねると、

「あ……今は執務室でお仕事中かと思います。」

「そうなんだ。お仕事の邪魔をしちゃいけないわよね。」

「そうですが…レナ様でしたら大丈夫かと…。」

アニーが言葉を濁した。

「そう? じゃあ、屋敷の探検ついでに挨拶しに行こうかしら。」

アニーは一瞬顔が固まっていたが、

「承知しました。

お茶が終わりましたらご案内いたします。」

と答えた。





お茶を飲み終え、アニーに案内してもらいながら

兄の執務室に向かった。

アニーは

「私は部屋の外でお待ちしますね」

と言ってドアの横に立った。

「どうして、今まで一緒にどこへでも

来ていたのに、なぜここだけ外にいるんだろう?」 と疑問を抱きながらも、

私は一人でドアをノックした。

「トントントン」

「………」

「入れ。」

知らない男性の声がした。

驚いてアニーのほうを見ると、

彼女は微笑みながら

「大丈夫ですよ」

とほぼ声に出さずに口の形で言った。

アニーを信じ、私はドアを開けた。





「レナです。

お仕事中に失礼します。屋敷を見ていたので、

アニーにお兄様にご挨拶したいと

案内してもらいました。

お邪魔でしたらごめんなさい。」

頭を下げて顔を上げると、

青い瞳の見知らぬ男性が座っていた。

鋭い目つきで、誰も彼もひるませるような強い視線。

机には山積みの書類、そして部屋全体に漂う冷たい雰囲気が、

他の部屋とは明らかに違っていた。

「なんだ、レナか。」

声は優しい兄のものだったが、

その表情は冷たく、私は一瞬身がすくんだ。

しかし、よく見れば、いつもの切れ長の目や銀髪から確かにお兄様だということが分かった。






「珍しいな。執務中に来るなんて。アイン、レナード、ヨーク、少し休憩にしよう。」

兄のそばにはオレンジ色の髪で活発そうな青年と、

緑色のストレートの長髪を持つ物静かそうな青年、

そして執事のアインが立っていた。

「やった! レナちゃんのおかげで休憩だ~!」

とオレンジ髪の男が声を上げると、

「レナード、うるさい。出ていけ。」

兄が冷たく一言放つ。

レナードと呼ばれた青年は、冷や汗をかきながら部屋を後にし、それに続いて、やれやれという表情でヨークと呼ばれる青年も部屋を出て行った。




「お、お兄様?」私はおずおずと兄を見上げた。

すると、先ほどの冷たい表情は消えていて、

優しい目じりを下げたいつもの兄がそこにいた。

「レナ、せっかく来てくれたのに、騒がしくてごめんな。

隣の談話室でお茶でも飲もう。」

そう言って席を立った兄は、

私のほうへと穏やかな笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。

先ほどの鋭い視線は消え去り、そこには私が知るいつもの優しい兄がいた。







読んでくださり、ありがとうございます!

この辺りは少し展開が遅いですが、8話目くらいから巻き返してます!

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